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ゴールド・フラップ(2000) [r e w i n d]

  • ◎ HYBRID(Red Note)Kletka Red
  • オランダとリトアニア、The ExのギタリストAndy MoorとNe ZhdaliのヴォーカルLeonid Soybelmanを中心とした4人組の2ndアルバム。『異種混合』というタイトルらしくレンベティカ風の9拍子で始まり、変則ハード・コア、ダウナーな倦怠ロック、ツインギターが2重螺旋のように絡むThe Ex風のインプロヴィゼーション、フリーキーな伴奏で歌われるトラディショナル・ソングなど、ハード・エッジな痙攣ノイズ・ギターと内省的な脱力ヴォイスが辺境ロックを産み出す。インストとヴォイスが乖離しているようで、相互干渉している。英米至上主義のロック・マーケットから遠く離れたマージナルな音楽、あるいは捩じれた境界のワールド・ミュージック。The Exは今も健在だが、活動停止中(?)のNe ZhdaliのファンとしてはSoybelmanの声が聴けるだけで嬉しい。

  • ◎ MOLAM DUB(30 Hertz)Jah Wobble & The Invaders Of The Heart
  • Jah Wobbleは自主レーベル30 Hertzで地道にダブ〜ワールド・ミュージックを追求しているが、某ラテン音楽誌で「ジャー・ワブル(元ジョイ・ディヴィジョン)」と紹介されるなど、その真摯な活動に反して認知度は低い。《Molam Dub》はラオスの大衆音楽モーラム(Molam)に挑戦している。と言っても主役はモーラムの男女歌手たちで、サウンドこそダブ的な音像ながら、Jah Wobbleは黒子に徹している。世界で最も貧しい国の1つ。しかもヴェトナム戦争で国民1人当たり史上最大の爆撃を蒙ったという(1973年、アメリカは東ラオスへの絨毯爆撃を止めた)。それにもかかわらず、モーラムは泣きたくなるほど美しい。恐らくJah Wobbleも深い感銘を受けたはずだ。凡百のトリップホップも鼻白む濃密なダブ空間が花開いている。

  • ◎ AGAETIC BYRJUN(Fat Cat)Sigur Ros
  • 濃紺のスリーヴに銀色で描かれた胎児、その背中に一対の小さな翼が生えた天使のイラスト。グリーティング・カード風の2つ折りジャケを開くと、左右のスリットに歌詞ブックレット(2辺が丸くカットされている)とCD本体が挟まれている。アイスランドのSigur Rosは後に「スロー・コア」と呼ばれることになる、壮大な原風景を幻視させるプログレとも疲弊した精神を癒すヒーリング・ミュージックとも形容し難い音楽を繰り広げる。脆弱そうで強靭、浮游感と重力、気持ち良さそうで悪い、BGMとして聴き流せそうで耳の奥に異物が残る‥‥地上に舞い降りたキモ可愛い堕天使たちの音楽かもしれない。アイスランド語で歌われているので歌詞内容は全く分からないけれど、20世紀の終わりに、この種の天上界を想わせるアンジェリックな音楽が脚光を浴びたのは興味深い。やがて訪れる「未来」を暗示していたのだろうか。

  • ◎ POR POUCO(Abril)Mundo Livre S/A
  • Mundo Livreはメンバーを一新して全く別のグループになってしまったのか!?‥‥と疑心暗鬼に囚われる裏ジャケの写真(黒人歌手+グラサン美女2+白人男2)。新メンバーの用心棒となってしまったオチ(CDトレイのライヴ風景)に笑う。4thアルバムは予想通り「マンギ・ビート」は後退し、サウンドもメロー&マイルド化。Fred 04(Zero Quatro)の咆哮ハード・コアも控え目だが、それらを補って余りあるのは多彩なカヴァ曲‥‥Jorge Benjor〈Mexe Mexe〉、Manu Chao〈Minha Galera〉、Antonio Carlos Jobin〈Garota De Ipanema〉。何故かTom Zeの伝言メッセージも。BiDのプロデュース、Mario Caldato Jrのミックスも効いている。映画監督トリビュート・シリーズ第2弾はスタンリー・キューブリック。小型ギターCavaquinhoと殆ど人器一体化している04、Stereolabと通奏低音しているかのような脱力ブヒョブヒョ・ファンク、「soul - punk - dub + samba」。ラストを飾る解体〜脱構築された「イパ娘」にオリジナルの面影はない。

  • ◎ OLIVIA(Trama)Olivia
  • Oliviaと言ってもシドニー五輪(2000)の開会式で復活したOlivia Newton-John(閉会式のKylie Minogue嬢の方が好みだが)のことではないし、米Elephant6のOlivia Tremor Controlでも、JーPOPのOliviaとやらでもない。同じ南半球でも底抜けのオージーとは違って南米ブラジル産のOlivia嬢は、レオタード+レッグウォーマ姿のエアロビではなく70年代風テイストを加味した最新衣裳を纏って淑やかにデビューする。古き良きロックの香りとトリップホップの融合──この誰も思いつきもしなかった一見相容れないような異種交配組み合わせ!──という意表を衝くアイディアが刺戟的で蠱惑的な見知らぬ世界へリスナーを誘う。「ファンキーな懐かしロックだな」なぁんてタカを括っていると次第にヤバくなり、知らぬ間にトリップホップの泥濘に両脚を捕らわれて「底なし沼」にハマり込む。そして貴方はどうしようもない拘泥感と陶酔感に襲われて眩暈を起こす。

