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ドライでも?(1 9 9 2) [r e w i n d]



  • ◎ GULUMSE(Coskun Plak 1991)Sezen Aksu
  • 赤い髪にアラビア文字が刻まれたイヤリング、太い眉にルージュを塗った唇‥‥モスグリーンをバックにした女性のポートレイトには強烈なインパクトがある。トルコ歌謡とエレクトロ・ポップの出合いはターンテーブルの上の薔薇と毛糸玉のように美しい。デジタル・ビートとアラビックな旋律のストリングスにSezen Aksuのヴォイスが絡むと、箸で食べる「鱈子スパゲッティ」のような東西の混淆が広がる。西欧12音階では表わせない微妙な音程やブルガリアン・ヴォイスのような高周波音域がリスナーたちの耳朶や脳内を刺戟するのだろうか?‥‥ドラマチックなメロディ展開や情感の籠ったバラードに感涙してしまう。《これこそが私の求めていたものだ / 私の必要とするものだ》と歌ったKate Bushと同じ驚きと喜びが躰の中から込み上げて来る。何百回聴いても、Gypsy Kingsみたいな手拍子が入って来る〈Gullerim Soldu〉のサビのところで必ず泣いちゃう。この世界には聴いたことのない素晴しい音楽が溢れている。

  • ◎ TUMOR CIRCUS(Alternative Tentacles 1991)Tumor Circus
  • 米モンタナ州の4人組Steel Pole Bath Tub(SPBT)とJello Biafra(Dead Kennedys)の合体ユニット。基本はパンク・ロックだが、リスナーは狂った運転手が操縦する暴走列車SPBTに運悪く乗り合わせてしまったような気分になる。曲がりくねった線路から脱線しても隘路を全速力で駆け抜ける機関車。耳を劈く轟音と上下左右に揺れる振動と運転手の咆哮に蹂躙されながら運ばれて行く乗客たち。緩急自在のドライヴィング・テクニックを見せつける〈Hazing For Success〉、壁や心の中までも透視する千里眼を持った男の孤独を描いた〈The Man With The Corkscrew Eyes〉、ネコちゃんがミャオ〜〜ンと鳴く〈Swine Flu〉‥‥「腫瘍サーカス」というアルバム・タイトルが暗示するように、疾患や病気などに纏わる重いテーマが暗渠に通奏低音として流れている。この暴走列車の終着点は一体どこにあるのだろうかと不安になって来た乗客たちのために、16分に及ぶ長尺曲〈Turn Off The Pespirator〉がラストに用意されている。人工呼吸器を着けた患者の見ている今際の際の「悪夢」だったのか!

  • ◎ CIRCULADO(Philips)Caetano Veloso
  • 向日葵のアップ写真に右眼と口唇をコラージュしたアルバム・カヴァが人目を惹く。まるで植物化した牡ライオン(ダンデライオンは「蒲公英」のことだが)のように見える。Arto Lindsayがプロデュースした洒脱なアルバムは、柔らかいラップ調のヴォイスにポルトガル語(Bebel Gilberto)、英語、スペイン語、フランス語、日本語の女声コーラスが華を添える〈Fora Da Ordem〉(日本人女性は「シンセカイノムチツジョ(新世界の無秩序)」と歌う)で幕を開ける。盟友Gilberto Gilのギター(violao)で参加した〈Boas Vindas〉、Arto Lindsayの必殺ノンチューニング・ノイズ・ギターとCaetano Velosoのヴォイスによる即興曲〈Ela Ela〉、Melvin GibbsやMarc Ribot、坂本龍一などNYのミュージシャンと共演した〈Neide Candolina〉、Gilberto GilとGal Costaがゲスト・ヴォーカル参加した〈O Cu Do Mundo〉など‥‥Caetano Velosoの若々しい中性的なヴォイスに魅了される1992年のアルバムである。

  • ◎ DRY + DEMO(Too Pure)PJ Harvey
  • 「22 79, 34」‥‥CDプレーヤに表示されたデジタル数字(収録曲数と収録時間)に驚いたことを昨日のように憶えている。一瞬、CDを入れ間違えたのか、それともCDプレーヤが壊れたのかと思っちゃった。初回CD盤(PURE CDD010)には全11曲のデモが入っていたのだ(アナログ盤は2枚組のはずだが、CDは1枚なので見分けが着かない!)。4トラック・レコーダに録音された強靭なデモ・ヴァージョンを聴けば、PJ Harveyの音楽が既に完成されていることに気づくだろう。ギター、ベース、ドラムスというトリオ編成ながら、アヴァギャンで変態的なビートはCaptain Beefheart & The Magic Bandを想わせなくもない。重量級のドライヴ感で疾走する〈O Stella〉、スライド・ギターが肌に纏わりつく6拍子の〈Happy And Bleeding〉、グランジ風の衣裳を纏った〈Sheela-Na-Gig〉、5拍子曲の〈Hair〉、変則パンクの〈Joe〉、PJHが自らヴァイオリンを弾く〈Plants And Rags〉など‥‥「衝撃のデビュー作」というコピーに偽わりなしの傑作アルバムである。アルバム・タイトル曲の〈Dry〉はSteve Albini録音の2ndアルバム《Rid Of Me》(Island 1993)に収録されています。

