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メタモルフォシス展 [a r t]



  • ビアズリーは白と黒の配分が美しいと思ったので、私も「アラベスク」の表紙で取り入れたりしました。私は自分の細すぎる人物の絵は嫌いなのですが、ビアズリーの細い線は美しいです。本当はミュシャのようなふっくらと柔らかい人物を描きたかったのですけれど、上手く描けなくて‥‥。ミュシャには「アラベスク」第2部のカラー扉で、大いに影響を受けております。「アラベスク」の扉絵は1週間かそれ以上かけて描いていました。カラー原稿は塗り直しがきかない一発勝負。色を間違えると全部ダメになるので、次に何色を入れるか毎回真剣に悩んでいました。カラーインクはずっとルマを使っています。私は当時 "原稿料はすべて資料に注ぎ込む" と決めていたので、今はもうなくなってしまった銀座の洋書店・イエナ書店の常連でした。昔からある洋書の老舗だったので、閉店した時はびっくりしました。写真集から画集、聖書まで洋書はすべてイエナで手に入れました。
    山岸 凉子 「画集刊行記念特別インタビュー」


  • ▢ 山岸凉子展 光 てらす ―メタモルフォーゼの世界―(弥生美術館 2016)
  • 東京メトロ南北線・東大前駅で下車して、本郷通りを御茶ノ水方面へ歩く。言問通りを左に下る‥‥東大裏・弥生門の真向かいにある弥生美術館で「山岸凉子展」(2016年9月30日-12月25日)が開催されている。1枚のチケットで隣接する竹久夢二美術館も同時に観覧出来るためか、2館兼用のデザインで「山岸凉子展」の図案ではなかった。チラシには「初展示を含む原画約200点を一挙公開」と謳っているけれど、前・中・後期(前・後期は同じ展示内容)で60点以上の展示入れ替えがあり、後期展示作品(11月29日〜)は複製画や小さな絵で紹介されている。「作品保護」という名目だが、約3カ月間の会期を半分に短縮すれば良いではないか、展示スペースが狭いからではないかと勘ぐりたくもなる。熱心な山岸凉子ファンは前・後期と中期の2度来館しなければならないのだから。弥生美術館の展示では多くの原画をガラス・ケース越しに鑑賞することになってしまうが、数点しか出品されていなかった「LaLa40周年記念原画展」で感じた欠落の3分の2は埋め合わされた。

    入館者は1階展示室の壁沿いのガラス越しに鑑賞することになる。「山岸凉子ベストセレクション10」には「日出処の天子」(1980)、「常世長鳴鳥」(1985)、「黄泉比良坂」(1983)、「ハーピー」(1978)、「アラベスク 第2部」(1975)のカラー原画5点を展示(後期展示の5点「ひいなの埋葬」「日出処の天子」「妖精王」「テレプシコーラ 舞姫」は複製画が飾られている)。自選したカラー原画は深く沈んだ色合いで耽美的、華やかさや煌びやかさは抑えられている。「『日出処の天子』誕生」の6点は厩戸王子のバイセクシャルな妖しさが匂い立つ。5点のモノクロ原稿はクライマックス・シーン「雨乞い儀式」のカットである。カラー3、モノクロ1点の「山岸凉子セレクション」は額装されて壁に架けられている。手前のガラスケースには懸賞景品の「手鏡」や「アトマイザー」「色紙」や「馬屋古女王」(1985)の扉絵(印刷)などが出品されている。

    「『アラベスク』を描く」は第1部(りぼん 1971)のカラー原画4点、2色原稿4点を展示。扉絵(1972)のネヴァ河を挟んだ市街地の背景は作者の家に遊びに来た萩尾望都が描いている。「当時はペンタッチが丸い線が主流で、私も初めは太く描いていたのです。第1部がヒットしていろんな制約がはずれて、〔‥‥〕本来の細い線に戻った」第2部(花とゆめ 1974)の7点。生原稿を間近で見られないことを考慮してか、原画を拡大コピーしたパネルも掲げられている。1階展示室中央のガラスケースには「短編名作選 1976-1979」が展示されている。『リリカ』の仕様(左綴じ・横書き)を知らされずに描いてしまったので絵を反転させたが、着物の打ち合わせが左右逆になって描き直したという「落窪物語」のカラー原画、「ひいなの埋葬」(1976)の予告カット、「天人唐草」「スピンクス」(1979)、「メタモルフォシス伝」(1976)、「妖精王」(1977)の表紙・扉絵6点がある。「美しい娘プシュケー」(1975)の2点はNHKの紙芝居風アニメのために描かれたという。

