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子猫の予言者(2 0 1 2) [r e w i n d]



  • ◎ NOVAS LENDAS DA ETNIA TOSHI BABAA(Coqueiro Verde)Mundo Livre s/a
  • Fred 04(Zeroquatro)率いる「有限会社・自由世界」の6thアルバム。《Babadogroove Vol.1》(Monstro 2005)は7曲入りミニ・アルバム、《Combat Samba》(Deckdisc 2008)はCarlos Eduardo Mirandaの選曲によるベスト盤(新曲1曲を含む全14曲)だったから、実に8年振りのフル・アルバムとなる。南米アマゾンの未開部族とインターネット時代が混じり合ったようなモノクロ・イラストや「トシ・ババア族の新しい伝説」というタイトルからは「著作権侵害」をSF寓話的に批判するコンセプト・アルバムの趣きもある。エレクトロ・サンバ・ファンク・ロックに脱力ヴォイスという基本路線は不変不朽だが、マンギ・ビートにコクと深みが増した。「コーヒー・ルンバ」(Moliendo Cafe)を〈Eduarda Fissura Do Atomo〉の中で引用したり、Silvia Macheteが〈O Varao E A Fadinha〉にゲスト・ヴォーカルで参加するなど‥‥捻りも諧謔も効いている(Mundo Livre s/aの過去のアルバムについては〈コンバット・サンバ〉を参照)

  • ◎ EKSTASIS(Rvng International)Julia Holter
  • Laurie Andersonの姪、それともJulianna Barwickの双子姉妹なのか?‥‥米ロサンゼルス出身のSSW、マルチ奏者の2ndアルバムは夢幻的なエレクトロニカでリスナーを魅惑する。可愛らしいヴォーカルとキーボードに、ヴィオラ、クラリネット、アルト・サックスなどが響く異世界へのトリップ。Julia Holterの神秘的なヴォイスは妖精の囀りにも、セレーンの誘惑にも聴こえる。カナダの詩人アン・カーソンのエッセイ集から採ったというアルバム・タイトルの〈Ekstasis〉はギリシャ語の「to be outside of oneself」という「ecstasy」本来の意味を思い出させもする。彼女の歌声に導かれたリスナーは幽体離脱して、鬱蒼とした森や深淵なる海の中を浮游するのだ。〈Goddess Eyes I〉でエウリピデスの『ヒッポリュトス』(Hippolytus)、〈Our Sorrows〉でヴァージニア・ウルフの『波』(The Waves 1931)、〈Moni Mon Amie〉でアメリカ詩人フランク・オハラの詩を引用するなど、ただ者ではないオーラを発散している。Brigitte FontaineやJoni Mitchellが好きというのも頷けます(Pitchfork Guest List: Best of 2012 / Julia Holter)

  • ◎ QUARANTIME*(Hyperdub)Laurel Halo
  • 米ミシガン州アナーバー出身のLaurel Haloはデトロイトやタイに移り住み、フリー・ジャズやテクノ・ミュージック、フォーク・ソングの洗礼を受けたという。その後、NYブルックリンに活動の拠点を移し、King Felix名義のEPなどで注目された彼女がダブステップを牽引する英Hyperdubからデビュー・アルバムをリリースした。「検疫・隔離」(Quarantine)というアルバム・タイトルが示唆しているように、ダーク・ポップ。シンセ・ドローンの幾重にも折り重なったサウンドや寸断されたビートから立ち現われるヴォイスはオーロラのように神秘的で眩暈を催させる。「飛行機酔い」(Airsick)の酩酊感、「私の死骸」(Carcass)の恐怖、「光と空間」(Light + Space)の美麗‥‥決して目醒めない悪夢の中に幽閉されたような感覚に囚われる。日本のリスナーにとって一番ショッキングなのはカヴァ・アートに「切腹女子高生」(Harakiri School Girls 2002)が使われていることかもしれない。それも奇を衒ったわけではなく、録音中に会田誠の絵にインスパイアされた彼女の意向だというのだから再度驚く。英WIREの年間アルバム(Rewind 2012)第1位にも輝いた。