    《Dry》のアルバム・カヴァはPJH本人と想われる女性の顔の下半分(唇と顎)のアップ写真で、誰かに口紅を乱暴に塗りたくられたのか、それとも拭い取られたのか、いずれにしても暴力的なイメージを喚起させるものだが、「裏カヴァ」の過激でミステリアスな画像に較べれば(インナー・スリーヴのリップスティック写真も含めて)、メッセージは直截的で分かり易い。粒子の粗いモノクロ画像にも拘わらず、上半身ヌード(右の乳房が露出している)のPJHと、その左後方で何かが爆発炎上している背景が強いインパクトを放っているからである。この映像は何かの崩壊や終焉を暗示しているのだろうか。しかも後方からの爆風によって髪が煽られて魔女の黒髪のように舞い上がっているものの、穏やかな表情を浮かべている彼女の三日月形の大きな唇にはルージュを引いたような光沢さえあるのだ。解放された女性、あるいは自由のためのゲリラ戦士としてのPJH‥‥陵辱された女の報復テロ攻撃という表裏のカヴァ・ストーリは陳腐かしら?

  • ◎ KHALED(Barclay)Khaled
  • Cheb Khaled(Chebは「若い男」という意味)改めKhaled Hadj Brahimのセルフ・タイトル・アルバムはDon WasとMichael Brooksという2人のプロデューサを立てているが、伝統技巧的な後者のアレンジよりも豪快な前者のプロダクションの方が断然カッコ良い。つまり〈Didi〉〈El Arbi〉〈Ragda〉〈Mauvais Sang〉〈Braya〉の5曲で聴けるクラブ / ダンス・サウンドとライ・ミュージックの融合は見事としか言いようがない。LAとブルッセルという録音場所の違いも影響しているのだろうか。体育会系の直感的な乗り重視のDon Wasと学術研究者肌のMichael Brooksの違いかもしれない。アラブ〜仏語圏で大ヒットした〈Didi〉、レゲエ調の〈Ragda〉、グラウンドビート風の〈Mauvais Sang〉‥‥Was (Not Was) にもアラビックな香りのする楽曲があったけれど、これほどまでにDon Wasがアラブ音楽に造詣が深いとは思いも拠らなかった。Don Wasの骨太ベースは揺るがない。「Cheb」という枕詞が取れたKhaledは「ライの帝王」と呼ばれるようになる。

  • ◎ PUNISHMENT ROOM(Bomp!)Distorted Pony
  • LA出身の5人組ノイズ・ロック・バンドのデビュー・アルバム。「懲罰の部屋」というタイトルに相応しく、インナー・スリーヴ(4つ折り歌詞カード)に足枷や水責め(口に漏斗で水を入れる)、宙吊りなど、中世の拷問絵図が描かれている。アルバム・カヴァの異様な仮面は「鉄の処女」の頭部だろうか。クレジットに名前はないが、そのノイジーで籠った特徴的なサウンドから、Steve Albini録音だと言われている。全10曲に5曲入りのEP《Work Makes Freedom》(1991)を追加収録しても僅か41分しかない。(EP盤の曲は殆ど歌詞が聴き取れない)。骨太のベースとタイトなドラムス、ノイズ・ギターと煽動的なヴォイスはKIlling Jokeを想い起こさせるが、彼らよりもパンキッシュでノイジー。〈Splinter〉や〈Gut Bug〉のヴォイスから判断して、メンバーの1人(Dora Jahr?)は女性のような気もするけれど‥‥。

  • ◎ FONTANELLE(Reprise)Babes In Toyland
  • Babes In Toylandは米ミネアポリス出身の3人娘。Lee Ranaldo(Sonic Youth)がプロデュースしたメジャー1作目の《Fontanelle》は、アルバム・ジャケだけでなく中身の方もNirvanaを意識したグランジ・サウンドになっている。Kat Bjellandの可愛いルックスや鳴き声に油断していると突然威嚇されて痛い目に遭う。ネコ撫で声から絶叫パンクに豹変するギャップが魅力的で、手懐けるのに苦労しそうなタイプ。グランジ風のギター・リフが女版ニルヴァーナを想わせる〈Bruise Violet〉、ロリ声と絶叫ヴォイスの軟硬二枚舌攻撃に翻弄される〈Right Now〉〈Won't Tell〉〈Spun〉、疾走するパンクの〈Bluebell〉、メタル風の〈Handsome & Gretel〉‥‥形骸化したパンクやメタルの様式美の鋳型に行儀良く収まっている部分も少なくないけれど、それを突き破る瞬間がKatのヴォイスにある。裏ジャケで胸を露出したPJ Harveyのデビュー・アルバム《Dry》(Too Pure)と共に、1992年を象徴する「ヌード・アルバム」ではないかしら。

