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F A V O R I T E ー B O O K S 3 [f a v o r i t e s]

ミッツ ── ヴァージニア・ウルフのマーモセット(水声社 2008)シークリット・ヌーネス


ウルフ夫妻の友人ヴィクター・ロスチャイルドから譲り受けたマーモセットのミッツ。ヴァージニア・ウルフの愛読者でもある女性作家が『フラッシュ』に倣って書いた擬似半生記。ミッツ嬢が懐いたのは夫レナードの方なので、正確には「レナード・ウルフのマーモセット」とするべきなのかもしれませんが(原題は「Mitz: The Marmoset of Bloomsbury」)。1934年7月の出逢いから4年余りをロンドンのウルフ家やロドメル(サセックス)の「修道僧の家」で暮らしただけでなく、彼女は夫婦の旅行にも一緒に出掛けることになるのです #60



妖精王の帰還(ブッキング 2007)山岸 凉子


花とゆめに連載していた『妖精王』や『アラベスク』、神話をモチーフにした短篇のカラー扉絵やコマ割り原稿、予告カットなどを集成したカラー画集。新書館ペーパームーン叢書(1979)の新装改訂版だが、原本のモノクロ・イラストをカラー復元、カラー・イラストを新規収録。作者自身が色合いの修正を施すなど、復刊に際して細心の注意が払われている。オムニバス短篇の「幻想曲」(1977)は少女が夜空の月と湖面の月を剥がしてシンパルを鳴らすフィナーレが面白い。装幀は宇野亜喜良。樹村みのりとの対談がカットされたのは残念 #59



黒魔術の手帖(文藝春秋 2004)澁澤 龍彦


河出文庫(1983)の新装版が文春文庫で復刊されていた。表紙カヴァは「両性神バフォメット」からフランシスコ・ゴヤの「魔女達のサバト」に変更。活字も大きくなり読み易くなったが、最大の違いは河出文庫でカットされていた著者の「序」が巻頭に収録されていること。「クラスのいじめっ子を魔法でやっつけるにはどうすればいいでしょう」と著者に電話して来た中学生の読者もいたらしい。厨房にも読める平易さで書かれている。「解説」は大麻所持で逮捕された嶽本野ばら #58



水の女 ── From the Deep Waters(エディシオン・トレヴィル 2006)高宮 利行


幻の画集『水の女』(トレヴィル 1993)の復刻改訂版。川で溺死する「オフィーリア」、小舟の中で息絶える「シャーロットの女」、水辺に棲むニンフやマーメイド、男たちを誘惑して深海へ引き込むセイレーン、海から生まれるヴィーナス‥‥アーサー・ヒューズ、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウォーターハウス、クリムト、バーン=ジョーンズなど、ラファエル前派、世紀末象徴派、ロマン派の画家23人が描く44点を美しい画質で収録 #57



どちらかが魔女(講談社 2008)森 博嗣


犀川&萌絵や紅子シリーズの番外編8作を収録した短篇集。「ぶるぶる人形にうってつけの夜」と「刀之津診療所の怪」が1巻に収まって読めるのは、森ミステリ・ファンにとって格別の思いがある。フランソワとロベルト、西之園Mと小鳥遊練無の出逢いから再会までに20年以上の年月が流れている。西之園萌絵、佐々木睦子、大御坊安朋、木原恵郁子、喜多北斗、犀川創平、諏訪野‥‥「どちらかが魔女」は萌絵のマンションで開かれたパーティの席で、現実に起こったミステリが語られる #56



十角館の殺人(講談社 2008)綾辻 行人


綾辻行人のデビュー作(1987)が「YA!」シリーズに入った。新装改訂文庫版(2007)を底本とし、小・中学生が読めるように一部の漢字にルビが振られている。孤島で1週間合宿するミステリ研の大学生7人が次々に殺されて行く。クリスティの『そして誰もいなくなった』を下敷きにした「嵐の山荘」。「島」と「本土」を交互に章立てする構成。エラリイ、カー、ルルウ、ポウ、アガサ、オルツィ、ヴァン‥‥登場人物がニックネームで呼び合う趣向にトリックが仕掛けられている #55



ブッシュ・オブ・ゴースツ(筑摩書房 1990)エイモス・チュツオーラ


奴隷戦争で兄と生き別れになった7歳の少年(わたし)が「ブッシュ・オブ・ゴースツ」の中に紛れ込む。人間世界へ戻る道を探しながら24年間、幽鬼(Ghosts)の棲むジャングル(Bush)を彷徨う主人公。3つ子幽鬼、悪臭幽鬼、家なし幽鬼、強盗幽鬼、河幽鬼、醜悪な女幽鬼、クモ食い幽鬼、こびと幽鬼、「稲妻を放つ眼の母親」「超女性」、腕のない女幽鬼、死んだ従兄の幽鬼、幽鬼魔法使い、TVの手をした女幽鬼‥‥ナイジェリアの作家が描く幽鬼たちはグロテスクだが人懐っこい #54



