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コミック・オペラ(2 0 0 7) [r e w i n d]

  • ◎ FRIEND OPPORTUNITY(Kill Rock Stars)Deerhoof
  • 1人メンバーが抜けてトリオ編成に戻った「鹿爪」こと、Deerhoofの7thアルバム。かつて英THE WIRE誌で「不協和音色のキャンディ」(A candy coloured cacophony.)と評されたこともあったように、カラフルな10個のスウィート・キャンディにアヴァンポップな天然果汁やチョコレート、生乳ミルクが凝縮されている(10個目は10分以上の大飴玉!)。ポップなメロディ、可憐な少女ヴォイス、唐突なリズム・チェンジ(変拍子)、日本語、インプロヴィゼーション、予想を裏切る曲展開にハラハラ・ドキドキ。Deerhoofの音楽は破天荒のようで技巧的‥‥精巧に壊れている人形たちの真夜中の乱痴気パーティを想わせなくもない。〈ESPを信じなさい〉〈チョコ・ファイト〉〈紙マッチは狂人を求む〉など‥‥国内盤の邦題も面白い。着せ替え可能な6葉のカード・スリーヴ仕様。来日した際に行なわれたインストア・ライヴ(2007/1/20)も大盛況で愉しかったですよ。

  • ◎ WE KNOW ABOUT THE NEED(Anticon)Bracken
  • HoodのヴォーカリストChris Adamsのソロ・プロジェクト・アルバム。清冽な雨垂れのような美意識を継承しつつ、ヒップホップの方法論と実験的なサウンドを導入している。ヴォイス(メロディ)のメランコリックな叙情性とインスト・ノイズの混じり合いが儚くも美しい。トリップホップ風の〈Of Athroll Slains〉や〈Heathens〉。荘厳華麗なコーラス・ワークが映える〈Fight Or Flight〉や〈Safe Safe Safe〉。混沌としたノイズ世界から「乱調の美神」が立ち現われる〈Evil Teeth〉など‥‥短いインタールード、インスト、エフェクト3曲を挿んだ全11曲。いつか夢の中で見た残像のように、いつまでも記憶の中で木霊のように鳴り響く。深い森に湧く泉の冷たさ、濃密な酸素の馥郁、湿った腐葉土や花や葉の香り、木立や梢を吹き抜ける風の音、鬱蒼と繁った樹木が優しく躰を包み込む。Panda Bearのソロ作《Person Pitch》(Paw Tracks)よりも気に入っています。

  • ◎ SECURITY(Anti-)Antibalas
  • NYブルックリンの人種混成音楽集団の新作がEpitaph傘下のレーベルAnti-からリリースされた。ロックでもジャズでもファンクでもないアフロ・ビートが炸裂する。人力ヒップホップのドラミングが心地良い〈Beaten Metal〉。〈Filibuster X〉と〈Sanctuary〉は10分を越える長尺曲。基本的にインスト主体のブラス・サウンドだが〈Hilo〉や〈War Hero〉など、ヴォーカル入りの曲もある。初期衝動をソフィストケートした音楽に昇華。強靭で柔軟、クールで汗臭くなく、エレガントで洗練されている。トランペットのブレイクの後で印象的な主旋律に戻って来るところがスリリングな〈I.C.E.〉。まったりした空間の中に不穏な空気が隠されている〈Age〉。都会の灰色の空を切り裂き、アフリカの爽やかな風が吹き抜ける。John McEntire(Tortoise)のプロデュースで音響的にも素晴しい。

  • ◎ EXCELLENT ITALIAN GREYHOUND(Touch & Go)Shellac
  • 米インディ・ロック界の必殺録音請負人Steve Albini率いる3ピース・バンドShellacの7年振りの新作。グレイハウンド犬の群れを描いたモノクロ・イラストの紙ケースを外すと、バナナやリンゴ、グレープ、パプリカ、オレンジとレモンなど‥‥カラフルな果物や野菜に囲まれた1頭のイタグレ犬が姿を現わすという洒落た趣向。流行りの見開き紙ジャケ仕様のCDで、アナログ盤のカヴァは手刷りのシルクスクリーンらしい。ギター、ドラムス、ベースという贅肉を削ぎ落とした強靭なサウンド、研ぎ澄まされた怒りヴォイス、最小ユニットにして最強トリオの音楽は黒いダイヤモンドの輝きと硬度を誇る。《1000 Hurts》(2000)のアナログ・ボックスの中には同内容のCD(オマケかよ?)が1枚入ってましたが、今回も封入されているそうです。

