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バイオフィリア(2 0 1 1) [r e w i n d]



  • ◎ DEERHOOF VS. EVIL*(Polyvinyl)Deerhoof
  • 古巣の「Kill Rock Stars」から「Polyvinyl」へ電撃移籍。新ギタリストが加わって再び4人編成となった鹿蹄の10thアルバムは「悪」との戦い。タイトル・ロゴに原爆キノコ雲と真っ黒いハート・マークが重ねられている。カタロニア語で歌われるドラキュラ・ソング。スパニッシュ風ギターが爽やかに奏でる〈No One Asked To Dance〉。映画『魚が出てきた日』(1967)のサントラだというヘヴィ・インスト・ロック〈Let's Dance The Jet〉。前編東京ロケによる松崎里美主演のPV(1人パフューム状態?)も愉しい〈Super Duper Rescue Heads!〉。エレクトロ・ボサノヴァ風の〈Must Fight Current〉。日本語で歌われる〈C'Moon〉‥‥。生ギターとヘヴィ・ノイズ・ギター、エクスペリメンタルとドリーム・ポップ、ポリリズムとリズム・チェンジなど、一瞬先の読めないスリリングな曲展開に翻弄される。裏ジャケの金髪少女はフェリーニのホラー短篇映画「悪魔の首飾り」(1967)に登場する「悪魔の手毬少女」マリナ・ヤル(Marina Yaru)です。

  • ◎ LET ENGLAND SHAKE*(Island) PJ Harvey
  • 3・11に東日本はマグニチュード9.0の大地震と大津波、そして原発事故(放射能汚染)に見舞われることになるが、その1ヶ月近く前にPJ Harveyは「英国を揺さぶろう」と歌っていた。本アルバムのテーマは「英国」と「戦争」。英ドーセットの教会でレコーディングされたという8thアルバムはギター、べース、ドラムス、パーカッション、オート・ハープ、サクソフォン、トロンボーン、フェンダー・ローズなど音数の少ないサウンドにロリータ風のヴォイスが舞う。Said El Kurudi(1920年代に活躍したイラクの歌手)の〈Kassem Miro〉、The Policeの〈The Bed's Too Big Without You〉、Eddie Cochranの〈Summertime Blues〉、Winston Holnessのレゲエ〈Blood & Fire〉などをサンプリング・引用する。変則リズム(8+7拍子)のアルバム・タイトル曲〈Let England Shake〉、進軍ラッパをサンプリングした〈The Glorious Land〉‥‥血まみれの反戦歌集(全12曲40分)。NMEやThe Guardianが満点を付けるなど、英国メディアでの評価も高い。「日本」と「戦争」について歌うミュージシャンは現われるのだろうか。

  • ◎ TOO BEAUTIFUL TO WORK(Dead Oceans)The Luyas
  • モントリオール出身4人組の2ndアルバムはカナダ版Stereolabという趣き。キーボード、ドラムスという編成に、Pietro Amato(元Arcade Fire)のフレンチ・ホルンと紅一点ヴォーカリストJessie Lauren Steinの12弦エレクトリック・チター(Moodswinger)が加わる。変則5拍子の〈Too Beautiful To Work〉、不穏なポリリズムの〈Worth Mentioning〉、気味悪いフレンチ・ホーンが咽び泣く〈Tiny Head〉、6拍子の〈Moodslayer〉、7拍子の〈I Need Mirrors〉‥‥。Owen PallettやSarah Neufeld(Arcade Fire)がヴァイオリン(前者はストリングス・アレンジも担当)でゲスト参加するなど、カナダ・ミュージシャンが多数集結している。Lætitia Sadierの低温脱力ヴォイスとカラフルなサウンドの対比が面白かったStereolabに対して、The LuyasはJessie Steinの可憐無垢なヴォーカルにダークなサウンドの組み合わせる。ポップでありながらDirty Projectorsにも通じる実験精神を持ち合わせているところがThe Luyasの魅力である。

