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インナー・シティ・ライフ(1 9 9 5) [r e w i n d]



  • ◎ NICE ASS(Wiiija)Free Kitten
  • Kim Gordon(Sonic Youth)とJulie Cafritz(元Pussy Galore)の女性デュオにドラムとベース、Yoshimi(Boredoms)とMark Ibold(Pavement)が加わって4人組となったFree Kittenの《Nice Ass》はリズム面が強化されている。それでも旧ロック・バンドの形態に収まったわけではなく、牝ネコ2匹の初期衝動全方位開放型の威嚇と猫撫で声の入り混じったカケ合いは健在で、ヒップホップ / ラップへも急接近。Neil Youngの〈Harvest Moon〉を揶揄した〈Harvest Spoon〉、〈Dick〉の決め科白「We're kitten and we're better than you」を自家引用した〈Proper Band〉、Michael Jacksonの性的幼児虐待疑惑を題材にした〈Call Back (Episode XXI) 〉、少女時代のファンタスティックな抒情性が溢れる〈Greener Pastures〉、1分足らずの疾走パンク〈Secret Sex Friend〉‥‥仔猫たちの怒りや怖れ、憧れ、共感、皮肉、罵倒、嘲笑などが全15曲32分に凝縮されている。

  • ◎ MAXINQUAYE(Fourth & Broadway)Tricky
  • 1995年はトリップホップ・イヤーとして記憶されているかもしれない。しかし、Trickyのデビュー・アルバムはダークな空間で女性ヴォイスが妖しく浮游するトリップホップよりは内面へ深く沈み込むダウン・ビートに近い。Trickyの内省的な呟きとMartina Topley-Birdの耽美系ヴォイスは、解体されて鉄骨が剥き出しになった建造物や、半壊して骨組みだけが残った廃墟の中で流れる幽霊たちの歌声のように気味が悪い。陰鬱だが閉ざされた暗黒空間ではない。瓦礫の中の読経のような解放感もある。ダブ、ループ、スクラッチ・ノイズ、メタル具体音、高揚しないヒップホップ、弾まないレゲエ、暗鬱なパンク‥‥The Pop GroupやMassive Attackの意思を受け継いだブリストル・サウンド。Alison Goldfrapp嬢が歌う〈Pumpkin〉はSmashing Pumpkins、〈Brand New You're Retro〉は2009年6月25日に急逝した「キング・オヴ・ポップ」(享年50歳)の曲をサンプリングしています。

  • ◎ GASH(Columbia)Foetus
  • Foetusこと、J.G. Thirlwellの唯一のメジャー・アルバム。たとえメジャー契約をしようとも一切の妥協を赦さないインダストリアル・サウンドが爆発する。ライヴ盤のキャッチ・コピーに「全米で大ヒット!! 筋肉、パワーのつき方がケタ違い!!」(日本の通販広告からの引用)とあったように、メタル・ビートやインダストリアル・ノイズに闘いを挑んで行く。アルバム・タイトルの「Gash」は「深い傷」という意味だが、NYの高層ビル街に浮かび上がるジャンボトロン(SONY)に英・露タイトルと共に映し出されたセクシーな看護婦が、もう1つの意味を隠喩する。マルチ・プレイヤーFoetusによるセルフ・プロデュース作品で、Tod Ashley(Cop Shoot Cop)やMarc Ribot、金管カルテットなど、ゲスト・ミュージシャンが変化をつける。早撃ちフィータスのマカロニ・ウエスタン、スライド・ギターとハーモニカが奏でるスワンプ・ブルーズ、アラビック風味、Cop Shoot Copと合体したかのような変則メタル・ビート、11分を超える長尺ビッグ・バンド・ジャズなど‥‥フィータスのインダストリアル・ノイズ・ワールドを堪能出来る。

  • ◎ NINGUEM(RCA)Arnaldo Antunes
  • Arnaldo Antunesと5人の仲間たちの顔写真をコラージュしたアルバム・カヴァ‥‥目や耳、鼻、口など、顔の部位や皮膚組織を移植パッチワークした不気味なモンスターのようなアート・ワークに怯んだ人も、裏面の「produzio por liminha」というクレジットにホッと胸を撫で下ろしたでしょう。実験的なソロ・アルバム《Nome》(1993)から一転したバンド・スタイルのポップ・ロック路線。Edgard Scandurra(ギター)を中心とする5人のメンバーに支えられてArnaldoは殆どヴォーカルだけに専念している。インナーの見開き頁に各メンバーの増殖コラージュをレイアウトしていることからも、バンド的な色彩が濃いことを印象づける。Edgardのギター・ソロ、女性キーボード奏者Zara Moreauとのデュエット、眠気を誘発するArnaldoの低音ヴォイス。ロック、ボサノヴァ、ワルツ、パンク‥‥ラスト2曲はアヴァン・ポップで、Liminhaがベースを弾いている曲もある。

