So-net無料ブログ作成
検索選択

猫のワガハイ [c a t 's c r a d l e]



  • 吾輩は猫である。猫のくせにどうして主人の心中をかく精密に記述し得るかと疑うものがあるかも知れんが、この位な事は猫にとって何でもない。吾輩はこれで読心術を心得ている。いつ心得たなんて、そんな余計な事は聞かんでもいい。ともかくも心得ている。人間の膝の上へ乗って眠っているうちに、吾輩は吾輩の柔かな毛衣をそっと人間の腹にこすり付ける。すると一道の電気が起って彼の腹の中のいきさつが手にとるように吾輩の心眼に映ずる。先達てなどは主人がやさしく吾輩の頭を撫で廻しながら、突然この猫の皮を剥いでちゃんちゃんにしたらさぞあたたかでよかろうと飛んでもない了見をむらむらと起したのを即座に気取って覚えずひやっとした事さえある。怖い事だ。当夜主人の頭のなかに起った以上の思想もそんな訳合で幸にも諸君に御報道する事が出来るように相成ったのは吾輩の大に栄誉とするところである。但し主人は「何が何だか分らなくなった」まで考えてそのあとはぐうぐう寐てしまったのである、あすになれば何をどこまで考えたかまるで忘れてしまうに違ない。
    夏目 漱石「吾輩ハ猫デアル 166」(朝日新聞 2016. 12. 26)


  • ◇ 吾輩は猫である(朝日新聞 2016-2017)夏目 漱石
  • 珍野家の飼いネコ「吾輩」が1人称猫視点で語る余りにも有名な漱石の「猫」。「漱石没後100年メモリアル」として、朝日新聞の朝刊(月~金曜、2016. 4. 1~2017. 3. 28)に1年間再連載された。前半は二絃琴の師匠宅で飼われている三毛子(主人公が密かに恋心を抱いている)、ボス猫の車屋の黒など、「吾輩」を含めた近所のネコの行動や生態が描写されているが、後半は主人の苦沙弥先生、友人の美学者・迷亭、教え子の理学士・水島寒月、新体詩人・越智東風、哲学者・八木独仙たちの会話が主体となってしまい 、傍らで聞き役(記述者?)に徹している「吾輩」の出る幕は殆どない。漱石の長編小説としても冗長すぎる(岩波文庫版は563頁)し、タイトルやテーマからも逸脱している。もっと「吾輩」の活躍を読みたかったし、単行本として上梓される際に苦沙弥先生と友人たちの与太話の多くは端折っても良かったのではないかと思う。新聞連載小説(全224回)を切り抜いて貼れる「吾輩は猫であるノート」(2分冊・A4判・132頁)も販売されています。

  • ◇ 猫光線(中央公論新社 2016)武田 花
  • 女性写真家のフォト・エッセイ集。商店街、薬屋、漁港、神社、病院裏、城内、空き地、路地など‥‥著者が日本国内を「ネコ歩き」したスナップショット70数点(ネコはモノクロ、ネコ以外はカラー写真が多い)に、11篇のエッセイが添えられている。写真とエッセイの割合は約4対1で写真集の色合いが濃い。岩合さんのように構図や背景にも気を配った「ネコ写真」ではないけれど、「デブ猫がお腹を見せてこねくり、こねくり」「猫がせっせと」など、エッセイは直截的でユーモアに富んでいる。「よその猫うちの猫」を読むと、著者が飼いネコ(くもちゃん)を連れて旅行していることが分かる(山岸凉子も愛猫のケイトちゃんと一緒に外出していた)。両親(武田泰淳・百合子夫妻)のエピソードを綴った巻末書き下ろしの「母と乗り物」も出色。読み足らないというネコ好きは24篇のエッセイにモノクロ写真(ネコや風景など)を添えた『猫のお化けは怖くない』(平凡社 2016)を読もう。