    2階展示室には「女性を描く I」が展示されていた。「黒のヘレネー」(1979)、「あやかしの館」(1981)、「ハトシェプスト」(1995)の3点。「漫画家デビューと初期作品 1969-1971」には「夏の貴賓席」「ラグリマ」(1970)、「雨とコスモス」(1971)。「短編・口絵名作選 1973-1977」には「幸福の王子」(1975)、「シュリンクス・パーン」「カテリス(優美の女神)」(1976)、「愛天子(セラピム)」(1977)、「パニュキス」(1976)、「ラプンツェル・ラプンツェル」(1974)。「『ASUKA』での仕事」には「シークレット・ラヴ」「神かくし」(1986)、「如月」(1989)、「時じくの香の木の実」(1985)、「月読」(1986)。「モノクロームの美しさ」には「アラベスク 第2部」(1975)、「セイレーン」「幻想曲」(1977)、「木花佐久夜毘売」(1986)、手前のガラスケースには「笛吹き童子」(1986)の扉絵校正見本とエッチング、湯呑みもある。

    「1981-1998 名作選」には「鏡よ鏡‥‥」「鳥向楽」(1986)、「天鳥船」(1985)、「ダフネー」(1981)、「月氷修羅」「二口女」(1992)、「蛇比礼」(1985)、「ヤマトタケル」(1987)、「封印」(1994)、「牧神の午後」(1989)、「青青の時代」(2000)、「ツタンカーメン」(1996)、「イシス」(1997)。「女性を描く II」には「メデュウサ」(1979)、「ハーピー」「ドリーム」(1978)、『ASUKA』表紙〈天細売命〉(1986)。「日本美術に傾倒」は「鬼来迎」(1981)、「海の魚鱗宮」(1985)、「笛吹き童子」(1986)。「様々な題材」には「星の素白き花束の‥‥」(1986)、「緘黙の底」「パイド・パイパー」(1992)、「鬼」(2002)、「白眼子」(2000)。「エッセイ漫画」は「蓮の糸」(1993)、付録カレンダー「雪降らし観音」(1981)、「トマトとアサリのむき身のスパゲティ」(1983 c.)を展示。

    「テレプシコーラ 舞姫」(2000-2006)から7点(カラー3、モノクロ4点)、第2部(2007-2010)から3点(カラー2、モノクロ1点)。「2000年代の作品」は「ヴィリ」(2007)、「コミックスピカ」の表紙(2014)、「レベレーション -啓示-」(2015-)から5点(カラー1、モノクロ4)。細い描線とカラーインクの滲み、細密に描かれたモノクロームの美しさは雑誌や単行本や画集などの印刷物では分からない。90年代以降の作品は熱心に読んでいませんが、リアルタイムで愛読していた「妖精王」や「日出処の天子」、ギリシャ神話をモチーフにした一連の短篇には思い入れがある。「ハーピー」「天人唐草」「狐女」‥‥厩戸王子の負の遺伝子を継承した「馬屋古女王」(1985)や「わたしの人形は良い人形」(1986)も怖すぎる。本人が登場するエッセイ・マンガもギャグ風の絵とのギャップが可笑しいけれど、心底から笑えません。デビューから47年‥‥作者がメタモルフォーゼ(変容)したように、読者もメタモルフォシス(転身)したかしら?

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  • ▢ 山岸凉子画集 光(てらす)(河出書房新社 2016)
  • 「アラベスク」「妖精王」「天人唐草」「日出処の天子」「テレプシコーラ 舞姫」など代表作のカラー画(扉絵・表紙・カヴァ絵・カラー原稿)やモノクロ原稿、イラスト・エッセイを収録した初の本格的な画集。「自分の望んだとおりの色を出せた作品を選んでいます」と序文(プロローグ)で本人が書いているように、巻頭の「ベストセレクション」、デビューから年代順に5期(1969‐1975、1976‐1979、1980‐1985、1986‐1999、2000‐2015)に分けて厳選されたカラー・イラスト(106頁)は圧巻で、質量共にズッシリと重い。「アラベスク」の第1部と第2部で絵柄が大きく異なるのも、茶系色が多いのも山岸凉子のファンには周知のこと。巻末の「対談・インタビュー」も充実している。「画集刊行記念特別インタビュー」(16頁)はもちろんのこと、中島らもとの対談と文春文庫ビジュアル版『天人唐草』(1994)の解説が再録されていることに感激した。故・中島らも氏は少女マンガの数少ない理解者の1人だった。

