So-net無料ブログ作成
b o o k s ブログトップ
前の1件 | -

ドラコニアランド [b o o k s]



  • 夢がいわばタマネギ構造であることを認めるならば、現実そのものも、同じようにタマネギ構造であることを認めざるを得なくなろう。すなわち、私たちが現に生きているこの現実を、真の現実と見なすべき決定的な根拠は何もないということだ。目覚めているつもりでいても、たしかに目覚めているという証拠は何もない。たとえば私は現在(1975年9月18日午前3時18分)、世の中のほとんどすべてのひとが寝静まっているとき、わが家の書斎の机に向かい、しきりに原稿用紙にペンを走らせつつ、夢と現実のいたちごっこに関する埒もない妄想を追っているところであるが、この私が夢を見ているのでないという証拠は一つもないのだし、このペン、この原稿用紙が、夢のなかのペン、夢のなかの原稿用紙でないという証拠は一つもないのである。いや、それどころか、興義が鯉の口から吐き出されたように、この私もいつか、澁澤龍彦という夢から決定的に吐き出されないという保証は何もないのだ。
    澁澤 龍彦 「夢について」


  • ▢ 澁澤龍彦ふたたび(河出書房新社 2017)
  • 没後30周年記念文藝別冊KAWADE夢ムック。「文藝別冊 澁澤龍彦」(2002)、「増補新版 澁澤龍彦」(2013)に続く「澁澤龍彦 ふたたび」にはヤマザキマリ、とり・みき、山崎ナオコーラ、市川春子、三原ミツカズ、平野啓一郎など比較的若い愛読者(マンガ家や作家)が寄稿している。「文藝別冊 澁澤龍彦」は澁澤龍子のロング・インタヴューを掲載していたが、今回は巖谷國士の長時間インタヴューで、「手塚治虫と通じるもの」「反・生産、反・労働」「国家権力への抵抗」など、2017年に澁澤龍彦を読む今日的な意義が語られる。東雅夫による「掌上のドラコニア」は澁澤龍彦のエッセイ29編を精選したアンソロジー。巻末の「澁澤龍彦ブックガイド」で著作45冊を紹介。「澁澤龍彦没後30年記念企画」として澁澤文庫フェアを開催。市川春子のイラストを表紙にした「澁澤龍彦ブックガイド」という販促用小冊子(16頁)も全国60以上の書店で無料配布されている。

  • ▢ 澁澤龍彦玉手匣(エクラン)(河出書房新社 2017)澁澤 龍彦
  • 澁澤龍彦没後30年を記念して出版された瀟洒なエッセイ集。「プロローグ」「ドラコニア」「オブジェ」「文学」「美術」「生涯」「エピローグ」‥‥アンソロジスト・東雅夫によって7つのテーマ別に精選抽出された99篇のパラグラフで構成されている。「作家に長篇型と短篇型があるとすれば、私は明らかに後者であろう。だから極端にいうと、たとえば原稿用紙一枚か二枚の推薦文などに、私のもっとも得意とする領分があるのではないかと思ったりしてしまうほどだ。短篇型というよりも、むしろアフォリズム型というべきかもしれない」と著者自らが書いていた通り、ドラコニア(澁澤ランド)のエッセンスが凝縮された究極のアンソロジーになっている。若い読者への「澁澤龍彦入門書」として最適ではないかしら。編者曰く「書名のエクラン(ecrin)とは大切なものを容れる小匣(宝石箱など)を意味するフランス語である」。

  • ▢ 極楽鳥とカタツムリ(河出書房新社 2017)澁澤 龍彦
  • 澁澤龍彦没後30年を記念して出版された文庫オリジナル・アンソロジー。「動物博物誌」というテーマで選んだ28篇を収録している。『高丘親王航海記』(1987)から採られた巻頭の「儒艮」と「獏園」はフィクションなので、象、犀、ドードー、極楽鳥、鳩、海ウサギ、魚、海胆、貝、蝉、蝶、蟻、蠅、タランチュラ、蝸牛などのエッセイとは趣きが異なるが、動物をめぐるエッセイだけでアンソロジー1冊を編むのには分量が足らなかったのだろうか(初めてドラコニア国を来訪する読者には「儒艮」「獏園」の2篇だけでなく、『高丘親王航海記』を読んで欲しい。「獏園」については〈ドラコニア少女〉を参照)。出典は『幻想博物誌』(1978)から8篇、『私のプリニウス』(1986)から5篇、『ドラコニア綺譚集』(1982)から4篇、『魔法のランプ』(1982)、『記憶の遠近法』(1978)から2篇、『太陽王と月の王』(1980)、『夢の宇宙誌』(1964)、『玩物草子』(1979)から1篇ずつ採られている。表紙カヴァは安野モヨコの描き下ろし。