昔のミセス(幻戯書房 2008)金井 美恵子


金井美恵子のエッセイ集は2部構成。表題の「昔のミセス」は1961年に創刊された「ミセス」(文化出版局)のバックナンバーを繙いて「40年以上の時代の間で変わったことと変わらないこと」を検証する。第2部は自作や、お気に入りの作家たち(野坂昭如、倉橋由美子、深沢七郎、澁澤龍彦、石井桃子、吉岡実、森茉莉)、映画、飼猫について語る。第1部にはエッセイ版『噂の娘』(講談社 2002)の趣きもある。カナイさんちの老猫トラーは2007年9月(?)に亡くなっていた #53



魔の沼(ブッキング 2004)天沢 退二郎


『オレンジ党と黒い釜』(1978)に続く「3つの魔法」シリーズの第2部。『魔の沼』(1982)は鈴木ルミの見た悪夢が現実化する。キワタ窪に出現した黒い沼を見張るオレンジ党のメンバー‥‥ルミ、李エルザ(ときの魔法)、由木道也、竜竜三郎、森コージ。中学生の田久保京志と失踪した妹のチサ、名和ゆきえ、西崎ふさ枝、鈴木先生(ルミの父)、源先生(古い魔法)、土神じいさん、「沼の王」と「沼の王の娘」、謎の白衣の男‥‥勧善懲悪の二元論が溶解してドロドロとトグロを巻く。和製ファンタジーのオレンジ党(金字塔?)です #52



犬身 k e n s i n(朝日新聞社 2007)松浦 理英子


狗児市のタウン誌『犬の眼』の編集者、八束房恵はバー〈天狼〉のマスター朱尾献によって白黒ブチの仔犬フサ(牡)に「犬身」する。幸せな「犬生」を全うした場合は朱尾へ魂を渡すという契約で。飼主は陶芸家の玉石梓。しかし犬好き女性と「化け犬」の蜜月は長く続かなかった。地名、人名、カクテル、児童文学(フィリパ・ピアス)、彫刻(ジャコメッティ)、音楽(イギー・ポップ)、小説(ヴァージニア・ウルフ)など、犬づくし。躰は人間、魂は犬の「種同一性障害者」の変身譚 #51



スカイ・イクリプス(中央公論新社 2008)森 博嗣


「スカイ・クロラ」シリーズの番外編8作品を収録した短篇集。本編の「僕」から一転して3人称の視点で描かれている。ティーチャがクサナギの子供を引き取って女と暮らす「ナイン・ライブス」。入院しているカンナミの許を訪れた草薙瑞季が、列車内で姉のクリタ射殺を回想する「ドール・グローリィ」。パイロットを退職した「彼女」がレンタカーを乗り継いでフーコの店へ行く「スカイ・アッシュ」‥‥幾つかの謎が明らかにされているけれど、却って混乱した読者もいるでしょう #50



スカイ・クロラ(中央公論新社 2001)森 博嗣


『スカイ・クロラ』はシリーズ(全5巻)の第1作目にして最終巻。時系列順では2作目の『ナ・バ・テア』(2004)が第1巻ということになる。「僕」(カンナミ・ユーヒチ)は兎離州(ウリス)基地に配属された戦闘機のパイロット。一般人ではなく「キルドレ」と呼ばれる、永遠に行き続けて決して大人にならない子供たちの1人だ。1人称単数の独白体なので、客観的な事実や世界観が明示されない。読者はボルヘスが指摘した「当てにならない話者」の言述の信憑性を疑うべき #49



S M I T T E N ── 子ねこに夢中!(グラフィック社 2006)レイチェル・ヘイル


女性動物写真家のネコ写真集。生後13週未満の仔猫82匹と格言・ことわざ45篇を収録。水玉模様の壷の中で睡るペルシャ、ピンクのハンモックで寛ぐハイランド、フェイクファーの上でゴロニャンするバーマン‥‥。毛布、ハンドバッグ、裁縫具、テディベア、宝石箱などの小道具、タイトルも洒落ている。「SMITTEN」は「smite」(強打する・魅了する)の過去分詞だが、「kitten」という「仔猫」が隠れている。余りの可愛さに何度か泣きそうになりました #48