  • ◇ 猫はなんでも知っている(筑摩書房 1999)ニキ・アンダーソン
  • 著者のニキ・アンダーソンが自分の飼いネコや友人のネコ、本の中のネコなどに「取材」して纏めたショート・ストーリーズ。原題は「猫が人生について教えてくれたこと」(What My Cat Taught Me About Life 1997)で、サブタイトルは「猫好きの人間のための瞑想」(Meditations For Cat Lovers)。ネコたちの性格や行動、生態などから学ぶ人生哲学の書である。「チップの夢の実現」「見はり番、ペッパー警部」「サムの長い旅」など‥‥原著47篇の中から35篇を厳選。リアル・キャットだけでなく、アリスのチェシャネコさんも登場する。各エピソードの末尾には「猫の小判」「しっぽの名言」「猫のマメ知識」「猫のお祈りの言葉」が付いている。小手鞠るいも「訳者あとがき」の中で、「そう、猫はニャンでも知っている。われわれ人間にとって、猫は先達であり、哲学者であり、仙人なのです。それに猫は、愛を知っている。嘘のない愛です。人間の愛はときには相手を裏切りますが、猫の愛は深く、決して冷めません」と書いている。

  • ◇ 猫の名画物語(グラフィック社 1996)スーザン・ハーバート
  • ボッティチェリの〈春(ラ・プリマヴェーラ)〉、ダ・ヴィンチの〈白貂を抱く貴婦人〉、ミケランジェロの〈アダムの創造〉、フェルメールの〈画室の中の画家〉など、世界的に有名な絵のモデルは人ではなく猫だった?‥‥ジュヌヴィエーヴ・マックカーン(キャッツアリナ島大学准教授)の「編者の序文」によると、多くの美術家が「最高傑作のいくつかを描くにあたって、その習作のモデルに猫を使っていた」という。英オックスフォード大学で美術を学んだスーザン・ハーバート(Susan Herbert 1945-2014)は名画(絵画・映画)に登場する人物をネコに置き換えた「猫名画」で知られる画家。彼女のネコは写実的に描かれているので、シュー・ヤマモトの「CAT ART」と比べるまでもなく、現実のネコに近い。そのために絵画の対象は古代エジプトからルネサンス、ラファエル前派、印象派までの具象画に限られる(20世紀のシュルレアリスムや抽象画、ポップアートなどは描いていない)。全31点の「猫名画」には猫の習作モデル説を裏付ける編者の作品解説が付いている。

  • ◇ ちいさな手のひら事典 ねこ(グラフィック社 2016)ブリジット・ビュラール=コルドー
  • 世界のネコの歴史や民間信仰、ことわざ、性質、行動、品種‥‥など全78項目の見出しとアンティーク・クロモカードで構成された「ネコの小事典」。子ネコのように小さくて可愛い本で、小口は金色に塗られている。見開き左頁に解説文、右頁にカラー・イラストを掲載。シャルル・ボードレールやコレットなどの洒落たエピグラフ付き。「歌」という項目には、《今日なお、多くのミュージシャンが、ねこをテーマにしていて、フランスのアカペラ四重奏グループ、パウワウは「僕はねこになりたいのさ」と歌い、ノルウェンは、アルバムのカバー写真に『不思議の国のアリス』のチェシャねこを用いました》という記述がある。Pow woWの歌は〈Le Chat〉(Mercury 1992)、Nolwenn Leroyのアルバムは《Le Cheshire Cat & Moi》(2009)ですが、前者はアカペラ・カルテットなので「四重唱」、後者のアルバム・カヴァはノルウェン・ルロワとチェシャ・キャットのイラストなので「カヴァ画」と日本語に訳すべきです。

  • ◇ ねこだけどライオン(セーラー出版 1991)リンダ・ヴォルフスグルーバー
  • 飼いネコのレオは何不自由ない快適な毎日を過ごしていた。ある日、散歩から帰る途中で、大きなライオンに見られていることに気づく。「ザンジバール・サーカス、百獣の王エドワルド」の特大ポスターだった。ライオンの勇姿に心を奪われたレオは同じネコ科の仲間として、一度くらい百獣の王になってみようかと思う。自分が強く大きくなった気がしたレオはライオン気取りで街から出て行く。遊び仲間のウサギたちの長い耳に咬みつこうとするが、逆に体の具合が悪いのではないかと心配される始末。賢く優しく平和を愛する百獣の王は前肢に止まった小鳥たちを自由に遊ばせる。木に登って獲物を待ち伏せするレオは眠ってしまい夢を見た。アフリカの草原をシマウマやカモシカが通りすぎる。カモシカを目がけて木から跳び降りると、のんびりと牝牛たちが草を食んでいた。からかうように彼らの周りを歩くが、角を向けられて逃げ出す。大きな犬に追い駆けられて銅像の上に攀じ登る。家に帰ったレオは退屈なネコではなかった。ライオンらしさに目覚めて、ネズミ1匹見逃さない。