  • ◎ VANESSA PARADIS(Remark)Vanessa Paradis
  • 背中を丸めて横坐りした「変形招き猫」のポーズ(右手首を不自然に内へ曲げている)。Jean-Baptiste Mondinoのポートレイトが印象的な3rdアルバムは、Serge Gainsbourgに代わってLenny Kravitzのプロデュース。フレンチ・ロリータから60年代ロック&ポップスへタイム・スリップ。《Variations Sur Le Meme T'aime》(1990)の裏カヴァ(裏猫ジャケ)で黒ネコを膝の上で抱いていた少女が牝猫に変身した感じかしら。初主演映画『白い婚礼』(1989)を小雨日和に自由が丘武蔵野館で観たことや『エリザ』(1994)の試写会に行ったこと、「鳥籠の中の網タイツ少女」が空中ブランコに乗るCOCO CHANELのCM(1992)やドタキャンされた幻の来日公演(1993)、『橋の上の娘』(1998)の前売りスペシャル・パックに入っていたル・シネマ入場券+オリジナルCD(17曲入)+ブックレット(シナリオ+インタヴュー+写真集)やThe Little Rabbitsが音楽を手掛けたB級SF映画『Atomik Circus』(邦題は『エイリアンvsヴァネッサ・パラディ』)‥‥などを懐かしく思い出してしまうのは、このアルバム自体がセピア色のレトロ趣味に覆われているせいでしょう。仏盤の方が1曲(全11曲)多く入っています。

  • ◎ WA DI YE(Philips)Amina
  • 海辺でグランジ・ファッションの子供たちと一緒にポーズを決めるAmina。右手に持った回転式拳銃を右てに持って虚空に狙いを定める少年‥‥。Jean-Baptiste Mondinoの人工的に褪色させたような(白黒写真に着色したのではなく、カラー写真を脱色したような)色彩感はタルコフスキーにも通底するノスタルジックな匂いがある。Amina Annabiはチェニジア生まれの仏女優、ミュージシャン。Martin Meissonnierのプロデュースした2ndアルバムは打ち込み(プログラミング)と生楽器(フルート、ヴァイオリン、ダルブッカ、アコーディオン、チェロなど)のブレンド具合が絶妙で、Aminaのアラビックな歌唱を際立たせる。子供たちのコーラスをあしらったアルバム・タイトル曲〈Wa Di Ye〉、映画監督ペドロ・アルモドヴァルに捧げた〈Atame〉、トリップホップ風の〈La Mauvaise Graine〉、ハチロクの〈Yanari〉‥‥。『The Sheltering Sky』(1990)の妖艶な肢体(爆乳ヌード!)には度胆を抜かれましたね。

  • ◎ PURE GUAVA(Elektra)Ween
  • 1992年にWeen兄弟はメジャー・デビューを果たす。CDの回転ムラかと思ったらオケとシンクロしないアナログ多重録音失敗の〈little Birdy〉、得意の早回し幼児声(Pt.2は前作に収録)の〈The Stallion Pt.3〉、恐れ多くもストーンズ・ネタの〈Big Jilm〉、タイトルが示す通りレゲエ+ジャンキー+ユダヤ人の狂躁的ダブ空間の〈Reggaejunkiejew〉。超高速ド下手クソ・カントリーの〈Pummpin' 4 the Man〉、どこかで聴いた気もするメロディなのに記憶の深淵に引っ掛かって思い出せないLennon〜Kramer調の〈Sarah〉、「おかまのサーファーたち」似の〈Touch My Tooter〉、多国籍軍のイラク空爆をCNN「地下特派員」が実況中継する〈Mourning Glory〉、Ween版〈朝日の昇らない家〉の〈Loving U Thru It All〉、Devoというハイテク車を酔っ払い運転で台無しにしたような〈Hey Fat Boy (Asshole)〉、メジャー7thコードが美しい唯一の正調ポップ・チューン〈Don't Get 2 Close (2 My Fantasy)〉‥‥でも、ちょっと変かな?‥‥60's風のサビの強引さが笑えるというように、元ネタ〜アイディア探しを始めたら切りがない。

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    Dry

    Dry

    • Artist: PJ Harvey
    • Label: Too Pure
    • Date: 2007/07/17
    • Media: Audio CD
    • Songs: Oh My Lover / O Stella / Dress / Victory / Happy And Bleeding / Sheela-Na-Gig / Hair / Joe / Plants And Rags / Fountain / Water


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