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ウン・ディア(2 0 0 8) [r e w i n d]



  • ◎ MARE*(Sony / BMG)Adriana Calcanhotto
  • Adriana Partimpim名義の少女マンガ風デカ目(アイ・マスク)・ジャケから一転して、「蒼いゾンビ女」に変身?‥‥ではなくて、恐らくサンバ・カーニヴァルの仮装メイクをイメージしているのだろうか(でも、ちょっと怖いかも)。サンバ、タンゴ、カリプソ、ボサノヴァなどの共作、カヴァ曲を新世代トリオ、Moreno、Domenico、Kassinがバックアップ。選曲も最高、アレンジも絶妙で微に入り細に入る。Bebel Gilbertoの〈Mulher Sem Razao〉には感涙しました。快晴の青空は中盤以降、「蒼い女」が象徴するような怪しげな雲行きに染まって行く。2人の大物ミュージシャンがゲスト参加‥‥〈Porto Alegre〉ではMarisa Monteのコーラス、〈Sargaco Mar〉ではGilberto Gilのギター(violao)が花を添える。Arto Lindsayとの共同プロデュースで、お約束のノンチューニング・ノイズ・ギターも控え目ながら〈Para La〉で炸裂します。

  • ◎ EDIT*(Clippled Dick Hot Wax!)Mark Stewart
  • The Pop Groupと言えば、Dennis Bovell(Matumbi)がプロデュースしたデビュー・アルバム《Y》(Radar 1979)が有名ですが、解散後のMark StewartはAdrian Sherwoodとタッグを組んで、ダブ〜ヒップホップ〜テクノ寄りのサウンドを一貫して追求して来た。《Control Data》(Mute 1996)以来、12年振りに発表された《Edit》でも盟友Adrian Sherwoodとの共同プロデュースで健在ぶりをアピールしている。ズタズタに切り裂かれてカットアップされたレゲエ、ダブ、ヒップホップ、ファンク、テクノのブラックホールから、アジテーションの毒を撒き散らす。エレクトロ・ファンクの〈Secret Suburbia〉で、Denise Sherwood(Adrianの娘)、Yardbirdsのカヴァ曲〈Mr You're A Better Man Than I〉で、Ari Up(The Slits)をゲスト・ヴォーカルに招くなど、聴きどころも多い。

  • ◎ FLEET FOXES(Sub Pop)Fleet Foxes
  • ピーテル・ブリューゲル父の〈ネーデルランドの諺〉(The Blue Cloak 1559)を使ったジャケット(紙ジャケ仕様)が人目を惹くFleet Foxesのデビュー・アルバムは、フリー・フォークと呼ばれるアクースティック音楽が新たな局面に入ったことを示唆している。米シアトル産の5匹のキツネたちは自らを「バロック・ハーモニック・ポップ・ジャムズ」と名乗る。牧歌風のフォーク・ソングでありながら、教会内に響くゴスペルのような荘厳なイメージが広がる。広大な農村地帯ではなく山岳地方や立体的に構築された建築物を想わせると言った方が近いかもしれない。Arcade Fireほどエキセントリックではないけれど、同じ土壌から育った樹木のような香りがする。3拍子の〈Tiger Mountain Peasant Song〉、美しいコーラスから始まる〈Blue Ridge Mountain〉‥‥Robin Pecknoldのヴォイスは内省と自己陶酔が相半ばするロック・ヴォーカリストの王道を行く。あのNirvanaを輩出したSub Popからデビューという巡り合わせも面白い。

  • ◎ HYMNS FOR A DARK HORSE*(Dead Oceans)Bowerbirds
  • オーストリア産のニワシドリ(bowerbird)の雄鳥は草や小枝などで四阿風の巣を作ることで知られている。米ノースカロライナの3人組も美しいメロディを奏でる。ギター、アコーディオン、ヴァイオリン、マーチング・バスドラムという変則的な編成で、1度も聴いたことがないのに、どこかノスタルジックな音楽を紡ぎ出す。Phil Mooreのヴォイスに、Beth Tacular & Mark Paulsonのコーラス。〈Hooves〉でアコーディオンが入ってくるところ、〈In Hour Talons〉で「deet-deet-deet-deet-deet-deet-deet-deet-deet-deet!」と、コーラスが囀るところなど、何度か泣きそうになる瞬間がある。Devendra Banhartを思い浮かべるリスナーもいるかもしれないが、弾き語りの吟遊詩人ではなく、Bowerbirdsという稀有なグループの個性が際立つ。《Fleet Foxes》と同じく、フリー・フォーク以降の新たな可能性を感じさせるデビュー・アルバムである。

