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心霊痙攣死 [p a l i n d r o m e]



  • 「簡単じゃありませんよ。コードなら書けるけれど、文章は苦手」島田は笑った。「あ、そう、西之園さん、ええ、彼女、今、W大の先生になっているでしょう?」「良くご存知ですね」「なんとなく、風の噂で‥‥。この頃はね、先生が美人だっていうだけで、学生が授業中に写真を撮って、それをネットに流すんですよ。プライベートなんて、あったもんじゃない」「ツイッタですか?」「ええ、そう。みんな喜んでやっているけれど、利用されているって、どれくらい気づいているかしら。私はやらない。利用されるよりは、利用する側に回りたいから」「僕もやりません。でも、常に見ています」「同じ。SNSもね‥‥、まるで家畜」「そこまで酷くはないでしょう」「餌は何かしらって、思わない?」「何でしょう。つながりたいんですよ、人間というのは」「そうそう、絆ね。絆って、牛をつないでおく綱のことでしょう?」「ネットというものが、元来そういう装置なのでしょうね」「人間を縛りつけておく装置?」「そうです」
    森 博嗣 『キウイγは時計仕掛け』


  • ⃞ 2組目、綱引きに玉入れ。憂い、また面皰?‥‥夏目三久に
    代々木競技場(第1体育館)で開催されたオールスター紅白大運動会。アイドル歌手、若手俳優、タレント、お笑い芸人など、芸能人が一堂に会するイヴェントに夏目三久も初参戦することになった。しかし、彼女は憂鬱だった。日テレの女子アナからフリーになってから暫くは暇だったが、最近は超多忙を極めていたから。寝不足や運動不足が祟って基礎体力は目に見えて衰えている(スレンダーな大女の割にはバレーもバスケットも苦手だった)。「怒り新党」でも時々涙ぐむなど情緒不安定で、不眠症にも悩んでいたのだ。昨夜も余り眠れなかった。運動会の朝、鏡を見ると額に「面皰」(25歳を過ぎたら「吹出物」というべきなのかしら?)が出来ていた。ニキビは赤い鉢巻きで隠せるとしても、競技には参加したくないなぁ。素肌も露出させたくないし‥‥「綱引き」は手抜きで、長身を生かせる「玉入れ」に集中しようと早くも心に決めていた。

    ⃞ 衣擦れ鳥居、メランコリー。離婚、ラメ入りドレス脱ぎ‥‥
    1人の中年女性が赤い鳥居の下を潜って神社へ参拝に行く。20年以上前、この社殿で婚約者と祝言を挙げたけれど、今は離婚へ向けて調停中の身だった。あの時と同じ「ジューン・ブライド」というか、日本では鬱陶しい梅雨の時季‥‥同じ景色を見ているのに彼女の心は晴れない。灰色の雨雲で覆われた空模様のように憂鬱で死にたくなる。結婚式は文金高島田の和式だったが、ホテルで行なった披露宴では一転して豪華絢爛なラメ入りのウェディングドレスだった。ディスコで踊り狂った夜。ミラーボールに乱反射する光芒。あの頃は身も心もキラキラ光り輝いていたわ。日本中がバブル景気の乱痴気騒ぎで浮かれていた。私の新婚生活は虚飾に塗れたバブル時代の徒花だったのかしら?‥‥女は賽銭箱に小銭を投げ入れ、鈴を鳴らして両手を合わせる。離婚後はシックなドレスの似合う落ち着いた女性になりたいと祈願して。

    ⃞ 田舎坂、シマウマ見舞う、マジ傘がない!
    家から外出した時は青い空に白い雲が浮かぶ絶好の行楽日和だったのに、田舎の坂道に差しかかった時に吹いた生暖かい風が不吉な悪魔の合図だったかのように突然、空が掻き曇って大粒の雨が降って来た。久しぶりの休日に森を散策しようとしていたシマウマ君は横殴りの豪雨に襲われて、坂の途中で立ち往生していた。お気に入りのボーダー柄の服も愛妻弁当も一瞬にしてズブ濡れになってしまった。漆黒の暗雲に覆われた空に青白い稲妻が走り、ドス黒い竜巻が巨大な独楽のように回転しながら近づいて来る。激しい落雷音が轟き、空気を引き裂く強風が響く。野鳥や小鳥たちが風に攫われるように飛んで行く。この片田舎には彦根藩主井伊直孝を雷雨から救ったという「招き猫」もいないし、豪徳寺のような風雨を凌げる荒寺もない。「天は我を見捨てたのか!」と嘶くシマウマ君‥‥これでは井上陽水の〈傘がない〉どころか、Neil Youngの〈Like A Hurricane〉ではないか!