  • ◎ HOT RAIL(Quarter Stick)Calexico
  • Calexicoは、そのグループ名(California+Mexicoの造語)からも察せられるように、アメリカとメキシコの境界線上の無国籍音楽を標榜するJohn ConvertinoとJoey Burnsの2人組。彼らのアコーディオンやオルガン、ゲスト・ミュージシャンのトランペットやヴァイオリンが哀愁を掻き立てる。マリアッチ風のインスト・ワルツ、架空のマカロニ・ウェスタン、8分近いディープな長尺曲、Mau Mauを想わせる幻想的なインストなど、砂漠を走るロード・ムーヴィのような風景や、埃っぽい風が吹き抜ける荒涼とした原野を描き出す。限定ユーロ盤の《Hot Rail》(City Slang)はアルバムCDと、未発表3曲とPVや写真を収録したエンハンスト仕様のCDS〈Crystal Fronter〉がハードケースに入っていて、ジャケ画のイラストも鉄道線路の溶接工から口に銜えたタバコに火を点ける女性に変更されている。

  • ◎ FELT MOUNTAIN(Mute)Goldfrapp
  • GoldfrappはWill GregoryとAlison Goldfrappとの男女ペアから成るユニットである。フランケンシュタイン博士が貴方の首を欲しがっているというゴシック・ロマン風の〈Lovely Head〉は、ウス気味悪いB級ホラー映画としてではなく、ファンタスティックな夢物語のように歌われる(ゴシック趣味はトリップホップに欠かせない要素の1つだし、Portisheadを揶揄しているような愉しさもある)。〈Deer Stop〉はイコライザ加工されたヴォイスがBjork風の捩じ曲がった幻惑的世界にリスナーを否応なく引き摺り込む。架空の映画のサントラのような非日常感。幽玄なる白昼夢。Goldfrappの手に掛かると、ムード音楽もヨーデルもジンタも口笛も、この世のものではない別世界への不思議な旅を可能にする魔法の小道具と化す。ポスト・トリップホップ!──Goldfrappのデビュー作は密かな口コミで今後、長く語り継がれて行くだろう。あたかも、失われた惑星の記憶を無意識に視覚化してみせたゼナ・ヘンダースンの「子供たち」のように。

  • ◎ LIFT YR. SKINNY FISTS LIKE ANTENNAS TO HEAVEN(Kranky)GY!BE
  • カナダ発の大所帯バンドの2ndアルバムはCD2枚組の大作となった!‥‥と言っても、全4曲87分23秒なのだが。ポピュラー音楽のフォーマットに染まっているリスナーは、もう少し収録時間を短縮してくれればCD1枚に収まったのにとか、1曲が長すぎるという疑問の声を上げるかもしれない。しかし、敢えて2枚組に拘泥った理由を穿鑿するよりも、〈Storm〉〈Static〉〈Sleep〉という20分以上の長尺曲プラス14分半の〈Antennas To Heaven〉という構成を考えてみた方が良いだろう(上記の曲目はクレジットされていない)。静から動へ、ゆったりと流れる時間。轟音ギターが空間を引き裂く刹那、大きな波動に揺さぶられる。1曲が組曲風にドラマチックに展開するので冗長な感じはしないし、インストならではの寡黙な映像世界がパノラマとなって目の前に広がる。Godspeed You! Black Emperorの音楽は目を瞑って観る「映画」である。

  • ◎ WILL SAVE US ALL!(Chicks On Speed)Chicks On Speed
  • ドイツの3人娘のデビュー・アルバム。イントロ・ノイズの〈Stop Records Advert〉に続く〈Give Me Back My Man〉はThe B-52'sのカヴァ曲、ヒップホップ化したThe Slitsみたいな〈For All The Boys In The World〉、舌っ足らずのディスコ・ナンバー〈Glamour Girl〉、Kingdom Scum風ノイズ爆発の〈Ped Stang(Re Issue)〉、キラキラ星の替え歌〈Little Star〉など‥‥。前半は琴姫七変化みたいな変わり身の速さに翻弄されますが、女性版Beastie Boysという形容が一番分り易いかもしれません。世紀末の徒花姐さんたちかと想っていたら、その後、自己レーベルからLe Tigreのアルバムをデストリビュートしたり、Tina Weymouthをゲストに迎えて〈おしゃべり魔女〉の完コピを演ったり‥‥Chicks On Speedはライオット・ガルーとヒップホップ〜ダンスフロアを結ぶ女たちの中継基地に成りつつあります。