  • ◎ ARBOLA(Epsa)Melina Moguilevsky
  • アルゼンチンのマルチ管楽器奏者Marcelo Moguilevskyの娘、Melinaのデビュー・アルバム。Nicolas Ospina(ピアノ)、Ezequiel Dutil(コントラバス)、Mario Gusso(パーカッション)というジャズ・テイストのサウンドだが、コンテンポラリー・フォルクローレになっている。何よりも若い頃のKate Bushを想わせるMelina Moguilevskyの高音ヴォイスに魅了される(ルックスも愛くるしい)。軽快に疾走する〈Mantas〉、静から動へ転じる6拍子の〈Mis Manos, Tu Rostro〉、暗鬱な6拍子の〈Cancion Para El Yacente〉、5拍子のNicolas Ospinaとのデュエット曲〈Agua〉‥‥。自作・共作曲が大半を占めるが、2曲のインスト・カヴァ(Hermeto Pascal〈8 De Octubre〉、Egberto Gismonti〈Loro〉)ではピアノの伴奏で変幻自在のスキャットを披露する。Melina Moguilevsky嬢が緑の葉に囲まれて微睡むアルバム・カヴァも素敵です。

  • ◎ THE SEER(Young God)SWANS
  • Michael Giraさま率いるSWANSの新作は2CD(約120分)の大作。3枚組のスペシャル・エディションにはライヴDVD(100分)が同梱されている。14年振りの復活アルバム《My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky》(2010)の凝縮された緊張感は薄れたものの、2枚組になったことで裾野が広がった。ワイド・スクリーンで鑑賞するスペクタル巨編のように。高テンションの長尺曲2曲(32分、23分)だけでなく、Karen O(Yeah Yeah Yeahs)が歌う〈Song For A Warrior〉やMichael Giraの弾き語りも暗黒ワールドに淡色の彩りを添える。Grasshopper(Mercury Rev)やAkron/Familyなどもゲスト参加。元メンバーのJarboeもバック・ヴォーカルで復帰している。しかも「猫ジャケ」!‥‥4面デジパック仕様のアート・ワークも素晴しく、無味乾燥なデジタル・ダウンロードよりも、CDやLPで持っていたい。凶悪顔の仲間たちがいなければ「僕は幼い子猫ちゃん」(Without them I’m a kitten, an infant.)だって?

  • ◎ MELODY'S ECHO CHAMBER*(Fat Possum)Melody's Echo Chamber
  • Melody's Echo Chamberは南仏出身の女性マルチ楽器奏者、Melody Pochetのソロ・プロジェクト。彼女のデビュー・アルバムはKevin Parker(Tame Impala)が全面プロデュース&ミックスしたことで2012年を象徴する最新トレンドのサウンドになった。英・仏や米・仏ではなく、豪・仏という異色のコラボから生まれたサイケデリックなドリーム・ポップ、フレンチ風シューゲイザー?‥‥。英語詞中心だが、仏語の歌詞も2曲ある。ウィスパー・ヴォイスとアナログ・シンセのレトロな組み合わせはStereolabを想わせるところもある。サウンド面だけでなく、5拍子の〈Quand Vas Tu Rentrer〉、6拍子の〈Snowcapped Andes Crash〉など、リズムの変化も愉しい。子供のお喋り(ラップ?)を乗せたラストの〈Be Proud Of Your Kids〉も可愛いなぁ。

