So-net無料ブログ作成
検索選択

愛なき世界(1 9 9 1) [r e w i n d]



  • ◎ LUST(Elektra)Ambitious Lovers
  • 《Envy》(EG 1984)、《Greed》(Virgin 1988)に続く「7つの大罪」シリーズ第3集は「色欲」。ホワイトアウトした半開きの唇から黒い歯とピンク色の舌が覗くアルバム・カヴァは卑猥に見えなくもない。Ambitious LoversはArto Lindsay(ギター、ヴォーカル)とPete Scherer(キーボード、サンプラー、シンセベースなど)のデュオ。サウンドとプロデュースはPete Scherer(作曲)に任せて、Arto Lindsay(作詞)がプレイヤーとして前面に立つ役割分担となっている。ファンクとノンチューニング・ノイズ・ギターにブラジル趣味が加わったタイトル曲の〈Lust〉が象徴しているように、参加ミュージシャンもMelvin Gibbs(ベース)、Marc Ribot(ギター)、Nana Vasconcelos(パーカッション)、Nile Rodgers(Chic)‥‥NY勢とブラジル人が混在している。ポルトガル語で歌っているJorge Benのカヴァ曲などはワールド・ミュージック化した後期Talking Headsに通底するものもある。Caetano Velosoが中性的なヴォーカルで客演した〈Villain〉は妖しい光を放っているし、〈More Light〉のメロディも切なく美しい。

  • ◎ BELINDA BACKWARDS(Blast First)A. C. Temple
  • 英シェフィールド出身の5人組、A. C. Templeの3rdアルバムはKramerのプロデュース。ホーミー唱法みたいなイントロで始まる〈Glittehall〉、6拍子の〈Silver Swimmer〉、変則5拍子の〈Skyhooks〉は間奏でThe Smithsが珍入して来るし、〈Baby Seals〉では深紫の〈Highway Star〉を想わせるギター・リフも飛び出す‥‥変拍子やリズム・チェンジなど緻密で硬質なプログレ的な展開に耳を奪われるが、A. C. Templeの魅力は紅一点のJane Bromley嬢のヴォーカルにある。清楚な修道女のようなストイックで自信に満ちた揺るぎない歌唱には男女の性差を超えた神秘性さえも感じられる。ノイジーなパンク精神、プログレ的な実験性など‥‥いかにもKramer好みのバンドで、どちらかというと生真面目な楽曲にパロディ的なユーモア感覚を加味している。隠れた名盤だと思うけれど、彼らの音楽が正当に評価されず、このアルバムが多くの洋楽リスナーの耳に届かなかったのは残念至極である。ちなみに2ndアルバム《Sourpuss》(1989)は「猫ジャケ」の傑作です。

  • ◎ THE REALITY OF MY SURROUNDINGS(Columbia)Fishbone
  • Fishboneの3rdアルバムは全18曲、1時間弱の高密度集積音楽。1分足らずのライヴ・パフォーマンスや間奏などを曲間に挿むことで、臨場感や緊張感を高めている。歌詞の中にアルバム・タイトルの一節を含む〈So Many Millions〉は凄まじい。P-Funkのエネルギーが充満〜爆発〜混沌化して行く怒濤の後半は血沸き肉躍る高揚感で熱くなる。騒乱スカ〜陰鬱なワルツの〈Housework〉の前後は奴隷制を想わせる鞭の音と悲鳴で補強されている。一般にはミクスチャー・ロックと呼ばれているが、Fishboneの屋台骨はロック、ファンク、パンク、スカ、レゲエの混合体である。オリジナル・メンバ7名が高テンションの熱情を持続ながら協調して行くのは難しかったのかもしれない。彼らがRed Hot Chili Peppersのようにバンドとして成功しなかったのは、弛緩したり軟弱化しなかったからだろうか?‥‥レッチリよりも「魚の骨」の方が好きだという洋楽リスナーも少なくないのですが。

  • ◎ BLUE LINES(Wild Bunch)Massive Attack
  • Massive Attackのデビュー・アルバムと「湾岸戦争」は分ち難く結び着いている。なぜならリリース時が戦争勃発時と重なったために「ATTACK」(攻撃)という言葉がアルバム・カヴァから消し去られてしまったのだから。検閲とも自粛とも抗議の表明とも取れるエピソードは逆に彼らの知名度を上げることになった(手許にあるUK盤は「massive attack」と表記されているが、CD盤面には「MASSIVE」としか記されていない)。英ブリストルはパンク〜ニュー・ウェイヴの80年代からレゲエ〜ダブと深い絆で結ばれていた。ダビーでダークな音空間にソウルフルな女性ヴォーカルやクールな男性ヴォイス(ラップ)を乗せる手法は既に完成されている。3D-Del Naja、Mushroom Vowles、Daddy G Marshallのトリオに、Shara Nelson、Willy Wee、Horace Andy、Tricky Kidを加えた7名から成るブリストル・サウンドは、トリップホップ〜ジャングル〜ドラムンベース‥‥と進化しながら90年代を駆け抜ける。「湾岸戦争」がMassive Attackに与えた影響と同じように、彼らが「湾岸戦争」に与えた影響も少なくない。Massive Attackの焔は虚無的なダブ空間で青白く燃え上がるのだ。

