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ミシガンからの挨拶状(2 0 0 3) [r e w i n d]

  • ◎ LOOSE FUR(Domino)Loose Fur
  • 随分と遠くまで来ちゃったなぁ‥‥まるで世界の涯ての縁側で聴えてくる調べのように、不穏と長閑さ、諦念と幽かな希望、絶望と一握りの夢が交錯→相殺する不思議な時空に佇む、行き止まり(デッドエンド)。Loose Furも9・11以降〜イラク戦争後〜21世紀最新型‥‥上に戴く修飾語は何でも良いけれど、行き着くところまでイッちゃった境界線上の音像──北極圏のオーロラに映し出された「現世」‥‥この先には何も無いのかもしれない。この辺境の地で奏でられる風の音は万人に聴こえるものではないにしても──100人1人くらいは凍える躰の中の奥深いところまで沁み入って来る?──、鎖された氷土の中の貴石のように作用するだろう。Glenn Kotche / Jim O'Rourke / Jeff Tweedyから成るトリオのLFは音数も少なく、静謐かつノイジーなサウンド。アルバム・サイズで全6曲ということからも分かるように、多くは長尺曲‥‥それも歌→インスト(後奏を長く録る)という風に展開される。

    ロック / ブルーズ形式は、間奏(アドリブ)が仮令どれだけ長かろうと必ず歌(Aメロ)に戻って来て大団円を迎えるが、LFは逝ったまま2度と還ることはない。そこに、ある種の潔さと喪失感、突き抜けようとする意志の強さと無力感、冒険心と戸惑い、無節操と投げやり、無鉄砲と悔恨、思慮深さと躊躇い、諦観と孤立感、突撃精神と終焉‥‥が居心地悪く同居している。J. O'Rourkeのノイジーなギターが人懐っこく纏わりつき、疲弊した躰を愛撫する。具体音が音楽以外の「現実」を外挿し、躓かせる〈So Long〉は躰がスローモーションで解体して行くようなファンタスティックな曲。今、この時代に生きていることは果して一瞬の「僥倖」なのか、それとも「悲惨」窮まりない牢獄なのか殆ど判らなくなって途方に暮れる「ポスト・ロック風の心象風景」?‥‥J.Tweedyの曲は更にダウナーで内省的だ。アクースティック・ギター(アルペジオ)やバンジョーの軽やかな音色が全体をソフトに見せ掛けているとはいえ、内面→外部は奥深い霧のヴェールに包まれている。依然として「世界」は謎に満ち、人類の未来への方向性も見え難くなって来た。暗黒の宇宙へ向けてロケットを飛ばすべきなのか、それとも地底奥深く掘り進んでき行くべきなのか‥‥夜中に大声で叫びたくなる時もあるが、それさえも今は封じられている。

  • ◎ EMILIE SIMON(Barclay)Emilie Simon
  • 「裸の少女の背中に蝟集した真っ赤な50匹のテントウ虫(模造品!)」はキモ可愛いか?(擽ったいか、それともカ・イ・カ・ンか?)‥‥このシュールなCDスリーヴを一目見た瞬間、Emilie Simonのデビュー・アルバムはジャケ買いなのだ。しかも典型的なフレンチ娘のロリータ声に加えて、作詞・作曲、演奏(ギター&ピアノ)、そして自らプログラミングも手懸ける才女ぶり。これだけ揃えば悪かろうはずがない。トリッキー以降のダウンビート〜エレクトロニカ(音響派)にEmilie嬢のロリータ・ヴォイスが気持ち悪いくらいにハマっている。ヴォイスに歪み加工を施した〈Secret〉はGoldfrappみたいだし、英語詞の〈Blue Light〉はKate Bushを、Perry Blakeとデュエットした〈Graines D’Etoiles〉はThom Yorkeと共演したBjorkを想い起こさせる。Iggy Pop / The Stoogesの〈I Wanna Be Your Dog〉には、Lou Reedの〈ワイルドサイドを歩け〉をカヴァしたVanessa Paradisに相通じるパンキッシュな感覚も窺われる(ライヴァル意識?)。