  • ◎ WHOKILL*(4AD)tUnE-yArDs
  • Tune-Yardsは米コネチカット生まれの女性ミュージシャン、Merrill Garbusのソロ・プロジェクト。彼女のドラム・ループ、ウクレレ、パーカッションとNate BrennerのベースにMatt Nelsonのサックスという編成で、パワフルなヴォーカルを爆発させる。ヒップホップとソウルフルなヴォイスの組み合わせはBathsの《Cerulean》(Anticon 2010)を想わせなくもない。女性版Bathsと呼びたいところだが、宅録おたく風の変態的密室性は皆無で、心地よい風が吹き抜ける見通しの良さや明るい陽射しの野外へ跳び出たような開放感に溢れている。ウクレレの弾き語りからフリージャズ風に展開して行く〈Riot Riot〉やアフロビートやコーラスを採り入れた〈Bizness〉などには実験的な奥行きやワールド・ミュージック的な広がりもある。ローファイ、ヒップポップ、R&B、ジャズ、アフロビート、エクスペリメンタル、エレクトロニカ、ワールド・ミュージック‥‥などの音楽が渾然一体となって昇華され、Tune-Yards独自のスタイルを創り上げている。

  • ◎ HELPLESSNESS BLUES*(Sub Pop)Fleet Foxes
  • メンバー2人が入れ替わり、Morgan Hendersonが新たに加わって6人組となったキツネたちの2ndアルバム。CSN風の変則チューニング・ギターが鳴り響く〈Sim Sala Bim〉、6拍子の美しいコーラスから4拍子のヴォーカルへと変化して融合する〈The Plains / Bitter Danger〉、4拍子から3拍子にリズムが変わって行く〈Helplessness Blues〉、ワルツ曲の〈Lorelai〉、ヴァイオリンの響きにフリー・サックスのノイズが混じる〈The Shrine / An Argument〉‥‥。トラディショナル・フォークとサイケデリック・ポップ、神秘性と実験性、Robin Pecknoldの内省的なヴォーカルと美麗コーラス・ハーモニーの邂逅。12弦ギター、ピアノ、フィドル、マンドリン、ハンマー・ダルシマ、ムーグ・シ ンセ、プロフェット、ミュージック・ボックス、マーキソフォン、ハーモニウム、ハープシコード、ヴァイオリン、ペダル&ラップ・スティール‥‥など古くて新しい楽器が彩る。トビー・ライボウイッツ(Toby Liebowitz)のモノクロ・イラストにカラー着色したアルバム・カヴァには何故かキツネではなく、黒ネコが描かれている(狐なのに「ネコード」なのだ)。

  • ◎ PAST LIFE MARTYRED SAINTS(Souterrain Transmissions)EMA
  • ドローン・フォーク・バンドGownsに在籍していたというErika M. Andersonのソロ・アルバム。「EMA」の頭文字を象ったネックレスを首から下げ、右指をピストルの形にして目を瞑った金髪女性がキム姐さん(Kim Gordon)を想わせるように、インディ・ロック、グランジ、シューゲイザー風のノイズ・ギターが鳴り響く。オープニングの7分にも及ぶ〈Grey Ship〉がEMAのダークでノイジーな音像空間を表徴している。〈Milkman〉の歌詞の中に「I'm gaspin」という一節があるように、エリカ様のヴォーカル・スタイルは「喘ぐ」という言葉が相応しい。近寄り難いけれど、一度嵌ると抜け出せない「砂の女」のような怪しい魔力を秘めている。アルバムの真ん中にアカペラ曲〈Coda〉を挟む構成も効果的で、ラストのバラード〈Red Star〉まで飽きることがない。米サウス・ダコタ出身なのに英インディーズからのリリースというのも興味深い。