  • ◎ INHERIT(Ecstatic Peace!)Free Kitten
  • 11年振りに「気まぐれ仔猫ちゃん」が帰って来た。Kim Gordon、Julie Cafritz、Yoshimiの女性トリオとして復活アルバムをリリースした(Pavementの再結成で忙しいMark Iboldは不参加)。その代わりに恐竜息子のJ Mascisがギターとドラムで2曲にゲスト出演している。淡々としたスロー・バラードの〈Erected Girl〉、J Mascisとのギター・バトルが堪能出来る〈Surf's Up〉など‥‥サウンドはノイジーだが、Kim姐さんのヴォイスは穏やかでクール、気怠い頽廃感も漂う。この傾向は2つの長尺曲〈Free Kitten On the Mountain〉と〈Monster Eye〉で特に顕著である。〈Help Me〉や〈Bananas〉といったJulieのパンク・ナンバーが逆に目立つくらいで、従来のパンキッシュでフリーキーな仔猫のイメージは払拭されている。ライオット・ガルーというよりも、内省的な翳りを帯びた不穏なエレクトロニカ・キャットの趣きもある。いつまでも無邪気な「仔猫」ではいられない?‥‥彼女たちも成猫に生長したということなのだろうか。

  • ◎ POINT DE SUTURE(Polydor)Mylene Farmer
  • 3年振りのアルバム・タイトルは何と『縫い目』!‥‥手術台の上で縫合された「ミレーヌ人形」が痛々しいけれど、彼女の音楽までがゴスロリ化してしまったわけではない(ジャケ&インナー・スリーヴの「ミレーヌ人形」と写真は日本人が手掛けています)。クラブ・ミュージック寄りの〈Degeneration〉、レゲエ調の〈Appelle Mon Numero〉、〈XXL〉を想わせる豪快なロック・ナンバーの〈Paradis Inanime〉、Mobyと共演した〈Looking For My Name〉など‥‥いつもと変わらないミレーヌ姫に逢える。2ndアルバム《Ainsi Soit Je...》(1988)も腹話術の人形(少年)との2ショット・ジャケだったし、彼女の本質は何も変わっていないのでは?‥‥という気もします。コレクターズ・ボックス、限定デジパック、スーパージェルケース盤の3種類あって、デジパックには〈Degeneration〉のPVが、ボックスにはCDシングルと「手術用縫合キット」が入っているらしい。一体何を縫えば良いのでしょうか?

  • ◎ VILLAINAIRE(Constellation)The Dead Science
  • The Dead Scienceはシアトル出身のエクスペリメンタル・トリオで、変則リズムやハードエッジなギター・リフはオランダのThe Exを想わせるところもある。彼らとの違いはSam Mickensのファルセット・ヴォイスに妖しい色気があるところでしょうか。さらにゲスト・ミュージシャンの参加‥‥ハープ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという弦楽器や、トランペット、サックス、トロンボーンという金管楽器を加えたサウンドはスリリングで類を見ない。ハープのイントロが意表を衝く〈Thron Of Blood〉、変則6拍子の〈The Dancing Destryor〉、Tom Coraの暴走するチェロみたいな〈Monster Island Czars〉、スローバラードの後半からTom Verlaineみたいなギター・ソロに雪崩れ込む〈Wife You〉‥‥。黒紫地に金文字タイトルの「VILLAINAIRE」、裏ジャケに曲目を配したアートワーク(紙ジャケ仕様)も渋い。まぁ、Constllationからリリースされるアルバムは概ね地味なデザインなのだが。《Dear Science》ではなく「Dead Science」という気分です。

  • ◎ UN DIA*(Domino)Juana Molina
  • アルゼンチンの歌姫、Juana Molinaの5thアルバム。一見CGかと見まがう左右対象の鏡像ジャケは相変わらずの「変顔シリーズ」で、鏡の国に迷い込んだ音響派のアリスみたい(肖像写真だけではなく、曲目やクレジットも鏡文字になっている!)。 《Son》(2006)に続いて、英Dominoからのワールド・ワイドなリリース。全8曲と少なめながら、7分台の長尺曲が3曲もあって、深遠で幽微な不思議世界に惹き込まれる。アルバム・タイトル曲の〈Un Dia〉は南米民族音楽風の土俗性とエレクトロニカの混淆が妖しいオーラを放つ。7拍子の〈Vive Solo〉、6拍子の〈Lo Dejamos〉、ポリリズムの〈No Llama〉など‥‥実験色も濃い。ヴォイスをサンプリング〜ループ化して重ねる手法も、彼女の自家薬籠中のものになっている。強化されたリズムと意味不明の言葉(歌詞カードは付いていない)が呪術的な陶酔感を高めている。Bjorkを超えた?‥‥と吹聴してみたくもなる、2008年度屈指のアルバムなのだ。

  • ◎ THIS IS IT AND I AM IT AND YOU ARE IT ...*(Kill Rock Stars)Marnie Stern
  • 「This is it and I am it and you are it and so is that and he is it and she is it and it is it and that is that.」という、やたらに長いアルバム・タイトルは英国の哲学者アラン・ワッツ(Alan Watts)の言葉から採られている。デビュー・アルバム《In Advance Of The Broken Arm》(2007)を聴いている人は免疫が出来ているので驚かないが、初めてMarnie Sternの音楽に接するリスナーは腰が砕けるかもしれない。彼女は超絶タッピング早弾きギターと「ロリ声」という相容れない個性の持ち主なのだから。それに加えて、アルバムをプロデュースしたZach Hill(Hella)のドラムが変則リズムを叩き出す。Zeppみたいな瞬間もあるけれど、ハード・ロックではないし、ガールズ・ロックでも女パンクスでもロリポップでもない、摩訶不思議な音楽(アヴァン・ポップ)が展開されて行く。

