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下足痕刮げ! [p a l i n d r o m e]



  • 毎日、目まぐるしいほどに見えるもの、感じることが変わっておそろしい。朝、部屋の中は、まだ暗い。新しい一日が、はじまる。カーテンレールをしばらく眺めていた。布は規則的なプリーツをつくるけれど、少しだけ、乱れがある。あの子は元気かな。届いたメールの返事を出さなくちゃ。こないだすれ違った犬は賢い目をしていたっけ。いつか言ってしまったひとことを、あの人は気にしているかな。どこか遠くに行きたいな、滝とか、見たいな。すぐに忘れて、消えて、なくなってしまうようなことを、布団にすっぽり包まったまま、ぼんやり考えていた。昨日のことも、小さい頃のことも、簡単なことも、難しいことも、すべてが並列で、今、わたしの中にある。いろんな感情がいっぺんにある不思議。誰にもいっぺんに見せることができない。わたしだけのものがこんなにあるなんて、うれしくて、さびしくて、泣いてしまいそうになる。だから、カーテンレールを眺めるでもなく、眺めてみる。
    多部 未華子 「考えごと」


  • ⃞ 発った多部未華子、追突!‥‥ドイツ語噛み、下手だった
    主演映画「1/25」がベルリン映画祭のコンペティション部門にノミネートされた多部未華子は監督や共演した俳優たちと共に成田空港からドイツへ飛び立った。トランジットで乗り継ぎ、テーゲル空港に降り立つ。ホテルに直行して会場へ向かう。高揚感と緊張感と時差ボケで気分はハイテンション。期待と不安で胸が高鳴るけれど、こういう時は得てして好事魔多し。その途中、多部未華子の乗っていたクルマが交差点で信号待ちしている時に後方から追突されてしまったのだ。幸い車体後部のバンパーが凹んだだけで、彼女にも同乗者のマネージャーにも怪我はなかったものの、交通事故なので警察署で衝突時の状況を聞かれることになった。万が一の事態に備えてドイツ語会話の講習を予め受けていたが、実際にドイツ語で話すとなるとシドロモドロで全く要領を得ない。もちろん英語も覚束ない。記者会見や「授賞スピーチ」どころの騒ぎではなかった。

    ⃞ 今悔しくて泣いた、シクシク‥‥肢体撫で、孔雀舞い
    楽屋で恋人から突然別れ話を切り出された。密かに交際していた若い娘から、妊娠したことを告げられたという。どんなに浮き名を流したイケメンのモテ男でも、交際相手の女性から赤ちゃんが出来ちゃったと言われたら一巻の終わりであると発言した脚本家がいた。自分が失恋したことよりも二股を架けられていたことに腹が立ち、悔しくて泣いた。出来ることならば公演を中止して、今すぐ家に帰りたい。毛布を被って眠りたい。とても踊れるような精神状態ではなかったが、私にはバレリーナとしての矜持がある。気分が落ち込んだり、気が乗らない時でも仕事をするのが「プロ」と「アマ」の違いだと語っていた批評家もいた。本番までの2時間しかない。ウォーミングアップとストレッチで肢体を解きほぐし、お気に入りの音楽を聴いて精神をリラックスさせる‥‥そして舞台の幕が上がり、プリンシパルは孔雀の化身となって「亡き王女のためのパヴァーヌ」を踊るのだった。

    ⃞ 若気の至りはパリ大の毛皮
    パリ・ソルボンヌ大学に留学していたV子は当時の苦い思い出を語る。ちょうどバブル景気の絶頂期で、日本の企業がNYの高層ビルを購入したり、分けも分からずに「名画」を買い漁っていた。ディスコ・ボディコン・ブランド品‥‥V子も全身シャネル固めの泉ピン子みたいな格好で意気揚々とファッションの本場へ乗り込んだ。ところがパリ大の学生たちの服装は意外に質素だった。高価な高級ブランド製品は自立したキャリア・ウーマンや経済的に余裕のある中年女性が身に纏うもの。若い十代の小娘(特に短足胴長O脚扁平顔の日本人)には不釣り合いで不似合いだった。ブランド品が箪笥の肥になったのは言うまでもない。クラスメートから大顰蹙を買ったのは母親のクローゼットから拝借して来た豹の毛皮のコートだった。欧米ではワシントン条約で輸出入が制限されている野性動物の毛皮は動物愛護の観点からも「毛嫌い」されていたのだ。カルチャー・ショックを受けたV子が「毛皮反対デモ行進」に参加するのは時間の問題だった。彼女はパリで「豹変」したのだ。

