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タロウ・タンク [c o m i c]



  • 新聞配達をしながらプロボクサーへの道をめざしていた山本太郎が交通事故で左手を不具にされる。ヤケになった太郎はチンピラやくざとなり、やがてなぞの死をとげてしまう。その死を悲しみいきどおった父は、息子の死の真相をさぐるとともに、タロウ号と名づける戦車をつくる。いまはしがないくず鉄屋だが、戦時中は戦車隊の隊長だったのだ。やがてその父も殺され、のこった次郎少年が、にいちゃん戦車を駆使して、"悪" に挑戦していくというのがこの作品の、まことにおおざっぱなあらすじだが、これだけをみてもわかるように、にいちゃん戦車タロウ号には執念がこもっている。息子の死を悲しみいきどおった父親の執念、そして父の執念によって戦車に封じこめられたであろう不運のボクサー山本太郎の執念である。そしてさらには、兄の死、父の死のうらみを晴らさんとする次郎の執念。この三人の執念と、戦車の三つのひみつ兵器はみごとな組みあわせをみせている。あえてココロの傑作とよぶゆえんだ。
    佐野 美津男 「ココロの傑作 「にいちゃん戦車」」


  • 週刊少年マガジンに連載された「にいちゃん戦車」(1962)は石森章太郎の初期の傑作と評される。新聞配達をしている少年・山本次郎には前途有望な新人ボクサーの兄・太郎がいた。ところが兄は交通事故に遭ってボクサーの道を断たれてしまう。心が荒んで暴力団の一員になった兄は自殺する。息子は殺されたのではないか疑っていた父親も暴力団の原田組に殺害されてしまった。弟の次郎は父が亡き兄の身代わりに造った「にいちゃん戦車」(タロウ・タンク)に乗り込んで、原田組に乗り込む。兄と父の無念を晴らすために‥‥。死んだ息子の身代わりに父親が何かを造るというモチーフは「鉄腕アトム」を連想させるし、後の「人造人間キカイダー」(1972-74)を想わせる(ちなみに後者の主人公の名前はジローという)。後半の「クーデター事件」を解決してからは黒い戦車とのライヴァル対決や鋼鉄の巨人(巨大ロボ?)の伏線が張られているのに、未完で終わってしまったのは残念である。

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    夕刊を配っている少年(山本次郎)がボクシング・ジムの前で足を止める。新人ボクサーの兄・太郎は交通事故で左腕を失い、暴力団・原田組の構成員となって自殺した。次郎を誕生日に招待する少女よし子。彼女の兄(広瀬治)は親友の自殺に疑念を抱いていた。息子は原田組に殺されたという噂を広めていた父親の家に暴力団員が殴り込んだ。倉庫に逃げた父が「にいちゃん戦車」(TARO TANK)を操縦して組員たちを追い払う。太平洋戦争寺に戦車部隊の隊長(整備工長)をしていた父親が死んだ兄の身代わりに戦車を造ったのだ。次男に戦車の操縦を教えていた父も原田組に襲われて亡くなってしまう。次郎と広瀬の2人が戦車に乗り込んで、原田組へ向かう。長男の死を調べていた父の日記帳には「太郎の左腕を一生使えなくしたトラックが原田組に息のかかった運送会社の車だったこと、太郎の強さに恐れをなしたボクサーの三戸猛(組長の甥)が殺人を依頼したこと、証拠を掴んだ太郎を口封じのために殺害したこと‥‥」が綴られていた。

    タロウ・タンクに追い詰められて、原田組長は兄と父を殺させたことを自白する。戦車に武器は装備していないが、強力な武器にもなる3つの秘密の装置が隠されていた。山本次郎は広瀬治の勤めるエキスプレス自動車会社に整備工見習いとして就職する。2人は新車NXの公道走行テストを内密に行なうことになる。産業スパイの車とヘリコプターの尾行は巻いたものの、敵の罠に嵌まってしまう。当たり屋の男が走行中のNXに飛び込んで倒れ、事故現場の写真を撮られたのだ。極秘のテスト試行に参加した6人‥‥主任の馬場係長、整備工の大曽根達也、宮川清、囮の車を運転していた竜崎(広瀬の大学時代の親友)、次郎、広瀬の中にスパイがいる?‥‥真夜中の電話で、広瀬は産業スパイの親玉・コールマン髭の男に脅迫される。交通事故の現場写真と引き換えにNXの情報を得ようする。相手の要求に応じた広瀬は次郎たちと計略を練る。話を立ち聞きしていた宮川がスパイの一味だった。

    広瀬治とコールマン髭の男が千葉の海岸で対峙して、新車NXの設計図と事故現場写真のフィルムを交換する。お互いにニセ物を渡し騙し合う。すると突然、産業スパイの背後の砂山からタロウ・タンクが姿を現わす。大砲から強風が吹き荒れて砂嵐が舞い、スパイの手下を一掃した。3つの秘密の装置の1つ「ハリケーン砲」が発動したのだ。ピクニックに来た次郎と広瀬兄妹の家族は山火事に遭遇する。戦車で風下の木々を倒して延焼を防ぎ、ハリケーン砲で風の向きを変えるが、崖から水底に落下してしまう。ところがタロウ・タンクは潜水走行する第2の秘密装置「シーラカンス装置」によって水中から無事に生還する。さらに次郎は3番目の「ジャンピング装置」で崖を飛び越えようとするが、着地に失敗して大怪我を負い、戦車も大破してしまう。入院した次郎はタロウ・タンクを壊したことで兄・太郎を殺してしまったと悔む。1カ月後に退院した少年がエキスプレスで目にしたのは整備室の仲間が新たに造り直した「にいちゃん戦車」だった。