  • ◎ EVERYTHING THAT HAPPENS WILL HAPPEN TODAY*(Todo Mundo)David Byrne & Brian Eno
  • David Byrne & Brian Enoの実に27年振りのコラボ新作。中近東やアフリカのレコード音源やラジオ音声をテープ・コラージュした《My Life In The Bush Of Ghosts》(Sire 1981)は《Remain In Light》(1980)の素材・ネタ集とも呼ぶべきアルバムで、2人のヴォイスは入っていなかった。しかし、ニュー・アルバムでは2人の歌がたっぷり聴ける。一聴しただけではポップな「歌もの」にしか聴こえないけれど、注意深く耳を傾けると下地に《Remain In Light》や《Bush Of Ghosts》の鉱石や骨片が透けて見え隠れする重層的な作りになっている。作曲・演奏(サウンド)= Eno、歌詞・歌(メロディ)= Byrneという分業の混じり具合が、極上のミルク・ティのように味わい深い。Robert WyattとPhil Manzaneraがゲスト参加しているのはEnoの人脈でしょう。Byrneの「特設サイト」で全曲試聴、1曲無料配信。デジタル・コンテンツのみ、CD+デジタル、限定デラックス・パッケージの3種が特典付きで購入可能です。

                        *

    2008年は10年以上インターヴァルを経た後の復活アルバムが頻出した年として記憶されるかもしれない。The B-52's、Was(Not Was)、Mark Stewart、Grace Jones‥‥その極めつけは27年振りのコラボというDavid Byrne & Brian Enoの共作だった。契機となったのは《The Bush Of Ghosts》の再リリースのためにByrneがロンドンを訪れた時だったという。オリジナル・アナログ盤を久しぶりに聴き返したり、《Remain In Light》のリマスターCD(2006)に聴き浸ったりしたので、2人のコラボ新作には特別な感慨がある。10月以降は某WAVEの閉店セールで旧譜を買い漁うのに忙しかった。買い逃した旧譜を安く入手出来るのは嬉しいけれど、それ以上に、レコード店でCDを買う時代が終焉したような一抹の寂しさも感じている。紙ジャケ・リマスター盤や高音質CD(SHM、HQ、Blue-spec)の国内盤を中高年層に再購入させようという魂胆も、断末魔の悪あがきのように映る。新人ではFleet FoxesとBowerbirds、狐と鳥のデビュー・アルバムに心惹かれました。

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    • ◎ 輸入盤のリリース順(国内盤が出ているアルバムには *マークを付けました)

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く〔rewind〕シリーズです

    • Free Kittenの《Inherit》は〈気まぐれ子猫ちゃん〉からの再録です^^
                       *





    Un Dia

    Un Dia

    • Artist: Juana Molina
    • Label: Domino / Hostess
    • Date: 2008/10/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: Un Dia / Vive Solo / Lo Dejamos / Los Hongos De Marosa / ?Quien? (Suite) / El Vestido / No Llama / Dar (Que Dificil)


    MaréEditFleet Foxes




    InheritHymns For A Dark HorsePoint De Suture




    VillainaireThis Is It and I Am It and You Are It and So Is That and He Is It And She Is It and It Is It and That Is That.Everything That Happens Will Happen Today
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    コメント 4

    ぶーけ

    遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願い致します。^^

    Dégénération のあたらしいPVというか、続きというか、増補版というか、をみたら、
    myleneは人造人間ではなくて、宇宙から来た?
    面白かったです。^^
    by ぶーけ (2009-01-07 09:34) 

    sknys

    ぶーけさん、コメントありがとう。
    こちらこそ、2009年もよろしくね^^

    「続き」って、3rdシングル〈Si j'avais au moins...〉のPV?
    檻の中の動物たちを解き放って‥‥最後に「地球」が出て来ますね。
    ‥‥ということは、外界に生物が棲めなくなった未来の話なのかしら。

    〈Dégénération〉のMyleneはアンドロイドやサイボーグではなく、
    映画『スペース・バンパイア』(マチルダ・メイ!)みたいだと
    思っていましたが^^;
    by sknys (2009-01-08 00:02) 

    ぶーけ

    そうです。それでした。
    外界に棲めなくなった、というより、実験室に入れられた動物たちかと思いました。動物愛護とか自然保護とか、なのかなあ、と?
    背中から光線がでてるところは天使の羽みたいでしたね。
    「スペース・バンパイア」検索してみました。こういうのもありかも。
    by ぶーけ (2009-01-09 10:10) 

    sknys

    スペース・バンパイアは生命エネルギー(精気)を吸い取るけれど、
    ミレーヌは逆に生命エネルギーを人間や動物に与えるのかな?
    躰に白い包帯を巻いているのは、綾波レイのイメージでしょう^^
    日本のアニメ制作会社にPVを依頼したくらいだから、
    押井監督の『イノセンス』なども絶対に視ているはずです。
    by sknys (2009-01-09 23:13) 

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