    ⃞ 蜜の味・ロンドン・ロシアの罪?
    中学時代の給食時間は慌ただしかった。ゆっくり食べていると貴重な昼休みが短くなってしまうから。男子生徒たちは一早く食べ終えるや否や、埃っぽいグラウンドに跳び出してボールを蹴る。リセ時代のアルベール・カミュ少年のように、サッカーは無心になって遊べる球技だった。束の間の昼食中に教室前方右上に据えられた小さなスピーカーから音楽が流れていた。当時の公立中学校放送部が所蔵していた録音物(レコードやテープ)の数は分からないけれど、少ないことは同じ曲が何度も繰り返されたことからも想像に難くない(放送部員の私物だったとしても僅かな枚数だと思う)。何回も聴かされているので「耳タコ」になってしまった曲の1つがハーブ・アルバート&ザ・ティファナ・ブラス(Herb Alpert & The Tijuana Brass)の〈蜜の味〉(A Taste of Honey)だった。学校給食は「蜜の味からは程遠いものだったが、〈蜜の味〉を聴くと昨日のことのように甘酸っぱい中学時代の記憶が口一杯に拡がって来る。ロンドン娘ジョーの物語は東西冷戦の暗鬱な気分を反映している?

    ⃞ 手には椰子、凍てついたタイツ、停車場にて
    東北地方の寂びれた無人駅のホームに1人の女性が倒れていた。発見したのは停車した始発電車の車掌で、駆け寄って言葉をかけたが全く反応はなく、女性の躰も冷たくなっていた。奇妙なのは喪服のように全身黒尽くめの女性が手に椰子の実を抱えていたことだった。これが南国の海辺ならば、落下した椰子の実が運悪く女性の頭を直撃することもあるかもしれないが、真冬の厳寒地に椰子の実は似つかわしくない。さらに不思議なことに女性の履いている黒タイツが霜が降りたように白く凍てついていたこと。まるで直前まで冷凍庫に入っていたようだ。冷凍保存していた死体を無人のホームに放置(遺体遺棄)したのだろうか。車掌が救急車を呼ぼうか、それとも警察に連絡しようかどうか思案していると、いつの間にか死体の傍らに1人の男が佇んでいた。しかも胸に黒ネコを抱いているではないか!‥‥久々に登場した迷宮探偵・綾取猫人と黒ネコのコロネだった。迷探偵の事件簿を覚えてる?

    ⃞ お世話し飼う余地、生き抜くオオクワガタが涌く大櫟、銀杏、柏‥‥瀬尾
    栃木県日光市では自然環境保護に力を入れている。野性のクマやサルが山里から降りて来て農作物を荒らしたり、住民を襲うようになったのも、元を正せば人間たちが森林を伐採して野生動物のテリトリを脅かしたからである。動物に罪はない。人間に危害を加えたという理由で殺処分するのは本末転倒ではないか。動植物だけでなく、爬虫類や昆虫などの個体数も減り、絶滅の危機に瀕している種が少なくないのも自然破壊によるところが大きい。瀬尾ではオオクワガタやカブトムシなどの甲虫類を増やすことに取り組んでいる。クワガタが好むという櫟、銀杏、柏、白樫、春楡、犬枇杷などの木を植林する。子供たちが昆虫の生態を観察をしたり世話して飼育する場所を森林公園「なかまの森」に設置するなど‥‥地域の住民や観光客が自然と触れ合うことの出来る環境づくりを目指している。

    ⃞ 真蛸ネコババは子猫タマ
    〈抜き足・差し足、鯵刺し飽きぬ〉‥‥遊び友達のマダニャイの好物は真鰺で、近所の魚屋さんから頂戴(ネコババ)して来るけれど、私は真蛸が大好き。タコ、イカ、エビなどの魚介類を食べるのは控えた方が良いと言われていますが、少しならば大丈夫だって。つい食べ過ぎて体調を崩してしまうこともあるけれど、人間だってアルコール飲料やタバコなど有害なものを好んで嗜好しているじゃないの。アル中やニコチン中毒者にタコやイカは食べちゃ駄目なんて言われたくないわ。先人の「吾輩」だってビールを飲んで命を落としちゃったんだから。「タマ」は日本で一番ポピュラーなネコの名前です。タマ(玉)だから雄とは限りません。私のような美女ネコのタマも日本全国に数多くいるはず。英語のトム(tom)は雄ネコのことで、トムキャット(tomcat)とも言います。でもトムボーイ(tomboy)は「お転婆娘」という意味になるの。面白いでしょ。トムボーイッシュ(tomboyish)の短縮形ではないかしら。タマじゃなくって、トムボーイに改名した方が良いって?