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  • ▢ メタモルフォシス伝(花とゆめ 1976)山岸 凉子
  • 大学受験をテーマにした異色の学園ドラマ。T大合格率1・2を争う受験校に謎の転校生が登場する。一陣の桜吹雪と共に現われた蘇我要が2年A組に漣を起こし、灰スクール2年目のクラスメートたちを「転身」(メタモルフォシス)させる物語である。開業医の一人娘・大西久美は医学部への進学を義務づけられているが、理数系は大の苦手で文学(詩)や美術や音楽を愛好する。国立理類コースの落ちこぼれで、T大理IIIに今年入学した従姉の緑と比べられて困惑している。乙女チックいじけタイプゆえに蘇我要から「クネ」と呼ばれる。政治家の孫息子・新田忍は文武両道の秀才タイプ。理想的な家庭環境にも思えるけれど、彼には3人の母親がいた。祖父・毅に反抗して家を出た売れない小説家の実父・猛は愛人(お妾さん)の啓子と同居し、新田忍は実家で祖父と後妻(実母の綾子は亡くなった)と共に暮らしている。腹違いの兄・良はバンドを組み、忍は密かに小説を書いている。

    医学部志望の大田原一は融通の利かない典型的なガリ勉タイプ。新田忍や蘇我要にライヴァル心を燃やしている。期末テストで学年トップになったが、夏休み明けの模擬試験の成績が思わしくなく、焦りから不眠症〜ノイローゼに陥ってしまう。四つ子の姉たちの中で育った小山金四郎はチビで運痴。ナヨナヨした優柔不断な性格で、大西久美の親友・紅子から「オヤマ」と揶揄されている。音楽クラブで趣味のヴァイオリンを弾いている時が一番好き。編入生の蘇我要は文系科目は全然ダメだが、理数系の成績は抜群でスポーツも得意。学業や進路、家庭問題などに悩む大西久美、新田忍、大田原一、小山金四郎たちに夢や幻覚を見せて「転身」させる。秋の学校祭でマージャン同好会を立ち上げ、枯葉舞う風と共に消えてしまう。現実世界に蘇我要(天使?)が舞い降りる「メタモルフォシス伝」は、妖精の国(ニンフィデア)に忍海爵が彷徨い込む「妖精王」(1977-78)とは真逆の設定である。

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    • 原画展の記事なのでコミック〔comic〕ではなく、アート〔art〕に分類しました

    • 1枚のチケットで2回(前・後期と中期)観覧出来るようにして欲しかったですね

    • 記事タイトルは「メタモルフォシス伝」(花とゆめ 1976)のモジリです^^;

    • 『メタモルフォシス伝』(潮出版社 2014)に描き下ろし新作「続・恐怖の甘い物一家」が収録されています
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    山岸凉子展

    山岸凉子展 光 てらす ―メタモルフォーゼの世界―

    • アーティスト:山岸 凉子
    • 会場:弥生美術館
    • 会期:2016/09/30 -12/25
    • メディア:コミック
    • 展示構成:山岸凉子ベストセレクション10 /「日出処の天子」誕生 /「日出処の天子」モノクロ原画 /「日出処の天子」~山岸凉子セレクション /「アラベスク」を描く /「アラベスク」~2色原稿より~ /「アラベスク」第2部の連載 / 短編名作選 1976-1979 / 女性を描く I / 漫画家デビューと初期作品 1969-1971 / 短編・口絵名作選 1973-1977 /「ASUKA」での仕事 / モノクロームの美しさ / 1981-1998 名作選 /「テレプシコー...ラ」/ 2000年代の作品 / 女性を描く II / 日本美術に傾倒 / 様々な題材 / エッセイ漫画


    山岸凉子画集 光

    山岸凉子画集 光 てらす

    • 著者:山岸 凉子
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2016/09/24
    • メディア:大型本
    • 目次:プロローグ / 山岸凉子ベストセレクション / 1969‐1975 / 1976‐1979 / 1980‐1985 / 1986‐1999 / 2000‐2015 / イラストエッセイ / モノクロームの美しさ / 対談・インタビュー / 画集刊行記念特別インタビュー / 山岸凉子 略年譜


    メタモルフォシス伝(山岸凉子スペシャルセレクション XIV)

    メタモルフォシス伝 (山岸凉子スペシャルセレクション XIV)

    • 著者:山岸 凉子
    • 出版社:潮出版社
    • 発売日:2014/04/19
    • メディア:コミック
    • 目次:メタモルフォシス伝 / ネジの叫び / 恐怖の甘い物一家 / 続・恐怖の甘い物一家


    メタモルフォシス伝

    メタモルフォシス伝

    • 著者:山岸 凉子
    • 出版社:秋田書店
    • 発売日:2000/02/10
    • メディア: 文庫
    • 目次:メタモルフォシス伝 / 解説・渡辺 眞子