  • ◎ AHORA(Asterisco)Sebastian Escofet
  • 歪んだタイヤ、折れたスポーク、錆び付いた駆動部‥‥白地をバックにした一輪車のスリーヴから中身を類推するのは難しい。4つ折りした1枚の歌詞カードと思いきや、開いてみると3面立体の内側に歌詞がプリントされているではないか!‥‥アルゼンチンのインディ・レーベルならではの凝った仕掛けに頬も緩む。ドリーミングな曲調、優しい囁きヴォイス、サウンドも洗練の極みで、しっかり音響派している。R・フリップ先生の門下生Fernando Kabusackiや若きマルチプレーヤEzequiel Borra君もギターやキーボードでゲスト参加。男性版Juana Molinaみたいですが、彼女よりもポップでロックへの親和性が高い。捻くれUKポップ愛好家やネオアコ好きの少年少女も気に入るんじゃないかな。甘酸っぱい青春の記憶が甦る‥‥ちょっとルクセンブルグ王(Simon Fisher Turner)を思い出しちゃった。90年代はブラジル音楽が圧倒的に面白かったけれど、「新世紀アルゼンチン」の時代到来?

  • ◎ LONELY MOUNTAIN(Lifelike)Mugison
  • 自己解体したNeil Youngと軟体生物化したBeckが秘密の地下壕でデュエットしているようなMugisonは、Dr.RockitことMatthew Herbertが見い出したアイスランドの宅録アーティスト。音響派、エレクトロニカ、ポスト・ロック等‥‥色々なレッテル貼りはどうで良くて、1曲目のイントロからして躰中を戦慄が走り抜ける。交通網の発達やインターネットの普及で地球も狭くなったと言われて久しいけれど、まだまだ無名の人たち、未知の才能が埋もれているんですね。CDパッケージも実にユニーク──2つ折の「紙ジャケ」を赤い糸で縢り、インナースリーヴ(12頁)を黄色い糸で綴じ込み、マジックテープで留めたハンドメイド仕様(限定1万枚!)。彼と彼の家族(母親と恋人)がミシンで手縫いしたというのだから2度ビックリ!‥‥1枚1枚微妙に異なるステッチの形状(幅・ライン)や色糸(赤白黄)の違いをCDショップで見比べているだけで愉しくなって来ます。

  • ◎ CUCKOOLAND(Hannibal)Robert Wyatt
  • 「ここでも」「あそこでもない」‥‥という副題の付いたの2部構成(Part1と2の間に30秒間の「耳休め」がある)。8曲ずつ全16曲 75分半の、アナログ盤なら2枚組の大作になるはずだが、全く気負ったところなく淡々と綴られて行く。ジャズ的な意匠を纏っていても決してジャズにならない音楽はJoni Mitchellのアプローチにも似ている。少ない音数(トランペット、サックス、キーボード、パーカッション‥‥)の中で中性的に揺蕩うヴォイス。ヒロシマ / ナガサキ / コンニチワ / アリガトと日本語で歌われる〈Foreign Accents〉は何度聴いても目頭が熱くなる。かつて日本人が日本語で、このような歌を1度でも歌ったことがあっただろうか?‥‥歌詞内容がサウンドを暗鬱なトーンに変えてしまう。Brian EnoやPaul Wellerの客演も心憎い。菊地孔成が、大戦中に大流行したスウィング・ジャズは「戦意高揚音楽」、60年代ロックは「厭戦音楽」だったと発言していたが、Wyatt翁の非ジャズ(ロック)は「非戦音楽」だろう。自分で雛を育ることをしない〈カッコー夫人〉の孤独と悲しみ‥‥『カッコーの国』は、どこにあるのだろうか?