  • ◇ 85枚の猫(新潮社 1996)イーラ
  • 女性写真家イーラ(Ylla 1911-1955)の古典的なネコ写真集。シンプルなタイトル通り85枚のモノクロ写真で構成されている。オーストリア・ウィーン生まれのカミーラ・コフラー(Kamilla Koffler)は8歳でハンガリー・ブダペストのドイツ人寄宿学校に入学し、1925年に母親のいるユーゴスラヴィア・ベオグラードの美術アカデミーで彫刻を学んだ。1931年にパリへ渡り、1941年にアメリカへ移住。1955年インドで撮影中に事故死するまで、動物写真家として活躍した。ペルシャ、アメリカン・ショートヘア、シャム、アビシニアン、チンチラ、路地裏の猫たち‥‥イーラが撮ったネコたちの目は爛々と輝いている。彼らは一体何を見つめているのだろうか(食べものでネコの気を惹いている?)。日本語版には原書『85 Chats』(1952)が教科書の1つだったと語る岩合光昭の巻頭エッセイ「イーラの猫からはじまった」を収録。 空中浮游する子ネコの写真「夢のイメージ」は高く放り上げたネコが落下する瞬間を狙って撮るそうです。

  • ◇ ダンスがすんだ(新潮社 2004)フジモトマサル
  • 「イラストレーター兼マンガ家。ときになぞなぞ作家、そして回文作家」による回文絵物語(一部書店では回文新聞「しんぶんし」も配布された)。見開き右頁に回文、左頁にモノクロ・イラストというレイアウトで全76篇を収録している。「医者らしい」から「歌唄う」までの単純な回文だが、長編ストーリ仕立てになっているところが新機軸で面白い。青年医師と黒猫美女の危ないアヴァンチュール、妻との離婚、猫人の蜂起、叛乱、革命、亡命?‥‥と、ダークでスリリングなフィルム・ノワール風の物語を愉しめる。モノクロの世界の中でファム・ファタルな黒ネコの睛が妖しく光る。ネコと回文は相性が良い。長い回文よりも短い回文を作る方が遙かに難しい。10文字前後の短回文は既に世間に流布されている可能性が高いから。使い回された既成回文も少なくない中で、「改竄破格! 飽きて懲りない脱税医。絶大利己的悪か? 犯罪か?」という長回文が著者の力量を示している。『キネマへまねき』(徳間オリオン 1994)の渾身リニューアルだったことも感慨深い。

  • ◇ 猫なんて! 作家と猫をめぐる47話(キノブックス 2016)
  • 詩人、作家、フランス文学者、マンガ家、美術家、歌人、エッセイスト、物理学者・俳人、英米文学者、批評家、翻訳家、写真家、心理学者、イラストレーター、精神科医、舞踏家、映画監督など47人の「猫エッセイ」を収録したニャンソロジー。萩原朔太郎(詩)、村上春樹、丸谷才一、鹿島茂、吉行淳之介、長谷川町子、谷崎潤一郎、柳瀬尚紀、金井美恵子、柴田元幸、武田花、高橋源一郎、平出隆、水木しげる、大島弓子、澁澤龍彦、野坂昭如、中島らも、麿赤兒(小説?)、伊丹十三、町田康‥‥日本を代表する作家やマンガ家(エッセイではなく猫マンガを掲載)などが分け隔てなく並んでいる。この種のアンソロジーは編者の力量(知識と教養)が問われるが、本書に選ばれた書き手は幅広く、過去への目配りも行き届いている。《私は実にしばしば自分にも尻尾があつたらなあと思い、猫を羨しく感ずる場合に打つかるからである》と綴る「客ぎらひ」の小説家と同じく、ネコの尻尾が欲しい。