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    風速40mの強風を吹き出すハリケーン砲装置、50mの水圧下でも走行可能なシーラカンス潜水装置、20mの距離を飛行するジャンピング装置‥‥山本次郎は着陸時のショックを緩和するパラショック装置のボタンをタイミング良く押して、ジャンピング飛行を成功させた。母親が肺結核で倒れて、多額の入院費が必要になる。思い悩む次郎の前に黒いサングラスとトレンチコートの男(多田)が現われ、「にいちゃん戦車」を400万円で売って欲しい、その金を入院費にすれば良いではないかと申し出るが次郎は断る。戦車を盗みに来たチンピラたちを多田が倒し、次郎がハリケーン砲で撃退する。しかし、それは多田の仕組んだ自作自演の芝居だった。多田はタロウ・タンクを手に入れ、自衛隊を味方にしてクーデターを起こそうと策略しているテロ組織の隊員だったのだ。買収に失敗した多田は「戦争映画」を撮るために戦車を貸して欲しいと持ちかける。次郎は出演料70万円で多田と契約を結ぶ。

    国会議事堂前の撮影ロケ‥‥多田たちは入院中の母親を人質に取って、次郎に戦車を操縦するように強要する。午後12時、武装テロ集団がNHK放送局を襲撃し、議事堂前のタロウ・タンクがパトカーや警官たちを吹き飛ばす。ところが次郎は母の命を犠牲にして、多田たちの命令に背く。戦車の旋回砲塔を高速回転させることで、多田と寺崎(元戦車部隊)を投降させる。しかし、自衛隊の戦車部隊の半数がテロ組織へ寝返った。警察が入院中の母親を救出し、タロウ・タンクが戦車隊を全滅させる。クーデターの首謀者(閣下と呼ばれている元軍人の老人)が日本刀で次郎に斬りかかる。機動隊に包囲された老人は観念して切腹しようとするが、ハリケーン砲に阻まれた。「にいちゃん戦車大活躍」のニュースをラジオで知った梶国元内は自分の造った「黒い戦車」とタロウ・タンクを対決させようとする。梶国は戦場で次郎の父親と戦車について論じ合ったことのある戦友だったのだ。

    一躍人気者になった山本次郎と広瀬治を後を1人の子供が尾いて来た。戦車を見たいと言う子供に、明日なら見せられると答える。入橋美也子と高山紀男と名乗る男女が車で山本次郎を訪ねて来た。梶国は果たし状を次郎の弟と騙る子供に手渡す。レストランで食事をしながら、高山は彼女の父親が毎晩「鋼鉄の巨人」という怪物に悩まされている、タロウ・タンクで巨人を倒して欲しいと話す。次郎は2人の依頼を受けることにするが、その前に馬場係長からの要請で、焼高岳の噴火で山小屋に取り残された2人の小屋番を救出しに行く。大型輸送機に戦車を積んで焼高岳まで運び、噴火口附近へ落下傘で戦車を投下する。ハリケーン砲で噴煙を吹き払い、火山弾の降る中で2人を救助。噴出した溶岩流からジャンピング飛行で逃れる。焼岳旅館で一泊した次郎は戦車に隠れていた子供から、果たし状を見せられる。翌日2人は戦車で決闘場所の槍岳に向かう。タロウ・タンクは黒い戦車と対決するが、雷鳴が轟き、雨が降り出して稲妻が光り、2台の戦車に落雷して勝負は次の機会に延期される。

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    • 「石ノ森章太郎萬画大全集 11-4・5」(角川書店 2008)をテクストに使いました

    • 「石森章太郎選集 15」(虫プロ商事 1970)の函のデザインが2つあるのはなぜ?
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    にいちゃん戦車 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-4

    にいちゃん戦車 1 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-4

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2008/08/29
    • メディア:コミック
    • 目次:にいちゃん戦車


    にいちゃん戦車 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-5

    にいちゃん戦車 2 ── 石ノ森章太郎萬画大全集 11-5

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:角川書店
    • 発売日:2008/08/29
    • メディア:コミック
    • 目次:にいちゃん戦車 / エジソンくん / このオレだけがなぜもてる! / どろんこ作戦 / 泣き虫毛むし はさんですてろ / イラストコレクション


    にいちゃん戦車 I ── 石森章太郎漫画選集 15

    にいちゃん戦車 I ── 石森章太郎漫画選集 15

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:虫プロ商事
    • 発売日:1970/10/15
    • メディア:単行本
    • 目次:にいちゃん戦車 / エジソンくん / このオレだけがなぜもてる! / どろんこ作戦 / ココロの傑作 「にいちゃん戦車」佐野 美津男 / 作品メモ


    にいちゃん戦車 II ── 石森章太郎漫画選集 16

    にいちゃん戦車 II ── 石森章太郎漫画選集 16

    • 著者:石森 章太郎
    • 出版社:虫プロ商事
    • 発売日:1971/02/10
    • メディア:単行本
    • 目次:にいちゃん戦車

    タグ:comic ishinomori
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