  • ◎ KALA(XL)M.I.A.
  • カラオケ・パーティの余興で自作歌詞を披露すれば「替え歌」だが、既存曲のバックトラックで自由にラップ、勝手なメロディを乗せて歌えばヒップホップということになる。借用したブレイクビーツをサンプル〜ループ化して全く別の曲に改変してしまうのがヒップホップの方法論。他人の褌で相撲を取っているようで、伝統的な国技の土俵から逸脱した異種格闘技に変質している。ギターやピアノが弾けなくてもターンテーブル上のレコードを擦るだけで成立する「音楽」‥‥必要なのは音楽的なセンスとリズム感、声を大にして言いたい切実なメッセージがあるかどうかである。M.I.A.は直観の赴くままに行動して、刺戟的なストリート・ミュージックを追い求める。大航海時代の冒険者たちのように。ジャマイカ、インド、アフリカ‥‥土俗的なリズム、子供たちの歌声、ストリングス。雑多で安っぽく、キッチュで騒々しいけれど、夜店やカーニヴァル・ナイトの喧噪のような祝祭的な愉しさが爆発している。Bjorkの手に入れられなかったものをM.I.A.は獲得したのだ。

  • ◎ MARGARITA Y AZUCENA(Los Anos Luz)Mariana Baraj
  • 女性パーカッション奏者の《雛菊と百合》は全曲カヴァ集ながら、チリ、ボリヴィア、アルメニア、ケニア、キューバ、母国アルゼンチン‥‥という風に、第三世界の楽曲を好んで選曲・アレンジしているところに強い意志を感じる。フリー・インプロヴィゼーション風の攻撃的な〈Maldigo Del Alto Cielo〉、7拍子の〈Agua Negara〉、歪んだアナログ・シンセが暴れる変則ビートの表題曲〈Margarita Y Azucena〉、Tete Espindolaのヴォイス・パフォーマンスを想わせるBobby Mc Ferrinのカヴァ曲〈Invocacion〉、アカペラ多重唱の〈Dios Me Ha Pedido Un Techo〉‥‥。プロデュースはLisandro Aristimunoで、3面デジパック仕様のジャケット・デザイン(スリーヴ、歌詞カード、CD)も美しい。

  • ◎ COMICOPERA(Domino)Robert Wyatt
  • ワイアット翁の4年振りの新作はオペラを模した3部構成(インスト3曲を含む全16曲 60分)。Brian EnoやPaul Weller、Phil Manzaneraなど、旧友ミュージシャンの参加は変わらないが、《Cuckooland》(2003)の落ち着いた雰囲気を裏切る能動的なアルバムになっている。Monica Vasconcelosが前半を歌うワルツ曲〈Just As You Are〉や「美しい日」と歌われる皮肉なタイトルの〈A Beautiful War〉‥‥。ロック、フォーク、カントリー、ジャズ、ラテンが異和感なく並ぶ。Enoのヴォイスと共演した〈Out Of The Blue〉以降の展開(第3幕)が素晴しい(3幕オペラというよりも「序破急」という言葉の方が相応しいかも?)。R. Wyattの音楽は「半抽象絵画」だと思って来たけれど、《コミックオペラ》のスリーヴも、その通りのコラージュ・アート(Alfie Benge)で飾られている。

  • ◎ LES HEURES DE RAISON(Matamore)Soy Un Caballo
  • 「牛ジャケ」や「猫ジャケ」だけではなく「馬ジャケ」のアルバムにも隠れた名作(The Doobie BrothersやByrdsなど)が少なくない。「私は馬」という名前のベルギー男女デュオのデビュー作にも馬のイラスト(正確には馬頭人身の馬男と少女だが)が描かれている。エレクトロニカ版のThe Bird & The Beeかな?‥‥Juana Molina似のAurelie MullerとDevendra Banhart似のThomas Van Cottomのヴォイスが優しく包む。ダンサブルで開放的なアメリカ種の「トリハチ」に較べて、ポスト・ロック風の「ワタウマ」は耽美度が高い。実写とアニメを合成したファンタスティックな映像‥‥〈Volet〉と〈Au Ralenti〉2曲のPV(Episode 1〜4)が彼らの世界を雄弁に物語っている。The High LlamasのSean O'Haganがプロデュース。何故かBonnie Prince Billyもゲスト参加。見開き紙ジャケ仕様で、馬男と少女のイラスト・ポストカード2種がオマケに付いていました。

