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ランバダ半裸 [p a l i n d r o m e]



  • 「伝説の長靴の戦士は、〈イテエ〉という名前なのか。変わっているな」/「うるせえ! 今のは名乗ったんじゃねえ!」/「ならば、私も名乗らせてもらおうか」/ 浮遊アドバルーンは、そのまん丸い巨体をぶるりと震わせた。また輪郭がさざ波立ち、無数の冷凍メスが現れる。今度はそれを身体のまわりに生やしたまま、冷気に眩しくきらめかせる。/ アドバルーンのど真ん中に巨大な1つ目が現れた。二重瞼で、やたら睫毛が長い。そのせいだろうか、どことなく媚びを含んだ笑みを浮かべているような目つき。/ 大目玉アドバルーンは呼ばわった。/「世界のすべてを凍りつかせ、久遠の眠りへと誘う絶対零度の王。崇めよ、小童! 我が名は〈氷の微笑〉じゃ!」/ 当然、ノーパンです。/ ピノは仰天した。「マジで?」/「あんたもいちいち作者のゴタクを真に受けてンじゃないわよ!」/ ピピの言う通りです。/「だいたい、こいつがどこにパンツはけるっていうのよ!」
    宮部 みゆき 『ここはボツコニアン 2』


  • ⃞ 死の迷路の橋本愛、怖いわ濃い跡、文字は呪い女の字
    目覚めると漆黒の闇に支配されていた。これが暗黒世界なのかと疑う。倒れていた周囲は瓦礫が散乱しているらしく、手で弄ると固い石片やザラザラしたコンクリートの感触が伝わって来る。暗闇に目が慣れると同時に、左肘や右足首に火傷したような激痛が走った。躰の痛みが失われた記憶を呼び覚ます。私は地下鉄に乗っていたのだ。都会生まれの友人でさえ、時々迷ってしまうという東京メトロに‥‥。走行中に激しい揺れが起きて緊急停車した時、あるいは誰かが非常用のボタンを押して開いたドアから飛び降りた時に転んで怪我をしたのだろうか。肩から下げていた愛用のバッグ(INGNI)も見当たらないし、パンプスも左足しか履いていない。今や頼りは首から下げていたスマホ(iPhone)だけだった。電源を入れると手許が明るくなる。こんな非常時には誰と連絡を取るべきなのか、それとも真っ先にメールをチェックすべきなのかパニクった頭で思い悩んでいると、視界の端に奇妙な模様が入って来た。スマホを傾けると左腕にミミズ腫れのような赤い疵痕が浮かび上がる。それは怖しい呪いの文字だった。

    ⃞ プール狂いノーパン・メンバーのいるグループ
    あたしの夢は大きなプール付きの家に住むこと。豪邸よりも何よりも、庭に緑の芝生と青いプールのあることが第一条件なの。塩素臭のある冷たい水が大好き!‥‥真夏のプールに比べたら屋内の温水プールなんて、年寄りのための養護施設じゃないかとさえ思うわ。晴れた夏の日は1日中プールの中で遊んでいたいな。海水浴の方が景色もきれいだし解放感もあるじゃんって女友達は言うけれど、その中にナンパ目的も入っているのはバレバレだし、どこかから流れ出した汚染水が混じっていないとは言い切れない出来ないので、あたしは海よりも断然プール派なわけなのよ。仰向けに浮かんで、青い空を白い雲が形を変えて行くをの眺めるのも好き。ビーチ・チェアに寝転んで冷たいレモネードを飲むのも好き。もちろん木陰で読書したりもするわよ。マネージャーからは余り肌を焼かないようにって注意されているからね。そう、某アイドル・グループのメンバーでもあるのだから‥‥あたしのニックネームは「氷の微笑」。渾名の由来はヒ・ミ・ツだよ。

    ⃞ 煮出し出汁、溶けやすいアイス、火傷した舌に
    マコトは細くて長い麺類が大好き。うどん、蕎麦、ラーメン、焼きそば、春雨、ビーフン、スパゲッティ‥‥紐状の食物ならば和洋中は問わない。もちろん美味い麺を求めて食べ歩きもするし、自宅でも麺類が主食となっている。麺も手打ちすると自慢したいところだが、ド素人が見よう見まねで作れるほど「麺道」は甘くない。何よりも仕込みに体力がいるし、食べきれないほど大量に出来ちゃう。そこで、自家製麺作りは諦めて、出汁に拘ることにした。うどんにも蕎麦にも合う特製の和風出汁作り。今夜もマコトは昆布や鰹節を煮て出汁を作っていた。味見をしようとして沸騰した鍋から直接お玉で掬って舐めたのが大失敗だった。舌に火傷!‥‥こんな時は冷凍庫の中の氷を口に含むことにしているのだが、運悪く製氷室の中は空っぽだった。仕方なく姉が買い置きしているアイスクリームを食べてしまった。でもハーゲンダッツって、固まり難いというか、溶けやすいアイスなのよね。姉にバレないように早く補充して置かなくっちゃ‥‥それでなくても私たち姉妹は喧嘩の絶えない犬猿の仲なのだから。