  • ◎ LONERISM*(Modular)Tame Impala
  • 豪パースで結成されたTame Impalaの2ndアルバムはバンドというよりも、Kevin Parkerのソロ・プロジェクトに近い。サイケデリックでドリーミーなインディ・ロックには内向的なエレクトロニカの迷路から脱出した解放感がある(孤独だけれど、引きこもりというわけじゃないよ)。アニコレの《Merriweather Post Pavilion》(Domino 2009)から一歩突き抜けたと言うべきだろうか。夢見るような浮游感とKevin Parkerの高音ヴォイス(60年代後半のJohn Lennonを想わせる)がリスナーを幸福感で包み込む。ドリーム・ポップの〈Mind Mischief〉〈Feels Like We Only Go Backwards〉、グラム・ロックっぽい乗りの〈Elephant〉、サイケなインストと化して行く〈Keep On Lying〉。3拍子の〈Sun's Coming Up〉‥‥。Dave Fridmannのミックスによって、The Flaming Lips風のサウンドになっている。英米ではなく、辺境の地オーストラリアからという出自も興味深い。

  • ◎ METZ*(Sub Pop)METZ
  • 2008年、カナダ・トロントで結成された3ピース・バンドMETZ。Alex Edkins(ギター、ヴォーカル)、Chris Slorach(ベース、ヴォーカル)、Hayden Menzies(ドラムス)の表出するサウンドは90年代のグランジやシューゲイザーを飛び越え、80年代のハードコアやポスト・パンクを思い起こさせる。約30年の時空を超えてカナダの地にタイムリープした3人組?‥‥。ノイズ、重低音、破壊音、咆哮が一体となって驀進・爆走するデビュー・アルバムはストイックでアグレッシヴ。贅肉を削ぎ落され、研ぎ澄まされている。全10曲、シークレット・トラックを含めても30分に満たない収録時間(29分50秒)も潔い。アルバム・カヴァの「METZ」というロゴは画像では白抜き文字に見えるが、実際は型押しになっていて目立たない(シングル盤〈Dirty Shirt〉は「猫ジャケ」にゃん)。

  • ◎ 'ALLELUJAH! DON'T BEND! ASCEND!*(Constellation)God's Pee
  • 1994年モントリオール・ケベックで結成されたポスト・ロック・バンド、Godspeed You! Black Emperorの4thアルバム(メディアの表記はGY!BEのままだが、アルバムにはGod's Peeとクレジットされている)。6年間の活動休止を挿んだ10年振りの新作は約20分の長尺曲2曲を含む4曲入り。3ギター、2ベース、2ドラムス、ヴァイオリンのインスト・ロック9人組(1人は16mmフィルムの担当者)で、コントラバス、チェロ、ダルシマ、ヴィブラフォン、マリンバ、グロッケンシュピール、ハーディ・ガーディなどが深い陰影を落とす。Killing Jokeみたいな無国籍ギターが炸裂する〈Mladic〉。幽玄なスロー・テンポから次第にヒート・アップして行く〈We Drift Like Worried Fire〉。〈Their Helicopters' Sing〉と〈Strung Like Lights At Thee Printemps Erable〉は6分半のドローン。カナダの鬱蒼とした奥深い森林に響き渡る大自然(風・雨・嵐・雷)のように雄大で神秘的なサウンドに身も心も揺さぶられる。極寒の地に聳立する針葉樹林のように冷たくて美しいアルバム。

  • ◎ LUXURY PROBLEMS*(Modern Love)Andy Stott
  • まるで奈落の底から聴こえて来るような深遠なヴォイス。船員たちを誘惑して海の底へ引きずり込むようなセイレーンの歌声。地を這う重低音の大蛇ベースや軋み音、大地が裂けて建物が崩壊するようなノイズや機械音が不穏に響き渡る。眠れぬ夜のBGM、悪夢のサウンド・トラック‥‥。英マンチェスターを拠点に活動するテクノ・ミュージシャンの3rdアルバムはミニマル・ダブによって暗黒の未来を創出する。本来ダブはヴォーカルを消し去ったインスト・サウンドだったが、かつてのトリップホップやドラムンベースが耽美的な女性ヴォイスを配したように、全8曲中5曲に女声ヴォーカルが入っている。彼のピアノ教師だったというAlison Skidmoreのヴォイスは幽玄で儚く神秘的で、この世のものとは想えない。墜ちることへの恐怖と陶酔‥‥アルバム・カヴァに使われた女子高飛び込み選手の写真のように、リスナーも回転しながら別世界(海底や地底)へと落下して行くのだ。