  • ◎ THE POWER OF PUSSY(Shimmy Disc Europe)Bongwater
  • Bongwaterはインディ・レーベル(Shimmy-Disc)を主宰する(Mark)Kramerと長年のパートナー(恋人)でもあったらしいAnn Magnusonとの男女デュオ。《The Power Of Pussy》のカヴァ・デザインはオリジナルUS盤とユーロ盤とでは「Bongwater」のロゴなどが異なっている(ユーロ盤にタイトルが記されていないのは、ヌード・イラスト女性の「THE POWER OF PUSSY」という人型文字に問題があったから?)。Ann Magnuson扮するグラマラスなアマゾネスのカヴァがエロティックならば、アルバム・タイトルも強烈で、サイケデリックなタイトル曲ではゲスト参加のFred Schneider(The B-52's)がAnn Magnusonとデュエットする。「猫ぢから」を讃える歌じゃなかったの?‥‥パロディストとしてのKramerの真骨頂は単に「あの曲」に似ているとか、安直な「替え歌」などの低レヴェルではなく、2つの有名な曲を掛け合せて異種交配したようなメロディとサウンド(似ているけれど、やっぱり違う?)で、リスナーたちを煙に巻くことにある。

    たとえば〈Kisses Sweeter Than Wine〉は1950年代に活躍した米フォーク・グループ、The Weaversのカヴァ曲だが、軽やかなバンジョーの音色に心が浮き立って、まるで〈ワシントン広場の夜はふけて〉(Washington Square)と〈サマー・ワイン〉のパロディ・ソングのように聴こえる。この曲を聴いた後で、Nancy Sinatra & Lee Hazelwoodのデュエット曲〈Summer Wine〉のメロディを気分良く口ずさんでいると、いつの間にか〈夢は夜ひらく〉に豹変して、夜のネコのように目が丸くなる。この暗い日本の「演歌」はカヴァ曲だったのか!(この種のソックリ曲、一卵性ソングは色々あって、深夜に旧FEN放送の女性DJが素知らぬ顔で、〈ロンドンの狼男〉と〈Sweet Home Alabama〉の2曲を続けてオンエアした時はベッドから転げ落ちそうになりましたね)。Kramerは〈圭子の夢は夜ひらく〉を知っているのでしょうか。某プログレ・バンドの代表曲の有名なギター・イントロから、〈風に吹かれて〉のメロディに転調するラスト・ソングも笑えます。

  • ◎ LO STATO NATURALE(Philips)Rossana Casale
  • Rossana Casale嬢が脱アイドル歌手宣言?‥‥青い水中ヌード・カヴァに思わずジャケ買いしてしまった男性たちも少なくないでしょう。可愛いフェイス+ロリ・ヴォイス+全裸という三位一体には抗えませんね。男声アカペラのイントロから始まる5thアルバムはワールド・ミュージック〜アフロ色も濃厚で、〈Terra〉ではToure Kundaがパーカッションとコーラスでゲスト参加しているほど。「ネェ〜ネェ〜ネェ〜」という女声コーラスが印象的な〈Siamo Vivi〉、イタリア版Kate Bushみたいに勇ましい〈La Grande Strada〉、ピアノの伴奏だけで歌う〈Pioggia〉、スパニッシュ風の生ギターがクールに響く〈Male〉、「無料ビーチ」(ヌーディスト村?)というタイトルの〈Spiaggia Libera〉など、ワールド・ミュージック〜プログレ風のアプローチは新鮮で、今聴いても全く色褪せない。宮沢りえの『Santa Fe』(朝日出版社 1991)と日・伊アイドル・ヌード競演!‥‥と騒いでいたのは一体誰ですか?

  • ◎ BLAST CULTURE + LIVE(Epic)F. F. F.
  • Bill LaswellのプロデュースでデビューしたF. F. F.はフランスのミクスチャー・バンドである。〈New Funk Generation〉の中で「French Funk Federation」や「Foncky French Family」と名乗っているように、ファンクとロックの融合を目指している(「fonck」とはFunkとRockの造語)。〈Marco〉と〈Doctor Love〉の中で、〈Atomic Dog〉や〈One Nation Under A Groove〉を挿んだり、インナー・スリーヴに「Free your mind and your ass will follow」という歌詞を引用していることからも、George ClintonやP-Funkからの影響が色濃い。ファンク、ヘヴィ・ロック、ヒップホップ、レゲエ〜ダブ‥‥Living ColorやFishboneよりもファンクやワールド・ミュージック色が強く、ハイテンションなのにクールで汗臭くない。Serge Gainsbourgの〈Requlem Pour Un Con〉をカヴァしているところがフランスのバンドらしい。初回盤には5曲入りのライヴCDが付いていた。1st〜3rdアルバム《Blast Curture》、《Free For Fever》(1993)、《FFF》(1996)の3枚をセットにした「廉価盤」も出ています。