  • ◎ OI(Sorte)Laura Finocchiaro
  • そのタイトルと「タイムトンネル」みたいな渦巻き状の赤黒い孔の前に佇む全身黒ずくめの男装の麗人に怖れを成して尻込みしている人も少なくないLaura Finocchiaroは、ハードコア・パンクでもSF懐古趣味のタカラジェンヌ宙組でも全然なかった。一風変わった彼女の音楽を言い表わすのに一番手っ取り早い方法はFernanda Abreuとの比較だろう。F・Aがヒップホップ寄りのファンクだとするとL・F嬢の方はクラブ / エレクトロ系、声質も(男勝りで硬質なF・Aに対し)フェミニンで、しかも意外と可愛い。もちろん羊頭(パンク頭?)な意匠を施しているだけあって中身の方も「変」なのだが、全くの「変態プレイ女」というわけでもない。Tom Zeとの共演作〈Dueto〉は当然「ヘン」だし、Lennon & McCartneyの反則技〜脱力カヴァ〈Menia Linda〉に腰も砕ける。ベースが畝りパーカッションが跳ね捲るボサノヴァ調の〈Passos〉、6/4のポリリズムを絵に描いたような表題作〈Oi〉、PSBなエレクトロ・ポップの〈TV〉、Bootsy風のメロウ・ファンク〈Necessidade〉‥‥打ち込み主体かと思うと、然りげなく弦楽四重奏を配す。ブラジル盤CDの音の良さはCaetano Velosoの《粋な男》で実証済みだが、L・Fのアルバムも高音質!‥‥これでインディーズ制作というのだから呆れてしまう。特典映像のエロPVはDidoの出来損ないみたいですね。

  • ◎ Λ FRΛMES 2(S-S)A Frames
  • 古くは60's後半のCreamやジミヘン、最初はパンクだった80'sのThe Policeや90s'グランジの象徴的存在だったNirvana‥‥ロック・グループの最小ユニットである3ピース・バンドといえばギター / ベース / ドラムスの3人組のことだった。米シアトル産のA Framesも従来のギター / ベース / ドラムスから成るオーソドクスな3Pバンド。複数形なのでA(エー) Frames(フレイムズ)と読むのだろうか?‥‥「アナログ・プレス(限定1000枚)の後のCD化、Thurston Mooreも絶賛!」‥‥という某CDショップの商品ポップ・コピーが純白のジャケットに踊る。Gang Of FourやThe Pop Group、Joy Divisionの遺伝子が埋め込まれたようなノイジーで骨太なサウンド。冷め切ったヴォイスと、空間を切り裂き躰に絡み付くギターリフが小気味良い、期待のポスト・パンク・トリオだ。

  • ◎ WAR PRAYERS(Dimmak)Young People
  • 2000年代に入ってから変則的な3Pバンドが目立つようになった。この変則スタイルに先鞭を付けたのがベースレスのJSBXだったことは改めて言うまでもない。2003年にアルバム・デビューしたYeah Yeah YeahsもJSBXと同じくベースレスの変則トリオだった。Young Peopleも基本的にベースレスの3人組だが、曲によってヴォーカルのKatie Eastburnがギターやベース&ドラムスを、ギター奏者のJeff Rosenbergがベースを、ドラムスのJarrett Sibermanがギターを弾いたりするマルチ・プレーヤー・トリオ。Bjorkを硬質化したようなヴォイスはソロ以降、Bjork自身が所謂旧来のロック・フォーマット(ギター / ベース / ドラムス)の演奏で歌わなくなって久しいので、より新鮮に響く。Kill Rock Starsの姉妹レーベル、5RCからデビューしただけあって、アヴァギャン色も強い。アルバム・タイトルはイラク戦争後の世界観を反映している。Sugercubes時代のBjorkような激情型パンク・スタイルではなくポスト・ロック‥‥それも今一番新しいと感じるサウンドを、全11曲24分(それでもNumbersのデビュー作よりは5分も長い!)に凝縮している。