  • ◎ KISMET(Red Ink)Jesca Hoop
  • 「トム・ウェイツが絶賛する米の新人女性歌手」──古くは「視聴室」〜「今月の10枚」というタイトルで月間ベスト・アルバムを紹介して来た某全国紙のレヴュー記事に輸入盤が取り上げられるのは異例のことである。国内盤が暗黙の了解事項の「for your Collection」(ジャズ&海外ポピュラー)欄に1枚の輸入盤が選出された(2007/12/27)。牧歌的でロマンチックな夏の歌が突如として仄暗い世界への裂け目を露わにする〈Summertime〉を聴くだけで鳥肌が立つ。Jesca Hoopは聖少女の輝きと魔女の暗黒面という相反する2つの相貌を併せ持つ。永久に止まらない回転木馬に乗っているような眩暈を覚える〈Seed Of Wonder〉、アクースティック・ギター弾き語りの〈Enemy〉、スクラッチ・ノイズの中で再生される古い映画の主題歌を想わせる〈Silverscreen〉、Calexico風の乾いたギター・サウンドが無国籍音楽を演出する〈Money〉‥‥。

    オルゴールの螺子を巻くとKate Bush直系の変幻自在のヴォイス&コーラスが妖精のように宙を翔け回る〈Dreams In The Hollow〉。津軽三味線の吉田兄弟が参加したハイブリッド・ロック〈Intelligentactile 101〉、絵本『孫悟空の冒険』にインスパイアされたという〈Havoc In Heaven〉、M.I.A.嬢みたいに大胆にヒップホップ〜ラップしてみせる〈Out The Back Door〉。Tom Waitsが「ジェスカ・フープの音楽は4つの面を持つ硬貨である。古の霊魂、黒い真珠、善き魔女、赤い月。彼女の歌を聴くことは夜の湖で泳ぐ体験に似ている」(Jesca Hoop's music is like a four sided coin. She is an old soul, like a black pearl, a good witch or a red moon. Her music is like going swimming in a lake at night)と賛辞を贈ったJesca Hoopの恐るべきデビュー・アルバムである。

  • ◎ UNTRUE(Hyperdub)Burial
  • ダブはレゲエからヴォイスを消したカラオケに、エコー&ディレイ処理加工を施したインスト音楽である。そのアナーキーなサウンドが暴力的に言葉を剥奪された人間の抵抗と絶望感を想像させる。1979年にDennis Bovell(Matumbi)のプロデュースした2枚のアルバム──The Pop Group《Y》とThe Slits《Cut》が当時のニュー・ウェイヴに与えた影響は計り知れない。その後、英国で一世を風靡するグラウンドビート〜トリップホップ〜ドラムンベースも、進化したダブの一形態と捉えることも可能だ。ダブステップと呼ばれる音楽もダブ進化形の最新スタイルで、Burialのデビュー作はTHE WIRE誌の年間ベスト・アルバム1位(2006 Rewind)に選ばれた。初期Massive AttackやTricky、Goldieの遺伝子が継承された新世紀のダブ・ミュージック。ソウルフルな骸骨男とファム・ファタルな女ゴーストが暗黒冥界から立ち現われる2ndアルバムは妖しく気味が悪い。

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    新年恒例の「年間ベスト・アルバム 2007」はサイド欄でリアルタイムに紹介した愛聴盤の中から5枚、音楽誌や新聞誌のレヴュー記事などを参照して入手したアルバム5枚という構成。「FAVORITE ー ALBUMS」のレヴューをブローアップ(400字前後)して、後者は新たに書き下ろした。半分が既出のアルバムでは新鮮味に乏しいかもと思ったわけでもないのだが、定番(?)のNeil Young、Joni Mitchell、PJ Harvey、Devendra Banhartなどの新譜を外してスニンクスらしさを出してみた。選出した10枚の中で国内盤がリリースされているのは6枚のみ(Mariana BarajとBurialは直輸入盤仕様)。2007年の最大の発見はJesca Hoop嬢でしょうか。2000年以降の年間ベスト・アルバムを独自に集計している面白いサイト「Metacritic」を見つけました。THE WIRE誌の「2007 Rewind」はSonic Youthのゴシップ・ページにあります。