  • ◎ AGGREGATES 1-26(Knitting Factory)Arto Lindsay Trio
  • Arto Lindsayのトレード・マークとなっているノンチューニング・ノイズ・ギターは、実はチューニングが出来ないからだという説がある。プロ・ミュージシャンなのにチューニングも出来ないのか、とツッコミを入れる前に考えて欲しい。そもそも正しいチューニングとは一体何だろう?‥‥それは西洋音楽7音階の支配下に屈することではないのか。自由な音楽を目指すのなら五線譜の音符記号から逸脱するべきではないか。Arnaldo Antunesのソロ・アルバム《Nome》の中でもノイズ・ギターを弾いていたArto Lindsayのトリオ名義のアルバムはタイトルが示すように26曲の歌とインプロヴィゼーションで構成されている(歌もの16曲、1分未満が9曲)。静から動へ、抑制と発情を繰り返すサウンドが張り詰めた空間を切り裂く。澄んだ冷気に青白い稲妻が放電する。痙攣の美。Arto Lindsay(ギター&ヴォイス)、Melvin Gibbs(ベース)、Dougie Bowne(ドラムス)という最少編成で、純度の高いノイズ・ミュージックを追求している。

  • ◎ MUDBIRD SHIVERS(Rec Rec)The Ex
  • 《Mudbird Shivers》の場合も《And Weathermen Shrug Their Shoulders》(1993)の「予報士」と「大砲」と「天気図」の三角関係と同様に、「タイトル」と「スリーヴ」と「プリント」(CD盤)が美しいトライアングルを作り出す。Ed van der Elskenの写真を使用した判じ物のような「スリーヴ」‥‥アルバム・タイトル《Mudbird ...》が泥まみれの2人の少年の隠喩として機能する。「バード」(鳥)という言葉から、『個人的な体験』の主人公の綽名やフリオ・コルタサルの中編「追い求める男」のモデルとなったジャズマンのニックネームを思い出す人もいるかもしれない。しかし、「タイトル」と「スリーヴ」の関係を単なるメタファとして納得したリスナーはCDケースを開けた瞬間に息を呑む。なぜなら「泥バード」=「泥んこ少年」という安易な連想をピクチャーCD(美しい野生のカワセミ)が裏切るのだから。

    Tom Coraとの共演盤2作を挟んで、The Exの単独アルバムとしては2枚組の《Joggers & Smoggers》(1989)以来6年振りにリリースされた《Mudbird Shivers》には大きな変化があった。先の2作にも参加していたAndy Moor(Dog Faced Hermans)の正式加入である。これによって左右ツイン・ギターのバトル、2重螺旋のように絡み着くリフ、撒き散らされるノイズの質・量など‥‥ギター・サウンドが飛躍的に拡大強化された。2本のギターが有機的に絡み合って爆発する〈Thunderstruck Blues〉、まるで爆撃機の大空襲のような〈Embarrassment〉、1930年代のトラッド・フォークの〈House Carpenter〉、2本のスライド・ギターが絡み合い畝る〈Newsense〉、解体と再構築を繰り返す〈Audible Bacillus〉。〈Ret Roper〉と〈Former Reporter〉の2曲は静から動へ移行する前・後編の連作曲みたいだ。

  • ◎ TIMELESS(Metalheads)Goldie
  • 19世紀末芸術が20世紀に衰退したように、ドラムンベースは20世紀末に咲いた徒花だったのだろうか?‥‥人力では決して叩けない超絶ドラミング、シンコペーションする高速ビート。ドラムマシンによる超人的なプレイはサイボーグやアンドロイドたちが闊歩する近未来世界を想わせるものだった。時代は未だドラムンベースが描いた未来に追い尾いていないけれど、最先端音楽としてのドラムンベースは失速して前世紀の遺物となった。しかし、色褪せて古色蒼然となってしまったRoni Sizeとは対照的に、Goldieの輝きは失われていない。「Inner City Life」というスケールの大きな世界観。広大なランドスケープ、大海原、海底、果てしなく続く砂漠やサバンナ、ジャングル‥‥超高層ビルが林立する曲がりくねった空間を自由自在に飛び回るスリルと解放感。鳥の目になって空を飛ぶヴァーチャル映像のように躰が浮游する。21分にも及ぶアルバム・タイトルの〈Timeless〉を聴いていると、世界のイメージが更新されて行く。少し前に見ていた風景が違って見えて来るかもしれない。

  • ◎ THIS IS INTERNATIONAL TELECOM(Megaphone Limited)The Dramatics
  • 同じカヴァ・アートが2つとして存在しないメガフォン・リミテッド・シリーズ。その中でも、The Dramaticsのアルバム・カヴァは特に凝っている。紙ジャケではなく、既成のCDプラケースの表面にペインティングを施したり、歌詞ブックレットの代わりにコラージュ・アートを挿んだり‥‥鳥とフィルムがコラージュされた「デビュー・アルバム」(1994)の裏ケースには「cover art by Martha Colburn 241/500」という手書きのサインがある。「2ndアルバム」はプラケースの表裏をアルミ箔で包んで、体操着姿の女子学生たちのピンボケ写真が貼ってある。The DramaticsはJason WillettMartha Colburnの男女デュオで、Jad Fair(Half Japanese)、Yamatsuka Eye(Boredoms)、Caroline Kraabel(The Honkies)、Jon Rose、99 Hooker‥‥というゲスト・ミュージシャンから予想出来る通りの変態ノイズ・ジャンク・インプロヴィゼーションを繰り広げる。