  • ◎ NEVERMIND(DGC)Nirvana
  • 1991年はロックにとって特別な年だった。グランジとシューゲイザー‥‥共に長く語り合い、聴き続けることになる2枚のアルバムがリリースされた年だったのだから。水中で泳ぐ男児の目前に釣り針の餌として1ドル紙幣が垂らされているアルバム・カヴァ、「Teen Spirit」というデオドランド(制汗)の商品名だった〈Smells Like Teen Spirit〉、「オレは銃を持っていない」と繰り返し歌われる〈Come As You Are〉‥‥全世界で1千万枚を売り上げた《Nevermind》は、グランジとNirvanaの名前を全世界に知らしめただけでなく、Butch Vig(プロデュース)とAndy Wallace(ミックス)の名も高めた。しかし、アルバム・タイトルとは裏腹に全然「心配御無用」ではなかった。ポップ〜コマーシャル化したという批判にはラスト・ソングの〈Something In The Way〉が終わった後、10分間の無音録音部分を経た後に仕掛けられた時限爆弾の「シークレット・トラック」が応えているような気もする。Caetano Velosoが〈Come As You Are〉を、Rodrigo Bittencourtが〈In Bloom〉をカヴァしていることだけを挙げても、このアルバムが欧米以外のミュージシャンや若者たちに与えた衝撃の大きさを物語っている。

  • ◎ LOVELESS(Creation)My Bloody Valentine
  • Kurt Cobainの「猟銃自殺」(1994. 4. 5?)と共にグランジ・ブームは終焉してしまったが、シューゲイザーは都市の暗渠や地下水脈の中を深く潜行して、後に「ネオ・シューゲイザー」という新名称と共に復活する。「シューゲイザー」(shoegazer)とは文字通り「靴を見つめる人」という意味で、ステージ上のギタリストが直立不動で俯いて演奏するスタイルから由来する。その特徴は終始鳴り続けるノイズ・ギターの豪雨の彼方から囁くような弱弱しい男女ヴォイスが聴こえて来るという内省的なサウンドで、歌詞も殆ど聴き取れない。Kevin Shields率いるMy Bloody Valentine(MBV)はシューゲイザーの代表格。金も時間も湯水のように費やした長いレコーディングによって、Creationレーベルの経営状態を危うくさせたという逸話も残っているほどである。某輸入CDショップで、一早く入荷したUS盤《Loveless》(Sire)が瞬く間に完売したこともあった。2012年には20周年記念の「リマスター・エディション」(2CD)もリリースされるという。

  • ◎ WELD(Reprise)Neil Young & Crazy Horse
  • 《Live Rust》(1979)がパンクに触発されたのと同じように、2枚組ライヴ・アルバム《Weld》はグランジに影響されている。「グランジのゴッド・ファーザー」と歓迎された《Ragged Glory》(1990)から〈Love To Burn〉〈Mansion On The Hill〉〈F*!#in' Up〉〈Love And Only Love〉〈Farmer John〉の5曲が演奏されていることもグランジ色を強く印象づける。〈Cinnanon Girl〉〈Cortez The Killer〉〈Like A Hurricane〉など、ライヴの定番曲をも含めた全16曲122分。戦闘機の爆撃音や対空砲火をサンプリング〜轟音カヴァした〈Blowin' In The Wind〉は「湾岸戦争」への抗議を強く感じさせるものだったが、さらに初回盤(Ltd. 25000)には《Arc》というCDが付いていた(《Arc》だけ後にバラ売りされた)。Sonic Youthからの示唆もあったという35分1本勝負のノイズ〜エクスペリメンタルなライヴ・パフォーマンスは、ライヴ版〈Cortez The Killer〉の後半で狂ったようにレゲエ化して聴衆を狂喜乱舞させたように、〈Like A Hurricane〉の長いダブ・ヴァージョンのように聴こえる。Neil Young & Crazy Horse全身全霊のライヴ・アルバムである。

                      *
    • ◎ 輸入盤のリリース〜入手順

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • Bongwaterは〈シミーにシビレて〉から再録(一部改稿)しました^^;
                       *





    Loveless

    Loveless

    • Artist: My Bloody Valentine
    • Label: Sire / London/Rhino
    • Date: 1991/11/05
    • Media: Audio CD
    • Songs: Only Shallow / Loomer / Touched / To Here Knows When / When You Sleep / I Only Said / Come In Alone / Sometimes / Blown A Wish / What You Want / Soon


    LustBelinda BackwardsThe Reality of My Surroundings




    Blue LinesLo Stato NaturalePower of Pussy




    NevermindBlast CultureWeld
    タグ:Music rewind mbv
    コメント(0)  トラックバック(0) 

    コメント 0

    コメントを書く

    お名前:
    URL:
    コメント:
    画像認証:
    下の画像に表示されている文字を入力してください。

    トラックバック 0