    ⃞ ヴァンパイア、昼、地下室。躑躅が散る悲哀、晩、逢う
    ロシュフォール家の地下室に幽閉されていた女ヴァンパイアのエリザ(Eliza)は600年の眠りから目覚めたというのに、まだ眠り足らないのか、突然睡魔に襲われて昏倒してしまう。低血圧で貧血気味なのだろうか?‥‥昼間は地下室で眠り、日が暮れて暗くなると食事のために夜の街を徘徊する。言うまでもなくヴァンパイアの好物は若い男女の新鮮な血である。毎夜娼婦のようなエロティックな衣裳を身に纏って若者たちを誘惑するのだ(彼女はバイセクシャルなので男女を問わない。もちろん餌食となる対象は美男美女に限る)。吸血鬼と薔薇は密接な関係があるけれど、エリザは艶やかな薔薇よりも清楚な躑躅に惹かれる。ロシュフォール家の中庭に躑躅が咲き乱れていたからかもしれない。不老不死なのに、散った躑躅に悲哀を感じてしまうのだ。今晩は男女漁りではなく、久々のデート。もちろん彼女の恋人もヴァンパイアである。

    ⃞ 母親死んで滅し、ストレス薄れど、寿司詰め電車、伯母は?
    2年前に母親を亡くした。荼毘に伏されて骨になっても不思議と喪失感は湧かなかった。区役所や金融機関など、親族の死亡に伴う面倒な手続きに忙殺されて母のことに考え及ぶ余裕がなかった。数カ月後、外出中に倒れ、救急車で搬送されて1週間入院した。自分でも自覚のないまま、ストレスが溜まっていたのだろう。張り詰めていた糸が切れたように火葬場で倒れてしまう遺族もいると聞く。極度の緊張状態にあった心身が耐え切れなくなって機能停止したのかもしれない。激痛の余り失神してしまうように。パソコンがフリーズしてしまうように。スーパーで買物をして帰る雨の夜道で初めて涙が溢れ出た。年月が経って母を失った精神的なショックやストレスは薄れたけれど、体調は優れない。加齢による体力や筋力の衰えもあるのだろうか。寿司詰めの満員電車に押し込まれる通勤中に、伯母(母の妹)のことを思う。先日姉も亡くなって、たった1人になってしまった伯母のことを‥‥。

    ⃞ 粧し春の宵よ山桜、草間彌生、夜のルバシカ女
    春の宵、絵筆を措いた草間彌生は夜桜見物に出かけることにした。アトリエの窓から見える裏山の桜が満開だったから。真っ青な空に薄いピンク色が映える昼間や華麗にライトアップされた夜間の桜も美しいけれど、青白い月明かりに照らされて浮かび上がる幻想的な桜も興趣が尽きない。昔の人も月明かりの中で夜桜を愉しんだのだろう。人里離れた山荘の裏山に咲く桜なので、観光客や花見客などは1人もいない。花冷えなのか肌寒い。都会の喧騒から遠く離れた別荘地は標高も高いし、気温も低いのかもしれない。草間は愛用しているルバシカを着込んで外出した。1957年に渡米し、NYを中心に活動していた60年代にロシア人の親友から誕生日にプレゼントされた上着だった。MoMA(The Museum of Modern Art)が私の作品を認めるのに30年かかったのだ。一瞬と永遠の日々だった。草間は夜桜を眺めながら、今は亡き女友達を偲んだ。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 多部未華子が読んでいる文庫本は『ジェニーの肖像』(東京創元社 2005)ですね

    • 草間回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #48」の解答です^^

     スニンクスなぞなぞ回文 #49

      ◯▽◇△◎妊婦。先月て☆▢で▢☆鉄拳7に◎△◇▽◯

     回文作成:sknys

     ヒント:妻の妊娠中に夫は?


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    1/25(イチガツニジュウゴニチ)

    1/25(イチガツニジュウゴニチ)

    • 著者:多部 未華子 / 恩田 陸
    • 出版社:メディアファクトリー
    • 発売日: 2009/01/21
    • メディア:大型本
    • 目次:劇場を出て・恩田 陸 / インタビュー / 多部未華子から多部未華子へ(昨日の私へ・明日の私へ)


    眠れる美女

    眠れる美女

    • 著者:川端 康成 / 新津保 建秀(写真)/ 多部 未華子(出演)
    • 出版社:プチグラパブリッシング
    • 発売日:2008/06/20
    • メディア:単行本(ソフトカバー)
    • 内容:死とエロスの淵で、自らの記憶をたゆたう老人の、退廃的で濃密な愉しみとは。時を越えて蘇る、川端デカダンスの極

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