    ⃞ ハガキ描く駱駝、おたく落書き河馬
    ラクダ君は絵が上手い。小・中学校の図工・美術の成績は常に「5」だったし、幼少の頃から絵を描くことが大好きだった。今でもスケッチブックと絵筆を持ち歩いているし、年賀状や暑中見舞いだけでなく、旅行先から家族や友人に宛てた絵葉書なども1枚1枚手描きしている。ラクダ君、曰く「パソコンで描いた1つのイラストを大量にプリント・アウトするなんて面白くも何ともないよ」。友達のカバさんは落書きオタクである。画用紙やメモ用紙、ナプキンだけでなく、襖や壁など余白や空白のある平面を見つけると何かを描かずにはいられない。特に大きな壁面には興奮する。夢は「壁画」を描くこと。今までは自己流の具象画が中心だったが、「ジャクソン・ポロック展」を観てからは抽象画に目醒めた。巨大なカンヴァスをイーゼルに立て掛けず、床に置いて上から描くポロックの手法は鮮烈だった。直立二足歩行の人間よりも、四つ足動物の方が理に適っていると思うのだ。

    ⃞ 怪我し、生け捕り檻、時計仕掛け
    N子さんは動物保護のボランティア活動をしていた。と言っても大型動物を扱うのは手に余るし、獣医でもないので、主に街のノラネコを保護して避妊手術を施す活動の手助けをしているだけなのだが。それでも聞くのと実際に従事するのとは大違い。人に馴れていないノラネコを捕獲することは思っていた以上に困難を窮めた。S神井川周辺地域ではネコを川へ投げ捨てる動物虐待者がいて、ネコ好きの住民たちは心を痛めている。川底に落ちたネコを救出するために消防車が出動した現場に居合わせたこともあるが、恐怖でパニック状態に陥っているネコを救出するのは手練の消防団員でも苦労していた。今日は右後肢を怪我したノラネコを捕獲するために、真新しい檻を縄張りに設置してみた。通常の檻はネコが中に入って「餌」を食べると自動的に入口が閉まる仕掛けになっているが、最新式の捕獲用檻はネコが中に入ってから閉じ込めるまでの時間を自由に調節出来るようになっている。従来の檻では「餌」だけ食い逃げされて藻抜けの空ということも少なくなかった。しかし、時計仕掛けの檻の中には確実に獲物が入るという。

    ⃞ 血糊か?‥‥油断して死んだ縁の地
    ついに雌雄を決する時が来た。宿命のライヴァル同士の最終対決。1対1の果たし合い。巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎のような一騎討ちが今始まろうとしていた。決闘の場所として選ばれたのは俺の生まれ育った故郷、子供の頃に遊んだ太平洋沿岸の砂浜である。「地の利」は圧倒的に俺の方にある。どれくらいの時間が流れただろうか。仇敵と対峙したまま、お互いに身動き1つしない。剣豪の真剣勝負は一瞬で決まる。静から動への切り替えはゼロゼロナインの加速装置のように瞬時に発動する。少しでも隙を見せた方が先に斬られる。痺れを切らせて先に行動を起こした者が確実に殺られる。暖かい日差しと涼やかな海風が心地良い。少年時代の記憶がフラッシュバックした瞬間、二刀の刃が一閃して2人の立ち位置が入れ代わった。相手の太刀に付いた「血糊」が赤黒く光るのを薄れ行く意識の薄明かりの中で見た。「地の利」に慢心した俺の負けだった。

    ⃞ 軍人南海艱難辛苦
    「集団的自衛権」が行使されれば、かつての「周辺事態法」どころの騒ぎではない。地理的な制約から解放された自衛隊は必要とあらば地球の裏側まで進軍することが出来るようになるのだ。「後方支援」という名目で参戦して来た海上自衛隊の海外派兵も一挙に現実味を帯びて来る。日本人が他国(同盟国)のために戦うのが「集団的自衛権」の本質である。他国同士の戦争に巻き込まれる可能性も増すだろう。戦争とは合法的に敵対する人間を殺し、殺されることである。戦闘中に「戦死」するリスクが高まれば自衛隊への入隊志願者数は激減する。そうなれば日本政府は「徴兵制」を導入せざるを得なくなる。「集団的自衛権」から「徴兵制」までは、いつか通ったことのある1本道である。そして「貧困」と同じく、「軍人」という死語が復活する。南海へ派兵された「軍人」たちは、太平洋戦争で玉砕した日本兵と同じような辛い目に遭うだろう。