    ⃞ 禁区、鴬、湖水、空軍機
    原生林が鬱蒼と覆い繁る一帯は国の自然保護地区に指定されている。森に立ち入って樹々を伐採することも禁じられているし、動物たちの狩猟も一切許可されていない。ウグイスが特徴的な声で鳴きながら湖上を飛ぶ。60年代後半にヒットした〈ブルー・シャトウ〉や〈虹色の湖〉が抽象的な歌詞で、どこにもない場所を歌っていたように、物語の中の森やファンタジーの中の湖を彷彿させる。もちろん猛禽類の鷹がいないので、小鳥たちが遊んでいるわけではない。人間たちの入り込めない「禁区」は弱肉強食の世界でもある(資本主義社会も弱肉強食なのかもしれないけれど)。この森林地帯に1機の戦闘機が飛来した。ジェット機の爆音が森の静寂を引き裂き、湖面に漣を立てる。一体何の目的で人里離れた山奥に飛んで来たのだろうか。森に棲む動物たちに空飛ぶ物体の正体は永遠に分からない。ネコが目の前を通り過ぎるクルマが何者であるのか分からないように。

    ⃞ 旅立ちオスプレイ飛ぶ。トイレ伏す、落ちた日だ
    プロペラ機とヘリコプターのハイブリット輸送機オスプレイ(Osprey)は試作段階から重大な事故を起こすことで知られ、「ウィドウ・メーカー」(未亡人製造機)という不名誉な渾名が付けられている。ある目的に特化・進化したものや生物は美しいフォルムに包まれている。音速を超えて空中を飛ぶジェット機や高速で走行する新幹線は流線型をしているし、鳥や蝶も美しい形状や綺麗な色彩で魅了する。銃やナイフという携帯用の武器にソリッドな美を見出すマニアも少なくない。贅肉を削ぎ落した身体が美しいように、研ぎ澄まされて洗練されたものは光り輝く。たとえ、それが殺人兵器であったとしても‥‥。しかし、垂直離着陸機オスプレイはお世辞にもカッコ良くは見えない。その不格好で醜悪なフォルムは黒い怪鳥コンコルドを想わせなくもない。いつ墜落しても驚かない。トイレの窓から低空飛行するオスプレイの姿を目撃した主婦は落ちた日を思い出し、蹲って震えた。

    ⃞ 暗い月に喫茶移転。新偵察機、2機墜落
    都市再開発計画の要請を受けて、喫茶「ニュー・ムーン」が移転することになった。満月の夜に解散したというTelevisionに倣って、「ニュー・ムーン」は、その名の通り「新月」の夜に閉店して半年後に少し離れた場所に移ってリニューアル・オープンした。この界隈は米軍基地の近くなので、アメリカ兵の常連客も少なくない。店内で流れる音楽も英米のロックやポップスが中心である。60年代後半の開店当時は「ロック喫茶」とも呼ばれて反戦(厭戦?)ロックを大音量で鳴らしていたが、時代も移り変わり、9・11以降はエレクトロニカやドリーム・ポップなど内省的で気味悪くもある音楽が主流となっている。大きなトラブルもなく無事に新開店日を終えようとした夜、米空軍の偵察機2機が空中衝突して墜落するという大事故が起こった。耳を劈く轟音と夜空を切り裂く閃光!‥‥この世の終わり(核ミサイルや巨大隕石が落ちて来た?)かと思ったとマスターがTVニュースのインタヴューに答えていた。この時、店内で流れていた音楽がU2だったというオチは出来すぎかしら?