バートルビーと仲間たち(新潮社 2008)エンリーケ・ビラ=マタス


ローベルト・ヴァルザー、フアン・ルルフォ、ホフマンスタール、ランボー、ベケット、カフカ、デュシャン、メルヴィル、ホーソン、サリンジャー、ボルヘス、ジュリアン・グラック、トマス・ピンチョン‥‥否定の文学、否定の作家。虚無に引き寄せられ、否定の迷宮に入り込んで書かなくなった作家たちの病いを「バートルビー症候群」と命名する。25年前に小説を出版した時のトラウマで筆を折った「わたし」が《目に見えないテキストに言及したメモをページの下の余白に書く》断章 #47



対極 ── デーモンの幻想(法政大学出版局 1985)アルフレート・クービン


カフカやカンディンスキーとも交流があったボヘミア生まれの幻想画家アルフレート・クービンが書いた唯一の小説。幼馴染みのパーテラに招待されて「ぼく」と妻は「夢の国」へ赴く。首都ペルレに住む奇妙な人人と碧眼の種族。支配者パーテラの隠された秘密。アメリカ人の億万長者ハーキュリー・ベルの移住と共に「夢の国」の原因不明の崩壊が始まる‥‥。村上春樹『世界の終わり‥‥』のネタ本ではないかと噂されていますが、その崩壊感覚は山尾悠子『ラピスラズリ』にも相通じる #46



さよなら僕の夏(晶文社 2007)レイ・ブラッドベリ


『たんぽぽのお酒』(晶文社 1971)から36年(原著では49年)、ダグラス・スポールディングが帰って来た。1929年10月、イリノイ州。ダグ、弟トム、チャーリー、ピート、ラルフ‥‥少年たちは「老人」に戦いを挑む。おもちゃのピストルで老ブレーリングを殺し、青い自転車でカルヴィン・C・クォーターメインの脚を折り、チェス盤の駒を盗み、都庁舎の大時計を止める。クォーターメインはリサベルの誕生パーティを画策。『さよなら僕の夏』は「少年と老人の物語」でもあるのだ #45



朝日のようにさわやかに(新潮社 2007)恩田 陸


恩田陸の第2短篇集。水野理瀬シリーズの番外編、会話体だけのミステリ、ショート・ショート、「異形コレクション」の書き下ろし、児童文学、稲垣足穂や中井英夫へのオマージュ、「ミステリーランド」の予告編、スプラッタ・ホラー、ドキュメンタリー風の奇妙な話など14篇を収録。バカバカしい設定なのに怖い「冷凍みかん」、怪人みどりおとこが少年少女を誘拐する「淋しいお城」、血みどろ少女たちの極限状況を描く「卒業」‥‥オンダーランドの本質は「ホラー」でしょうか? #44



シンジラレネーション(朝日ソノラマ 1982)大島 弓子


「シンジラレネーション」「ローズティー・セレモニー」「ヒーヒズヒム」「パスカルの群」の4篇+絵エッセイ(4頁)を収録した短篇集。大島弓子の作品はタイトル名が洒落ている。「F式蘭丸」「アポストロフィS」「いたい棘いたくない棘」「リベルテ144時間」‥‥。「?」はクエスチョンマーク(「クエッション」は間違った発音)、「!」は造語ですが「ビックラゲイションマーク」あるいは「ブッタマゲイションマーク」と呼ぶ。《じゃあ「!?」マークは何とよぶか / これこそ「シンジラレネイションマーク」なのです》(ユーミンおもちゃ箱)#43



ぶ〜けせれくしょん no.2(集英社 1984.1)内田善美大特集


ぶ〜け特別編集の「せれくしょん」第2号は内田善美特集号。「草空間」(草迷宮 PART2)「カラーイラスト自選傑作集」「内田善美Q&A」「内田善美論」を収録。『綿の国星』のチビ猫がフランス人形ならば、『草迷宮・草空間』の「ねこ」は日本人形という見立てでしょうか。水樹和佳、倉持知子、松苗あけみ、江口孝子が善美クンのプロフィールと「似顔絵」を描いているけれど、性別は巧みに曖昧化されている。彼女の最後の雑誌掲載作品は『星の時計のLiddell』ではなく「草空間」(110頁一挙掲載)なんですよ #42



F.S. SONNENSTERN(河出書房新社 2006)種村 季弘


シュルレアリスムと画家叢書「骰子の7の目」シリーズ(1976)の増補新版。『F・Sーゾンネンシュターン』は日本のオリジナル編集で、種村季弘氏が執筆している。1892年、リトアニア生まれの怪人画家が描く水溶性色鉛筆画は〈澁澤龍彦 幻想美術館〉でも、マックス・ワルター・スワーンベリと共に異彩を放っていた。眼、月、渦巻、鳥、骸骨、尻、乳房、蛇、虹‥‥奇妙な動物や異形の人間たちのパレード。1974年初夏、ベルリン西郊外の自宅で会見した時の顛末を語る月報「虹色の錬糞術師ゾンネンシュターン」に爆笑! #41


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