  • ▢ バビロンの架空園(河出書房新社 2017)澁澤 龍彦
  • 文庫オリジナル・アンソロジー第2集は植物をめぐるエッセイを32篇を蒐集している。中心となる『フローラ逍遙』(1978)は「水仙」から「蘭」まで、全25種の花を完全再録(単行本を美しく飾っていたカラー植物図譜は割愛されている)。「太古の植物」「植物界のイカロス」「フローラ幻想」「エロスとフローラ」「薬草と毒草」「琥珀」「アネモネとサフラン」「マンドラゴアの幻想」「東西庭園譚」など‥‥『私のプリニウス』(1986)から4篇、『ヨーロッパの乳房』(1973)と『毒薬の手帖』(1963)から各2篇、『太陽王と月の王』(1980)、『ホモ・エロティクス』(1972)、『玩物草子』(1979)、『マルジナリア』(1983)、『胡桃の中の世界』(1974)、『思考の紋章学』(1977)などから1篇ずつ採られている。表題となった「バビロンの架空園」の出典は『黄金時代』(薔薇十字社 1971)、初出は「血と薔薇 3号」(1969)。表紙カヴァは『極楽鳥とカタツムリ』と同じく、安野モヨコの描き下ろしである。

                        *

  • 私には友達がいなかった。とくに中学生のころは、昼食をいっしょに食べるクラスメイトさえいなかった。通学時も当然のごとくひとりだったので、しゃべりながら練り歩く同級生をよそに、学校で禁止されていたMDウォークマンで音楽をきいて帰っていた。友達はいなかったけれど、澁澤龍彦はいた。澁澤は学生鞄のなかにいた。鏡や制汗剤といっしょに無造作に入っていた。土方巽が「バラ色ダンス──澁澤さんの方へ」という作品を踊っていたけれど、私も時空をまたいで「澁澤さんの家」にいた。北鎌倉にある澁澤邸には足を踏み入れることはできないけれど、伸縮自在に伸び縮みする本のなかのドラコニア(澁澤さんの家)には毎日遊びに行っていた。そこは、ユートピアだった。中学時代には二度と戻りたくはないけれど、あのときに澁澤を読みふける体験がなかったら、〔‥‥〕ミシェル・レリスが「成熟の年齢」のなかで書いた、ココア缶を持っている女性のココア缶のラベルにも同じ女性がココア缶を持ってほほえんでいるという無限に続く絵のめまいも、きっと知らないままだった。
    朝吹 真理子 「昼休みのドラコニア」


  • ▢ 少女コレクション序説(中央公論新社 2017)澁澤 龍彦
  • 『エロス的人間』『エロティシズム』(1984)に続く文庫版エッセイ集。「シモンの人形(あとがきにかえて)」によると、各エッセイの書かれた時期は1964年から1981年まで17年間に及ぶ。『エロスの解剖』(1965)、『ヨーロッパの乳房』(1973) 、『人形愛序説』(1974)、『城と牢獄』(1980)、『魔法のランプ』(1982)などに収録されたエロティシズム関係のエッセイで構成。「少女コレクション序説」「人形愛の形而上学」「アリスあるいはナルシシストの心のレンズ」「犠牲と変身」「東西春画考」「セーラー服と四畳半」「インセスト、わがユートピア」「幻想文学の異端性について」の7篇は『人形愛序説』からの再録。初版(1985)から32年を経てリニューアルした「改版」は活字が大きくなって(40字×16行)、ページ数も16頁増え(225頁)、新たに巻末エッセイ「昼休みのドラコニア」(朝吹真理子)を収録。『エロス的人間』『エロティシズム』の2冊も今年9月に「改版」された。

                        *

    丸善お茶の水店の「澁澤龍彦没後30周年フェア」‥‥写真は上段左から『澁澤龍彦玉手匣』(河出書房新社)、『超男性』『城の中のイギリス人』『大胯びらき』(白水社)、『少女コレクション序説』(中公文庫)、『高丘親王航海記』(文春文庫)。中段左から「澁澤龍彦ブックガイド」、『神聖受胎』『バビロンの架空園』『極楽鳥とカタツムリ』『毒薬の手帖』『幻想の肖像』『東西悪女物語』『ヨーロッパの乳房』(河出文庫)。下段左から『黒魔術の手帖』『異端の肖像』『秘密結社の手帖』『ドラコニア綺譚集』『女のエピソード』『記憶の遠近法』『唐草物語』『ねむり姫』『洞窟の偶像』『エロティシズム(上・下)』『滞欧日記』『夢のかたち』『オブジェを求めて』『天使から怪物まで』『城 夢想と現実のモニュメント』『サド侯爵 あるいは城と牢獄』『血と薔薇コレクション1・2』『旅のモザイク』『裸婦の中の裸婦』『世紀末画廊』『澁澤龍彦 映画論集成』『太陽王と月の王』『澁澤龍彦 日本芸術論集成』‥‥『私の少年時代』『私の戦後追想』(河出文庫)‥‥。