  • ◎ POR LOS MARES(Sofia Escardo)Sofia Escardo
  • 折り紙の舟に乗って眠る女たちの髪の海を渡る男、石蹴り遊び図の描かれた石畳の奥に座る5人のストリート・ミュージシャンと水色のドレスの女とシルクハットにステッキの男‥‥メキシコの画家ベンジャミン・バリオスのイラストを表裏2面に使ったアルバム・カヴァが実は1枚の絵であること、紙の舟で航海する男の絵が7人の人物のバックに描かれた壁画であること(人頭鳥身のハーピィや装飾的な雲が描かれている)が同封された「オリジナル・ポスター」(35×23cm)で分かる仕掛け。Sofia Escardoのソロ・アルバムは彼女の弾くアコーディオンにピアノ、チェロ、クラリネット、ヴァイオリンなどの室内管弦楽が優しく包む。フレンチ・ワルツの〈Vals De Salon〉、Clannadを想わせるケルティックな〈Black Is The Clour〉、Leonard Cohenのカヴァ〈Who By Fire〉、〈Gymnopédies〉のメロディを借用した〈Monsieur Erik〉‥‥Sofia Escardoのヴォイスは力強くストレートに胸の中に沁み入って来る。歌詞カード(16頁)を貼付したデジパック仕様のパッケージも洒落ている。このクオリティで自主制作盤だというのだから、アルゼンチンのインディーズは見過ごせない。

  • ◎ BON IVER*(Jagjaguwar)Bon Iver
  • 2011年を象徴するアルバムはBon Iverの2ndとJames Blakeのデビュー・アルバムかもしれない。インディ・フォーク・ロックとダブ・ステップ‥‥いわゆる「ロックの王道」から大きく逸脱した音楽で、「辺境ロック」と呼びたい誘惑に駆られる。ゼロ年代のエレクトロニカやフリー・フォークを経て結実した前者はインディ・レーベルからのリリースなのにも拘わらず、全米チャート第2位(Billboard)という快挙を成し遂げた。Justin Vernonの哀しげなファルセット・ヴォイスと幽玄なコーラス、桃源郷のような生楽器のアンサンブルは奇妙に捩じれているが故に美しい。アルバム・カヴァに採用されたオランダ風景画と日本の山水画を溶かし合わせたようなGregory Euclideのレリーフ画は大津波に襲われた3・11後の世界を連想してしまうが、もし東日本大震災が起こらなかったとしても、Bon Iverのアルバムは時代の空気感を共有し、人々の心情を反映したはずだ。そうでなければ、これほど多くのリスナーの共感を得るはずがない。《Bon Iver》は2011年の鎮魂歌なのだろうか。

  • ◎ SONHANDO DEVAGAR(Coqueiro Verde)Kassin
  • MPB新世代トリオの1人、Kassinのソロ・アルバムがDomenicoの《Cine Prive》に続いてリリースされた(Morenoのソロは2012年になるらしい)。本来はベーシストだが、リード・ギターを弾いている曲ではAlberto Continentino(2曲を共作)にベースを任せている。Neil Young風のノイズ・ギターが後半に炸裂する〈O Que Voce Quiser〉、Sean O'Hagan(The High Llamas)と共作した〈Lua Do Sol〉、DomenicoとMorenoの2人がドラムスとコーラスで参加した〈Em Volta De Voce〉‥‥。浮游感のあるサウンドにノイズやエフェクトが混じり合う。Jorge Ben Jor風のサンバ・ファンク、トークボックスを使ったTom Tom Club風のダンス・ミュージック。オートチューン(?)で音声加工したSufjan Stevensを想わせる曲さえある。デジタル3D時代の到来を笑うかのような、飛び出す立体カヴァ&スリーヴ仕様。チープな赤と青のメガネが付いている分だけブラジル盤CDは少々高いけれど、このキッチュな愉しさは有料音楽配信では味わえない。

  • ◎ BIOPHILIA*(Polydor) Bjork
  • iPadアプリもリリースすると喧伝されていた7thアルバムにはZeena Parkins、Mark Bell、Matthew Herbert‥‥といった馴染みのミュージシャンに加えて、Leila Arab、16bitなどが新たに参加している。《Vespertine》(2001)が9・11と分ちがたく結びついているように、10年の後の《Biophilia》も3・11と切り離して聴くことが出来ない。プライヴェートな個人とユニヴァーサルな地球。Bjorkの内省的な小宇宙は茫漠なる宇宙と通底している。裏返された自己、反転した世界‥‥〈Crystalline〉の後半で炸裂するドラムンベースは、まるで地殻変動か流星雨のように聴こえる。〈Dark Matter〉や〈Hollow〉など、中盤の茫洋とした曲を退屈に感じるリスナーもいるかもしれないけれど。オリジナル10曲に〈Hollow〉のロング・ヴァージョンや〈Dark Matter〉の別ヴァージョン、エレクトロ版Timbaladaみたいに「打楽器」が躍動する〈Nattura〉の3曲を追加収録した「Deluxe Edition」を推奨。英米のメディアは概ね高評価なのに、「Pitchfork」の評点(6.2)は相変わらず低いなぁ。Dirty Projectorsとのコラボ・アルバム《Mount Wittenberg Orca》(Domino 2010)もCD化された。