    ⃞ 火だるま、トラウマ、宿、山裏泊る旅
    ルポ・ライターの達磨怜悧には忘れたくても忘れられない記憶があった。幼い頃、実家が火事で全焼して、両親を同時に失ったのだ。彼女自身も火だるまになって大火傷したことがトラウマとなって今日に足る。意識不明の危篤状態から恢復したのは奇蹟だったと主治医が語るほどの大怪我だった。ある寒村で村人5人が惨殺され、民家が全焼した放火殺人事件の取材で現地に着いた怜悧は山を隔てた隣村の民宿に泊った。布団の上に寝て目を閉じると焼き付いたような赤い炎の残像が浮かぶ。やっぱり私は「火」に引き寄せられてしまうのかと暗い室内で独り自問する。翌朝、まだ焦げ臭いを発している焼け跡の前に立ち、ヴィデオテープを逆回転再生するように炎上する家屋を想像する。全身を炎に包まれた後遺症なのか、彼女には火災現場から過去を幻視したり、これから火事の起こる場所を予知する能力を持つようになったのだ。今まさに達磨怜悧は目の前で炎上する民家を見ていた。これは過去の出来事なのか、それとも未来の光景なのかと思案する。

    ⃞ 死んで生きてゴリラが子、孫から利己的遺伝子
    人類に限らず地球上の生物や動物は遺伝子を運ぶ乗り物にすぎないという学説がある。個体(肉体)は滅びても遺伝子は子や孫へと永遠に受け継がれて行く。もし、そうならば生き物たちの主目的は異性と性交して子孫を残すことにある。しかし、すべての生物が首尾良く遺伝子情報を継承出来るとは限らない。たとえば7年間も地中に潜っていたセミの雄は地上に出てから僅か2週間で交尾しなければならない。1日中騒がしく鳴き続けて雌の気を惹いても、雌に気に入らなければ成就出来ない。多くの昆虫や動物たちは雄ではなく雌が主導権を握っているのだから。人間も子宝に恵まれず不妊治療する夫婦もいるし、結婚してもしなくても一生子供を産まない女性もいる。それどころか幼児を虐待して殺してしまう親たちも存在するのだ。この事態は「利己的遺伝子」(The Selfish Gene)にとっても想定外なのではないか?‥‥遺伝子情報が次世代に継承されなければ「自死」に等しい。それとも子孫を残さない(残せない?)遺伝子は淘汰されるべき運命なのだろうか。

    ⃞ いるいる獅子が、白熊、黒鹿、死屍累々
    天敵のいないライオンは良く眠るらしい。主に狩りをするのは雌たちなので、何もしないで終日横たわっている雄ライオンは暇そうに見える。動物園のライオンたちは狩猟する必要もないから見物客には余計怠惰に映るのかもしれない(ライオン以外の動物たちにとっても事情は同じなのだが)。大地震が起こって、平穏で退屈な日常が破られるまでは動物園も気怠い空気に覆われていた。幸い閉園後のことだったので、来園客たちが地震後の大混乱に巻き込まれることはなかった。檻や柵が壊れて、数多くの動物たちが園内に解き放たれた。ライオンたちも突然の激しい地響きに動揺したのか、アフリカのサバンナで暮らしていた時の野生の記憶が呼び戻されかのように、雌も雄も他の動物たちに容赦なく襲いかかった。白クマや黒シカ‥‥動物たちの死骸で溢れた夜の園内にライオンの咆哮が響き渡る。やっぱりライオンは「百獣の王」なのでしょうか。

    ⃞ 睨むさくらパンダ可愛いわ。花壇、薔薇、叢に‥‥
    上野の森に棲むパンダは毎年春に咲く淡いピンク色の桜が羨ましかった。地味なモノクロではなく綺麗な桜色に染まりたいと桜の木にお願いすると、桜吹雪が舞って桜模様のパンダに変身!‥‥華やかな花柄の衣裳を纏った「さくらパンダ」は上野の森の人気者となった。好奇心旺盛の「さくらパンダ」は地元から出て外界を散策したいと思っていた。流石に昼間は目立ってしまうので、夜になってから遠出することにした。しかし、街路灯や信号機、ネオンや看板が立ち並ぶ夜の都会は意外と明るい。街路樹や舗道の植え込み、物陰に隠れて忍び足で移動して行く。どこをどのように徘徊したのか憶えていないけれど、気がつくと甘い芳香が薫る薔薇園に来ていた。「旧古河庭園」に遠足に来た園児たちが叢の陰で目を光らせている動物を発見した。引率の女先生がネコかと思って近寄って見ると、桜模様のパンダだった。無邪気な子供たちと仲良くなった「さくらパンダ」は薔薇の匂いを嗅いで気持ち良さそうに目を細める。「薔薇パンダ」に変身するのも悪くないかも‥‥。

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    • 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい

    • 〈氷の微笑〉ネタは『ここはボツコニアン 2』(集英社 2012)から拝借しました

    • さくらパンダ回文は「スニンクスなぞなぞ回文 #33」の解答です

     スニンクスなぞなぞ回文 #34

     留守◯△▢パン屋ちまあ◎▽☆▽◎あまちゃんは▢△◯する

     回文作成:sknys

     ヒント:パン屋襲撃!


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