  • ◎ GOURMANDISES(Requiem)Alizee
  • 20世紀最後の月に店頭に並んだAlizeeちゃんのデビュー・アルバムはピンクの縁取りも可愛い、ロリーポップな外装の刺戟的なキャンディだった(君は初回デジパック盤を持っているか?)。先行シングルの豪速球〈Moi...Lolita〉、彼女のテーマ曲とも言える第2弾シングル〈L’Alize〉、J・ボンド・ガールへの憧れを歌った〈J.B.G.〉(007のテーマソングを引用)、アラビック風オーケストレーションの霧の中でクールな低音ラップを披露する〈Mon Maquie〉、Mylene Farmerの「精霊」が乗り移ったかのような〈Parler Tout Bas〉、仔猫ちゃんの鳴き声と一緒にコミカルな愛の呪文を唱える〈Abracadabra〉‥‥。全作詞を担当したMFも搖れ動く10代の少女の気持ちに成り切って書いているようだし、ヴァラエティに富んだLaurent Boutonnatの楽曲も完成度が高い。例によって国内盤が出たのは確か半年以上も後のことだったと記憶するが、20世紀末に突如として降臨した新ミレニアム・アイドルの存在は21世紀への架け橋として、儚い七色の虹のように映ったのだ。

                        *

    20世紀最後の「年間ベスト・アルバム」のためにリスト・アップした15枚のアルバム(ブログでは10枚に減らした)を眺めていて、全体的にダーティで暗いなぁ‥‥と、今さらながら溜息をつく。2000年の〈Tsunami〉と言えば、反射的にMarianne Nowottny嬢の「呻き声」が生々しく蘇ってくるのだから。彼女の《Afraid Of Me》(Abaton Book 1999)は次回に紹介しようかな(ルックスは可愛いのですが、声が‥‥)。別段意識して選んだわけでもないのに殆どのアルバムが、まるで示し合せたかのように同じ色調でカラー・コーディネイトされている。これが世紀末的世界の反映なのだろうか。天候で表わせば一天俄かに掻き曇り、今しも大嵐になりそうな暗雲立ち籠め、最早一刻の猶予も儘ならぬ不気味な一触即発の非常事態。時折、雷鳴が轟き、稲妻が漆黒のカーテンを引き裂いたりして‥‥。あたかもベックリンやベルギー象徴派の風景画のような暗く沈み込んだ色彩です。

                        *

    • ◎ 輸入盤リリース→入手順 ● Compact Disc規格外のCCCDは除外しました

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行く「rewind」シリーズです

    • アルバムのリンク先は米Amazon.com、記事下のサムネイルはAmazon.co.jpにしていますが、該当商品や画像のない場合は、その限りではありません。アーティストは公式サイトにリンクしました

    • 最後のAlizeeちゃんは〈フレンチな娘たち〉からの再録ニュー・ヴァージョンです。2007年11月に復帰作が出るそうですが‥‥。

                        *



    Felt Mountain

    Felt Mountain

    • Artist: Goldfrapp
    • Label: Mute
    • Date: 2000/09/19
    • Media: Audio CD
    • Songs: Lovely Head / Paper Bag / Human / Pilots / Deer Stop / Felt Mountain / Oompa Radar / Utopia / Horse Tears


    HybridMolam DubÁgætis Byrjun




    Por PoucoOliviaHot Rail




    Lift Your Skinny Fists Like Antennas To HeavenWill Save Us All!Gourmandises

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    コメント 4

    yubeshi

    やはり大納言はゴールドフラップは1stまでですか・・・・スーパーネイチャーすごく好きなんだけどなぁ・・・・。
    知っているのもあれば、全然知らないのもありますが(どこで調べてるんですか!?)微かなエロが隠し味になっているみたいですね。
    by yubeshi (2007-10-03 21:16) 

    sknys

    yubeshiさん、コメントありがとう。
    余り言いたくないのですが、《Black Cherry》(CCCD)を買いました。
    ヴィジュアル的にはOKですが、サウンドが‥‥。

    〈Lovely Head〉のオフィシャルPVに失笑!
    サイドに貼った〈Paper Bag〉はファンが再編集したものです。
    英語版WikipediaにAlison Goldfrappは37歳という噂が載っていました^^
    by sknys (2007-10-04 02:33) 

    yubeshi

    新作聴きましたか?
    前作の路線よりはsknysさん好みかなって思いましたが(私は両方ともOK)
    by yubeshi (2008-03-18 10:14) 

    sknys

    Roisin Murphyの2ndソロは肩透かしだったなぁ^^
    Goldfrappのニュー・アルバムが、○ECOfanに入荷していない!
    超円高なのに、差益分が輸入CDの価格に反映されないのは不可解ですね。
    食料品は一斉値上げの大合唱なのだから、輸入品だけでも値下げして欲しい。
    まだ未購入ですが、聴いて気に入ったらサイドバーに貼っておきます^^;
    by sknys (2008-03-18 23:12) 

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