                        *

    Julianna Barwick、Panda Bear、James Blake、Iceage、St. Vincent、Zola Jesus、Wild Flag、Loli Molina、Marisa Monte、Kate Bush、Oneohtrix Point Never‥‥なども印象に残ったが、2011年は聴いた回数の多いアルバムを優先してベスト10に挙げた。10月中旬にリリースされたBjorkのアルバムは2ヵ月余り聴き続けた。音楽で世界を変えられるかどうかは分からないが、少なくても不安を軽減したりストレスを緩和する効果はあるらしい。音楽があって良かったと思う瞬間も何度かあった。もちろん琴線に触れるのはメジャーから大量投下される「王道ロック」ではなく、インディ・レーベルから密やかにリリースされる「辺境ロック」である。しかし、マイナーなインディ・ロックというイメージはArcade Fire以降、あっさりと覆されてしまった。彼らの成功によってインディ・レーベルに留まったまま全米チャートを制することが証明されたのだ。Bon Iverのアルバムもインディ・レーベル(Jagjaguwar)からのリリースだった。この地殻変動はブログやSNS、ダウンロード配信やストリーミング視聴と無縁ではないだろう。

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    • 輸入盤のリリース〜入手順(国内盤が出ているアルバムには *マークを付けました)

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • 〈機敏なキツネたち〉〈鹿蹄物語〉から再録(一部改稿)しました^^;
                        *





    Biophilia: Deluxe Edition

    Biophilia: Deluxe Edition

    • Artist: Bjork
    • Label: Universal Import
    • Date: 2011/10/18
    • Media: Audio CD
    • Songs: Moon / Thunderbolt / Crystalline / Cosmogony / Dark Matter / Hollow / Virus / Sacrifice / Mutual Core / Solstice // Hollow (original 7 min. version) / Dark Matter (with choir and organ) / Nattura


    Deerhoof Vs EvilLet England ShakeToo Beautiful to Work




    Who KillHelplessness BluesPast Life Martyred Saints




    Por Los MaresBon Iver, Bon IverSonhando Devagar
    タグ:Music rewind bjork
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    コメント 2

    sknys

    Guardian The Best Albums of 2011:1-10
    1. PJ Harvey - Let England Shake
    2. Katy B - On a Mission
    3. Frank Ocean - Nostalgia, Ultra
    4. Beyoncé - 4
    5. Bon Iver - Bon Iver
    6. James Blake - James Blake
    7. Metronomy - The English Riviera
    8. The Weeknd - House of Balloons
    9. Rustie - Glass Swords
    10. Tune-Yards - whokill
    http://www.guardian.co.uk/music/series/albums-of-2011
    17位にBjork、20位にFleet Foxesがランクイン!
    by sknys (2012-01-14 02:50) 

    sknys

    Rolling Stone 10 Best Albums Of 2011
    1. Adele - 21
    2. Jay-Z & Kanye West - Watch The Throne
    3. Paul Simon - So Beautiful Or So What
    4. Fleet Foxes - Helplessness Blues
    5. Radiohead - The King Of Limbs
    6. Lady Gaga - Born This Way
    7. The Decemberists - The King Is Dead
    8. Wilco - The Whole Love
    9. Wild Flag - Wild Flag
    10. Robbie Robertson - How To Become Clairvoyant
    http://www.rollingstone.com/music/lists/50-best-albums-of-2011-20111207
    13位にtUnE-YarDs、21位にBon Iverがランクイン!
    by sknys (2012-01-15 15:13) 

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