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    • ◎ 輸入盤リリース→入手順 ● Compact Disc規格外のCCCDは除外しました

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く「rewind」シリーズです

    • アルバムのリンク先は米Amazon.com、記事下のサムネイルはAmazon.co.jpにしていますが(非アフィリエイト)、該当CDや画像のない場合は、その限りではありません。アーティストは基本的に公式サイトにリンクしています

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    Comicopera

    Comicopera

    • Artist: Robert Wyatt
    • Label: Domino
    • Date: 2007/10/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Stay Tuned / Just as You Are / You You / A.W.O.L. / Anachronist / Beautiful Peace / Be Serious / On the Town Square / Mob Rule / Beautiful War / Out of the Blue / Del Mondo / Cancion De Julieta / Pastafari / Fragment / Hasta Siempre Comandante


    Friend OpportunityWe Know About the NeedSecurity




    Excellent Italian GreyhoundKalaMargarita y Azucena




    Les Heures De RaisonKismetUntrue


    コメント(6)  トラックバック(2) 

    コメント 6

    yubeshi

    スニンクス大納言らしさって・・・・渋いのばかり選んでるんだから(苦笑)
    ビョークも入らなかったのは意外でした。今年は被るかなと思っていたのですが。
    多分、私の選ぶのは大納言が選択から外したものだらけなると思います(笑)
    by yubeshi (2008-01-03 15:51) 

    sknys

    yubeshiさん、コメントありがとう。
    嫌いな音楽評論家の「年間ベスト10」とは被りたくない!
    ‥‥というバイアスが入っています^^

    冒険家のM.I.A.に較べると、Bjorkは実験工房の主任研究員みたい。
    Antonyと共演した2曲に馴染めないだけですが^^;
    Panda BearよりはBracken、トリハチよりはワタウマかな?
    by sknys (2008-01-04 00:24) 

    モバサム41

    sknysさんも「ベスト・アルバム」やってたのすっかり忘れてました(マジで…笑)
    しかし、この選択は狙い過ぎでオーバープロデュースだな~
    …実は、知らんのばかりなんだけど。
    by モバサム41 (2008-01-25 01:53) 

    sknys

    モバサム41さん、コメントありがとう。
    ミュージック・マガジンの「年間ベスト・アルバム」を擦っても面白くない。
    加齢臭が漂うMMよりも、remix誌の方が肌に合っていたりして‥‥。

    実は高橋健太郎の「ベスト・アルバム10」を意識しています。
    お薦めはJesca Hoop嬢のデビュー・アルバム。
    M.I.A.に「犬神金田一、犬神金田一♪」と聴こえる曲があるんですよ^^;
    by sknys (2008-01-25 21:26) 

    yubeshi

    今更ながらJesca Hoop買いました。
    うん、確かにこのアルバム、良く出来てますね。
    Kate Bushと言うよりはElizabeth Fraser・・・・Tori Amos・・・・色々と名前を出したくなっちゃうけど、あんまり比較とかしないで、素直にこの人の個性を楽しみたいです。
    かなりスタジオワークに凝ってるけど、ライブとかどうなんだろう、それも気になります。
    by yubeshi (2008-02-10 19:46) 

    sknys

    メチャ嬉しい!‥‥アルバム《Kismet》を買ってくれて。
    Jesca Hoopを紹介した甲斐があったというものです。
    「ブロガー冥利」に尽きるなぁ^^

    1曲毎に凝ったアレンジが施されているけれど、ラスト2曲を除いて
    Jesca Hoopの生ギター(余り上手くない!)が通奏している。
    ライヴも彼女のギター弾き語りが中心だと思います
    (ピアノに耽溺したTori Amos嬢を間近で観た時はビビリましたが)。

    お気に入りは〈Dreams In The Hollow〉‥‥100回以上聴いているかも。
    「ホ〜オ、ホ〜オ、ホ〜ホォ〜ホオロウ(hollow)♪」とフクロウ化して、
    ジェスカと一緒に歌っています^^;
    by sknys (2008-02-10 23:52) 

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