    ⃞ ジョン・エヴァリット・ミレイ氏らしい。いじらしいレミと釣り合う縁良し
    〈両親の家のキリスト〉(1849-50)を大作家のディケンズに酷評され、〈オフィーリア〉(1850-51)をロンドン・タイムズ紙に「雑草だらけの溝の中で横たわっているように見える」と揶揄されたミレイ氏は「ラファエル前派」の画家であることに嫌気が差してしまったのか。真に斬新で革新的な試みは同時代の人々に理解されない。エフィー・グレイと結婚したミレイ氏は8人の子供たちを養うために、崇高な理想を捨てて職業画家へ転身せざるを得なかったという事情もあった。後年、富も名誉も地位も手に入れたミレイ氏だったが、風が強く吹き荒ぶ夜には心の中を虚無の風が通り抜けていた。ある眠れぬ夜、子供たちに読み聞かせるつもりで買っておいた1冊の児童書を何気なく手に取った。エクトール・アンリ・マロの『家なき子』(1878)を読み進むに連れてレミ少年に感情移入したミレイ氏は読み終わる頃には本の挿絵を描きたいと思うようになっていた。若き日の「ラファエル前派」以来、長らく感じたことのない新鮮な気持ちだった。しかし、ミレイ氏が『家なき子』挿絵を描いたという痕跡はないし、イラスト入りの『家なき子』が出版されることもなかった。

    ⃞ ゴツいメタボな体型、せめて目整形、棚ぼた姪っ子
    従姪(従妹の娘)が某アイドル・ユニットの新メンバーとしてデビューした。今年4月に入学したばかりの女子高生だが、週末(土・日)は都内で行なわれるライヴや握手会などの活動で忙しい。小学生時代から新体操を習っていたというだけあって、ダンスは得意分野。彼女が少女アイドルとしてデビューする契機になったのは街でスカウトされたからで、早々と新メンバーに抜擢されたのは前任の少女が突然引退してしまったからだった。「学業優先」というのが引退の表向きの理由だったが、「アイドル」と呼ぶには余りにも肥満したメタボ体型になってしまったことが真相らしい。事情通のファンによると、整形手術に失敗したからだという黒い噂もネットでは囁かれているらしい。それは兎も角、棚ぼた式にデビューを飾った姪っ子には悔いのない青春を送って欲しいと老婆心ながら思う。彼女が地下アイドルから地上に出てくる日も近い?

    ⃞ 新都知事とヒーロー、人質、頓死?
    「東京都庁に潜入した爆弾魔が多数の人質を取って立て籠った」というテロップがTVモニタ画面の上部に流れた。爆弾魔が立て籠ったのは都庁内の知事執務室で、年末の選挙で初当選した新都知事・巻添要二と都職員、一般都民など十数人が人質として囚われているらしい。その中には都庁見学(45階の展望室)に来た久住健太と倉多夏海のカップル(?)も含まれていた。躰に時限爆弾を巻いた犯人の要求は「2020年東京オリンピックの即時中止」だった。もし主張が速やかに承諾されないのならば人質全員を道連れに自爆すると宣言した。タイムリミットは10時間。今まさに時限爆弾のスイッチが押されて赤いデジタル時計のカウントダウンが始まった。犯人に代わって東京五輪の中止を訴える新都知事の泣き顔が某動画投稿サイトにアップされると、その衝撃的なニュースは瞬く間に全世界へ拡散した。しかし、一部の視聴者は囚われの身の久住健太が「ヒーロー」であることを知っている。実姉が遺児に託した魔法のドロップを舐めると、10分間だけ10倍の能力を発揮出来る「でたらめヒーロー」に変身することを‥‥。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • ヒーロー回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #36」の解答です^^

     スニンクスなぞなぞ回文 #37

      ◯▢△▽◎◯タコキャット☆とつやきこた◯◎▽△▢◯

     回文作成:sknys

     ヒント:期間限定発売中!


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    キウイγは時計仕掛け

    キウイγは時計仕掛け

    • 著者:森 博嗣
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2013/11/07
    • メディア:新書
    • 目次:プロローグ / アカデミックな器機 / エキセントリックな鬼気 / リカーシブな忌諱 / アヴェイラブルな危機 / エピローグ

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