F A V O R I T E ー B O O K S 6 [f a v o r i t e s]
ページをめくる指(平凡社 2012)金井 美恵子

単行本(河出書房新社 2000)の平凡社ライブラリー版。雑誌「母の友」に連載された「絵本」についてのエッセイを纏めたもので、親本に比べるとサイズも小さく、本文にレイアウトされた表紙やイラストなどのカラー図版も省かれているが、カラー口絵8頁を付け、新たにエッセイ7篇と「石井桃子インタヴュー」(48頁)を加えた増補版になっている。「ピーター・ラビット」やモーリス・センダック、マーガレット・W・ブラウンだけでなくバルテュスの『ミツ』も紹介。冒頭の「タンゲくん‥‥」に共感出来ない偏狭な読者には不向きかも 112
金魚のひらひら(毎日新聞社 2011)中野 翠

「サンデー毎日」の連載コラム1年分を纏めた単行本。このシリーズを毎年読むことが恒例化して久しい。今回の読みどころは東日本大震災と原発事故(放射能汚染)だが、「あとがき」でも触れているように、3・11の後遺症で少々元気がない。その時、居間のソファで本を読んでいた著者は膝掛け毛布を頭に被り、3分の1ほど開けた玄関のノブを掴んで丸く蹲った。築35年のマンション12階の「室内は一瞬にして文字通り「足の踏み場もない」ゴミ屋敷と化した」。タイトルは幼い妹が母に買ってもらった朱赤のフリル付き吊りスカートから 111
Magical Mysterious Mashroom Tour(東京キララ社 2010)飯沢 耕太郎

きのこ文学研究家による「マジカル・ミステリー・ツアー」。絵本の中のきのこ、アリスときのこ、きのこグッズ(切手、ポストカード、リボンとボタン、ワッペン、ファブリック、マトリョーシカ、ファッション、ステーショナリー、ゲーム、フィギュア、キャンドル)、赤地に白斑の妖しい毒茸・ベニテングダケの図譜をカラー図版で紹介。いしいしんじの小説「きのこ狩り」(2009)、ジョン・ケージの稀覯本『マッシュルーム・ブック』(1972)。R・ゴードン・ワッソンの記事「魔法のきのこを求めて」(LIFE 1957)を全訳収録 110
フクロウ ── その歴史・文化・生態(白水社 2011)デズモンド・モリス

1942年、14歳の少年だった著者は英ウィルトシャー州の野原で血塗れになって立っていた瀕死のフクロウの頭に大きな石を打ちつけて殺す。苦しみから解放させるための処置とはいえ、最悪の気分だった。この本を書いたのは、《あの時の傷ついたフクロウに対する償いの気持ちによるところが大きいように思う。フクロウが生物学的にどれほど魅力的な存在であるか、フクロウが象徴してきたものやフクロウに纏わる神話がどれほど多様で豊かであるかといったことを紹介し、フクロウのために何かすることで罪滅ぼしをしたいと思ったのだ》109
小暮写眞館(講談社 2010)宮部 みゆき

700頁を超える書き下ろし長編はミステリの要素はあるものの、殺人事件も犯罪も起こらない。結婚20周年を機にマイホーム(廃業した写真館の店舗部分を残してリフォーム)を購入した花菱夫妻。花菱家の長男・英一(花ちゃん)を主人公にした3人称小説だが、1人称視点で描写される4連作。「小暮写眞館」「世界の縁側」で心霊写真探偵ものと想わせ、「カモメの名前」で転じ、「鉄路の春」で意外な場所に着地する。表紙カヴァに桜と菜の花の咲く小湊鐵道・飯給駅と二両編成電車の写真が使われた理由は最後まで読まないと分からない 108
私は猫ストーカー(洋泉社 2005)浅生 ハルミン

女性や男性に付き纏い、執拗に追い回すと「ストーカー規制法」に触れてしまうが、尾行する相手が人ではなくネコならば大丈夫。フィニのオネイロポンプみたいな「夢先案内猫」が素敵な宮殿へ連れて行ってくれるかもしれません。著者のハルミンさんも猫ストーキングの実践者。井の頭公園、目黒川、池袋、駒沢通り、神保町、阿豆佐味天神社(猫返し神社)、豪徳寺、谷中墓地、八丈島、不忍池など日本国内では飽き足らず、ネコを追い求めて地中海のマルタ島(猫の聖地)まで海外遠征に行ってしまう。岩合先生の『ネコを撮る』(朝日新聞社 2007)と併せて読めば、あなたも立派な猫ストーカーになれる? 107
夢見るビーズ物語(ポプラ社 2009)萩尾 望都