  • ◇ 吾輩も猫である(新潮社 2016)
  • 「夏目漱石没後100年&生誕150年記念出版」と銘打った人気作家8人(赤川次郎、新井素子、石田衣良、荻原浩、恩田陸、原田マハ、村山由佳、山内マリコ)によるオリジナル短篇競作集。主人公のネコが1人称視点で語る「吾輩は猫である」へのオマージュ。ミステリ仕立ての「いつか、猫になった日」。エッセイ饒舌体の「妾は、猫で御座います」。サバトラと三毛ネコが念話(テレパシー)を交わす「ココアとスミレ」。4コマ・マンガの「吾輩は猫であるけれど」。九尾の猫が人間の愚かさをを痛烈に批判する破滅SFの「惻隠」。実在する猫本専門書店・吾輩堂の見習い丁稚ネコが語る「飛梅」。三毛ネコが女飼主(作詞家)の恋愛模様を描く「猫の神さま」。芸大生に拾われたサビ猫がマンション(女子寮)で暮らす「彼女との、最初の一年」。飼いネコが主人や家族や友人たちを観察・批評するという本家の設定に倣うことで、逆に愛猫家としてのネコへの思いが露わになっている。荻原浩の猫マンガが面白すぎ!‥‥プロのマンガ家も顔負けなんじゃないの?

                        *
    • お気に入りのネコ本を10冊ずつ紹介する「猫のゆりかご」シリーズ第9集です^^

    • 「ねこだけどライオン」 「ダンスがすんだ」 「吾輩も猫である」 は再録(加筆・改稿)

    • 一覧リスト「猫ゆりすと」(猫本90)を更新しました
                        *




    猫光線

    猫光線

    • 著者:武田 花
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日:2016/03/24
    • メディア:単行本
    • 目次:デブ猫がお腹を見せてこねくり、こねくり / 猫がせっせと / よその猫うちの猫 / 港食堂 / 老猫 / 猫の見送り / お城で / 好きな物 / 空き地の隅 / 路地を行けば / 母と乗り物


    ちいさな手のひら事典 ねこ

    ちいさな手のひら事典 ねこ

    • 著者:ブリジット・ビュラール=コルドー(Brigitte Bulard-Cordeau)/ いぶき けい(訳)
    • 出版社:グラフィック社
    • 発売日:2016/05/16
    • メディア:単行本
    • 目次:千と一匹のねこ / 起源 / 種 / 家畜化 / エジプトの聖なるねこ / アジアの伝説 / ヨーロッパの伝説 / 中世のねこ / ねこと魔女 / 民間信仰 / ことわざ / お守りとしてのねこ / ねこと妖精 / ねこと女性と月 / 有名人のねこ / ねこ嫌い / 有名なねこ / 詩 / フランス文学 / 外国文学 / ねこと作家 / 童話 / 長靴をはいた猫 / 歌 / 童謡 / 絵画 / 彫刻 / 映画 / ねこ...


    猫はなんでも知っている

    猫はなんでも知っている

    • 著者:ニキ・アンダーソン(Niki Anderson)/ 小手鞠 るい(訳)/ 山岡 康子(画)
    • 出版社:筑摩書房
    • 発売日: 1999/09/10
    • メディア:単行本
    • 目次:チップの夢の実現 / 見はり番、ペッパー警部 / サムの長い旅 / 世界一の頑固者、テナシティー / おこりんぼうのヒス&スピット / 希望という名のホープ / 不法侵入の達人、キトン / チェシャネコさんの貴重なアドバイス / フラフィーのラブ・ストーリー / 嫉妬を乗りこえたマーマレード / 二度救われたパウンサー / ベビーシッターになったゲリー / ...


    猫の名画物語

    猫の名画物語

    • 著者:スーザン・ハーバート(Susan Herbert)/ 上坪 正徳(訳)
    • 出版社:グラフィック社
    • 発売日:1996/04/25
    • メディア:単行本
    • 収録作品:ツタンカーメン / ギリシアの壷 / キューピッドを懲らしめるヴィーナス / テオドラ皇后 / ベリー公大祈祷書より暦・4月 / 妻の肖像 / レオナルド・ロレダーの肖像 / 春(ラ・プリマヴェーラ)/ 若い男の肖像 / 白貂を抱く貴婦人 / アダムの創造 / レオ10世像 / 百姓の踊り / スイカズラの木陰で / 布地組合の見本鑑定官たち / 鏡の‥‥


    85枚の猫

    85枚の猫(85 CHATS)

    • 著者:イーラ(Ylla)
    • 出版社:新潮社
    • 発売日:1996/11/25
    • メディア:大型本
    • 目次:イーラの猫からはじまった・岩合 光昭 / プロフィール / 85枚の猫 / 登場猫一覧

    コメント(0)  トラックバック(0) 

    コメント 0

    コメントを書く

    お名前:
    URL:
    コメント:
    画像認証:
    下の画像に表示されている文字を入力してください。

    トラックバック 0