  • ◎ ANAMORHOSEE(Polydor)Mylene Farmer
  • 首の切れた黒い下着姿の女性写真を視た心ない女権拡張主義者たちは「猟奇的」と言い放つだろうか、あるいは壁に向かって両腕を挙げている女性の抵抗不能のポーズが「レイプ」を連想させるから不愉快だ──これらは一種の「性的いやがらせ」だと嫌悪感を剥き出しにするのだろうか。Mylene Farmerの4年振りのアルバム《Anamorphosee》は表向きにはHerb Rittsの撮った表裏2枚の写真によって世の多くの独身男たちを誘惑する一方で、ある種の女たちを拒絶する。彼女のことを知らない同性は、ジャケットで顔を隠しているのは歌は上手いのかもしれないが、どうせブス(顔)に決まっていると思い込み、長年の異性ファンは一体ミレーヌに何が起こったのかと疑心暗鬼の念に駆られる。本当に彼女は変わったのか、もしそうならば一体どこがどのように変化したのか?‥‥それだけに《アナモルフォーゼ》(変躰)というアルバム・タイトルが蠱惑的に響く。

    異国人の睛に映るエロティックな〈California〉、Nirvana風の導入部の〈L'instant X〉、仏製トリップホップの〈Alice〉など‥‥聴きどころも少なくない。例によってプロデュースを手掛けるLaurent Boutonnatが殆どの楽曲を書いている中で、ミレーヌさま唯一の自作曲〈Tomber 7 Fois...〉がJoan Jett & Blackhearts風なのは御愛嬌か。メランコリー少女より、こっちの方が地だったりして‥‥。しかし、〈Rever〉のシングル盤(CD MAXI)で全裸(正座、前屈み、手ブラ・ヌード状態!)になってしまった時は吃驚しました。レオタード→黒い下着→ヌードという展開は、ある程度予測可能だったけれど、現実に脱がれると結構たじろぐものがないでもない。愛しのミレーヌ姫は一体この先どんな「痴態」を晒してしまうのか!?‥‥ファンならずとも期待と不安が脳裡を交錯したのだった。何しろ同シングル盤に収録されているライヴ・ヴァージョンでは、途中で感極まって歌えなくなってしまうのだから(すかさず観衆の声援〜合唱が彼女を好サポートする感動的場面が立ち現われる)。

  • ◎ DO YOU LIKE MY TIGHT SWEATER?(Echo)Moloko
  • 90年代中頃、雨後の筍のように出現したトリップ・ホップ・ユニット(男女2人組)の中でも、Moloko(ロシア語で「ミルク」という意味)の存在は異質だった。「私のピタ短セーターが気に入った?」という変テコリンなアルバム・タイトル。ピタ短セーターを着た子供の周りにキモ可愛い妖怪深海魚やモンスターたちが浮游する不思議なイラスト・カヴァ。無機的な変態ビート、ブヒブヒ・ブヒョブヒョなアナログ・シンセ、ウィアードな女性ヴォイス。トークボックス(ヴォコーダ?)を使った〈Day For Night〉、途中からドラムンベース調になる〈I Can't Help Myself〉、スロー・ファンクの〈Lotus Eaters〉‥‥多くのトリップ・ホップ・ユニットの例外に漏れず、Molokoの場合もデビュー・アルバムが素晴しい(このCD2枚を2つのステレオ再生装置から同時に鳴らすと驚異の4次元ヴァーチャル・サウンド(36kHz Virtual Quadraphonica)を体感出来るという「解説」は2枚買わせるためのジョークでしょう)。Roisin Murphyは10年後にMatthew Herbertのプロデュースでソロ・デビュー作《Ruby Blue》(2005)をリリースすることになる。

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    Timeless

    Timeless

    • Artist: Goldie
    • Label: Sony Classical
    • Date: 1997/07/15
    • Media: Audio CD(2CD)
    • Songs: Timeless / Saint Angel / State Of Mind / This Is A Bad / Sea Of Tears / Jah The Seventh Seal // Sense Of Rage (Sensual V.I.P. Mix) / Still Life / Angel / Adrift / Kemistry / You And Me / Inner City Life (Baby Boy's Edit) / Inner City Life (Rabbit's Short Attention Span Edit)


    Nice AssMaxinquayeGash




    NinguémAggregates 1-26Mudbird Shivers




    This Is International TelecomAnamorphoséeDo You Like My Tight Sweater?
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