                        *

    Valeria Lobao、Oneira、Ladylike Lily、Mark Stewart、Dionysos、Saint Etienne、Beach House、Chromatics、Neneh Cherry & The Thing、Getatchew Mekuria & The Ex & Friends、Dirty Projectors、Dennis Bovell、Purity Ring、Wild Nothing、Animal Collective、Cat Power、David Byrne & St. Vincent、Flying Lotus、Rafael Martini、Orquestra Imperial‥‥も印象に残っていると言いたいところだが、未聴のアルバムも何枚かある。2012年はベスト10に挙げたSWANS、GY!BEやNeil Young with Crazy Horseなど、20分を超える長尺曲を収録したアルバムが際立った。曲単位でアルバムをバラ売りするデジタル・ダウンロードへの批判なのか、それとも単に長い曲を録音したかっただけなのかは分からないが、いずれにしろリスナーは加速・断片化する時代の流れに抗って、長尺曲をジックリと聴くことを余儀なくされる。立ち止まって、小鳥たちの囀りや教会の鐘の音に耳を澄ますように。ハイレゾ音源を収録したBlu-ray Discでリリースするアーティストも出て来た。音楽メディア(記録媒体)の未来はCDを超える高音質にあるのだろうか。

                        *
    • 輸入盤のリリース順(国内・流通盤が出ているアルバムには *マークを付けました)

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • Julia HolterとLaurel Haloは〈魔女たちの饗宴〉、Mundo Livre s/aは〈エル・スールの15年〉から転載しました(一部加筆・改稿)
                        *





    The Seer(Special Edition 2CD+DVD)

    The Seer(Special Edition 2CD+DVD)

    • Artist: SWANS
    • Label: Young God Records
    • Date: 2012/08/28
    • Media: Audio CD(2CD+DVD)
    • Songs: Lunacy / Mother Of The World / The Wolf / The Seer / The Seer Returns / 93 Ave. Blues / The Daughter Brings The Water / Song For A Warrior / Avatar / A Piece Of The Sky / Apostate // No Words / No Thoughts / Avatar / The Apostate / Beautiful Child / Jim / Sex God Sex / The Seer / I Crawled


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    MetzAllelujah! Don't Bend! Ascend!Luxury Problems
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    sknys

    ALTERNATIVE WAVERS 2012 BEST ALBUMS
    1. Swans - The Seer
    2. Ringo Deathstarr - Mauve
    3. Godspeed You! Black Emperor - 'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
    4. Cloud Nothings - Attack On Memory
    5. Interstellar - Frankie Rose
    6. Ty Segall - Twins
    7. DIIV - Oshin
    8. METZ - METZ
    9. Sun Araw & M. Geddes Gengras Meet The Congos - Icon Give Thank
    10. Grimes - Visions
    http://blog-ia-rock.diskunion.net/Entry/372/
    by sknys (2013-01-12 20:12) 

    sknys

    LINUS' BEST 10 DISCS OF 2012
    1. Godspeed You! Black Emperor - 'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
    2. Cloud Nothings - Attack On Memory
    3. Luxury Problems - Andy Stott
    4. Lindstrom - Six Cups Of Rebel
    5. Demdike Stare - Elemental
    6. Swans - The Seer
    7. Holy Other - Held
    8. bvdub - All Is Forgiven
    9. Mungolian Jetset - Mungodelics
    10. Plug - Back On Time
    http://www.linusrecords.jp/user_data/best20_2012.php
    by sknys (2013-01-13 12:51) 

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