ポプラ社のPR誌「asta*」に連載していたビーズ・アクセサリーを題材にしたカラー・イラスト(見開き2頁)5枚とコミック・エッセイ(6コマ×4頁)9篇を収録した趣味のビーズ本。単行本化する際にコミックをカラー化して、新たに4篇を描き下ろしている。巻末に著者インタヴュー、オリジナル・ビーズ・アルバムと制作ノートを併録。「ケチな私はリッチな気分になれないのが悲しい」「脳の欲望は無限大」「かたづけられない女」など、著者の私生活が垣間見れるコミックも面白いし、『11人いる!』のビーズ人形も可愛い 106
銀の船と青い海(河出書房新社 2010)萩尾 望都

70年代、少女マンガ誌「LaLa」や小学校教員向け雑誌「小三教育技術」に掲載されたイラストや物語を中心に纏めた童話集。カラー・イラストに文章を添えた詩画集が全体の1/3を占める。「カーテンコールのレッスン」「ストロベリーフィールズ」など「萩尾望都原画展」に展示されていた美しいイラスト画も多数収録。後半はエッセイ風の「オルゴール」、童話「ハピーオニオンスープ」、リアリスティックな「賞子の作文」、ファンタジックな「人形の館」、未来SFの「アフリカの草原」など‥‥多種多彩な世界が愉しめる 105
日々のあれこれ 目白雑録 4(朝日新聞出版 2011)金井 美恵子

「目白雑録」の最終巻はタイトルとサブ・タイトルが逆になり、ソフト・カヴァになった。「1冊の本」で毎月読んでいた時は散漫な感じもあったが、2年分を纏めて再読すると超面白い。荒川洋治、中村光夫、サザエさん、壁と卵、内田樹、風邪とマスク、『新潮100年』、天声人語、ヒロポン、ゴダール、チョン・ジェウン、矢作俊彦、タバコ、ジャック・ロジェ、『男と女』、ジャコメッティ、ピカソ、『一眼国』、W杯日本惜敗、乙女と月経、老婆心、タイガーマスク‥‥毒舌エッセイは「小さいもの、大きいこと」と題名を変えて連載中 104
一瞬と永遠と(幻戯書房 2011)萩尾 望都

『思い出を切りぬくとき』(あんず堂 1998)以来、実に13年振りのエッセイ集。文章も研ぎ澄まされているし、テーマや内容も深化している。小中学生時代の思い出やマンガ、SF 小説、映画などについて。「季刊へるめす」「キネマ旬報」「ユリイカ」などに連載・掲載されたエッセイや書評(文庫解説)を収録。興味深いのは少女時代の著者が少女マンガだけでなく、少年マンガを読んで育ったこと。奈良・興福寺へ阿修羅像を見に行って、壁際のソファで30分も睡ってしまったという仰天エピソードもある。はぐれ角川の幻戯書房からの上梓 103
コブラ(晶文社 1975)セベロ・サルドゥイ

抒情的人形劇の女王コブラ、女夫人(セニヨラ)‥‥2人はコブラの脚(踵)を短縮掻爬する過程でミニアチュール化してしまう。コブリタ(コブラちゃん)と小夫人に。コブラの分身パップ。嫉妬深い女中キャデラック。コブラ(パップ)は超ドクター・クタツォーブの手術を受ける。後半の「コブラ II」はコブラとツンドラ、さそり、トーテム、とら‥‥5匹のインド珍道中。奇妙奇天烈なストーリを追うよりもイメージやメタフォール(暗喩)の奔流に身を任せた方が愉しい。ヌーヴォー・ロマンとラテン・アメリカの異種混合言語実験小説 102
狐のだんぶくろ ── わたしの少年時代(河出書房新社 1997)澁澤 龍彦

サブ・タイトルに「わたしの少年時代」とあるように、少年時代を回想したエッセイ集。チョロギ、滝野川中里、チンドン屋、大相撲(両国国技館の大鉄傘)、童謡「チュウリップ兵隊」、蘆原将軍、漫画、野球、替え歌、ラ・パロマ、競馬場、花電車、東京大空襲‥‥昭和十年代前半の光景が「のぞき眼鏡」を覗くように記憶の彼方からクローズ・アップされる。50代の著者が語るシブサワ少年は「記憶力が抜群で、級友たちからも一目置かれていた」。表題の「狐のだんぶくろ」とは幻の童謡で、ケシ科の植物、もしくはキノコの一種だという 101
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Magical Mysterious Mashroom Tour
- 著者:飯沢 耕太郎
- 出版社:東京キララ社
- 発売日: 2010/07/31
- メディア:単行本
- 目次:Magical Mysterious Mashroom Tour にようこそ!/「きのこ狩り」の愉しみと恐怖 / 不思議の国のきのこたち / めくるめくきのこグッッズ / ベニテングダケの王国 / きのこ小説「きのこ狩り」いしいしんじ /『マッシュルーム・ブック』/ ドローイングと「きのこコラージュ」/「魔法のきのこ」を求めて / あとがき












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