                        *
    • 「ドラコニアふたたび」を元に改稿・加筆して1つの記事に纏めました^^

    • 「澁澤龍彦ブックガイド」は著作12冊を紹介。「メリーさん」も掲載されています
                        *


    澁澤龍彦ブックガイド

    澁澤龍彦ブックガイド

    • 編集:河出書房新社編集部
    • 出版社:河出書房新社
    • 配布日:2017/05/18
    • メディア:小冊子(TAKE FREE)
    • 内容:悪徳の栄え / 黒魔術の手帖 / 神聖受胎 / 毒薬の手帖 / 世界悪女物語 / エロスの解剖 / 秘密結社の手帖 / 異端の肖像 / ヨーロッパの乳房 / 胡桃の中の世界 / 東西不思議物語 / 唐草物語 // メリーさん(試し読み)


    澁澤龍彦ふたたび(KAWADE夢ムック 文藝別冊)

    澁澤龍彦ふたたび(KAWADE夢ムック 文藝別冊)

    • 編集:河出書房新社編集部
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2017/05/18
    • メディア:ムック
    • 内容:没後30年、いま新たに澁澤が甦る。東雅夫篇澁澤コレクション、澁澤完全ガイド、主要著作ガイド、平野啓一郎、ヤマザキマリ、山崎ナオコーラ、嶽本野ばら、市川春子、三原ミツカズ、滝本誠など


    澁澤龍彦玉手匣(エクラン)

    澁澤龍彦玉手匣(エクラン)

    • 著者:澁澤 龍彦/ 東 雅夫(編)
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2017/07/27
    • メディア:単行本
    • 目次:まえがき / プロローグ / ドラコニア / オブジェ / 文学 / 美術 / 生涯 / エピローグ / 編者謹言


    極楽鳥とカタツムリ

    極楽鳥とカタツムリ

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2017/07/05
    • メディア:文庫
    • 目次:儒艮 / 獏園 / 象 / 犀の図 / ドードー / 鳥のいろいろ / 鳥と風卵 / 極楽鳥について / 桃鳩図について / 海ウサギと海の動物たち / 原初の魚 / 魚の真似をする人類 / 頭足類 / 海胆とペンタグラムマ / 貝 / 貝殻頌 / 貝殻について / 貝殻について / 私の昆虫記 / 箱の中の虫について / スカラベと蟬 / 毛虫と蝶 / 蟻の伝説 / 蟻地獄 / 蠅とエメラルド / タランチ...ュラについて / クレタ島の蝸牛 / 文字食う虫について


    バビロンの架空園

    バビロンの架空園

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日: 2017/08/07
    • メディア:文庫
    • 目次:太古の植物 / 植物界のイカロス / フローラ幻想 / エロスとフローラ / 花 / 植物の性 / フローラ逍遥 / 水仙 / 椿 / 梅 / 菫 / チューリップ / 金雀児 / 桜 / ライラック / アイリス / 牡丹 / 朝顔 / 苧環 / 向日葵 / 葡萄 / 薔薇時計草 / 紫陽花 / 百合 / 合歓 / 罌粟 / クロッカス / コスモス / 林檎 / 菊 / 蘭 / 薬草と毒草 / 琥 珀 / アネモネとサフラン / 香料 / ...


    少女コレクション序説(改版)

    少女コレクション序説(改版)

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日: 2017/07/21
    • メディア:文庫
    • 目次:少女コレクション序説 / 人形愛の形而上学 / アリスあるいはナルシシストの心のレンズ / 犠牲と変身 / 東西春画考 / セーラー服と四畳半 / インセスト、わがユートピア / 幻想文学の異端性について / ポルノグラフィーをめぐる断章 / 近親相姦、鏡のなかの千年王国 / 処女生殖について / ベルメールの人形哲学 / ファンム・アンファンの楽園 / 幼児体験に...


    高丘親王航海記

    高丘親王航海記(新装版)

    • 著者:澁澤 龍彦
    • 出版社:文藝春秋
    • 発売日:2017/09/05
    • メディア:文庫
    • 目次:儒艮 / 蘭房 / 獏園 / 蜜人 / 鏡湖 / 真珠 / 頻伽 / 解説・高橋 克彦

    コメント(4) 
    前の1件 | - b o o k s ブログトップ