  • ◎ MICHIGAN (Asthmatic Kitty)Sufjan Stevens
  • アメリカ全50州をテーマにしたアルバム(50枚?)を創ると嘯くSufjan君の記念すべきシリーズ第1作目。ほぼ同時期に《Seven Swans》という純正オリジナル・アルバムも出ているけれど、《ミシガンからの挨拶状》の方が遙かに面白い。基本的にはピアノやギターの弾き語りタイプのSS&Wで、20種類以上の楽器を巧みに操るマルチ奏者ぶりが如何なく発揮されている。一体どういう料簡なのか、弾き語り曲の間から突如として現われる打ち込み風ダンス曲──それも変拍子(奇数拍)の「1人ステレオラブ状態」に豹変してしまう。ピアノ曲に始まり、Stereolab風5拍子曲、バンジョー弾き語り、ホーン&女声コーラス風味、Neil Young風ブロークン・ギター、木琴インスト、アクースティックな男ケイト・ブッシュ(なのかよ、お前は!)、9・6ポリリズム‥‥と、全15曲66分が至福と共に過ぎて行く。メランコリックな曲調に反し、歌詞はヘヴィーで、救いがない。「喘息病みの仔猫ちゃん」というレーベル名は笑えますが。

  • ◎ CUERPO(Union De Musicos) Florencia Ruiz
  • 「牛ジャケにハズレ無し!」という俗説が巷間に流布しているけれど、「猫ジャケ」にも好盤が少なくない。Florencia嬢の2ndも、白い余白を飾る愛猫との2ショットが小粋な「猫ジャケ」だ。デジカメを入手して以来、趣味で「ネコ写真」を撮っていることもあって(延べ150匹以上の猫ちゃんを撮りました!)、この手のアルバムには前情報なしの無条件で猫の手が伸びる。あのJuana Molinaにも相通じ合う〈アルゼンチン音響派〉?‥‥9曲31分という小品集ながら、一瞬にして現実世界を反転してしまう強烈なパワーを裡に秘めている。短い詩片、簡素な伴奏、真摯なヴォイスが紡ぎ出す音響小宇宙は、例えばボルヘスやコルタサルのシュールな短篇の佇まいにも似たマジカルで物狂おしいほどの余韻を残す。これは一体何なのか?‥‥と、途方に暮れて自問、夢想、思考する時間が、他の何ものにも代え難い「生」を齎す。しかも『モレルの発明』のように無限に繰り返すことが可能なのだ。

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    • ◎ 輸入盤リリース→入手順 ● Compact Disc規格外のCCCDは除外しました

    • 個人的な年間ベスト・アルバム10枚を1年ずつ遡って行くシリーズの第3弾です

    • 《EMILIE SIMON》の文章は〈フレンチな娘たち〉から抜粋(一部改稿)しました

    • 《AHORA》にリンク出来ませんでしたが、Sebastian Escofetで試聴可能。Laura Finocchiaroでもアルバム曲やPVを視聴出来ます^^

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    Greetings From Michigan The Great Lakes State

    Greetings From Michigan The Great Lake State

    • Artist: Sufjan Stevens
    • Label: Asthmatic Kitty
    • Date: 2003/07/01
    • Media: Audio CD
    • Songs: Flint / All Good Naysayers, Speak Up! Or Forever Hold Your Peace! / For The Windows In Paradise, For The Fatherless In Ypsilanti / Say Yes! To M!ch!gan! / The Upper Peninsula / Tahquamenon Falls / Holland / Detroit, Lift Up Your Weary Head! / Romulus / Alanson, Cro...


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    A FramesWar PrayersCuerpo



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    コメント 2

    yubeshi

    微妙に私のネタと被っているのが面白いですね。
    ジム・オルークは恥ずかしい事にまだ未経験です。
    モバサム閣下もお勧めのエミリ嬢は年末調整のお金が入ったら買おうと思ってるんですけどね(←貧乏人)
    オルークは新譜じゃないのなら中古で探してみるかなぁ。
    by yubeshi (2006-11-24 22:10) 

    sknys

    yubeshiさん、コメントありがとう。
    所属レーベル・サイト(米Drag City)にミュージック・ヴィデオと称して
    You Tubeを貼っちゃうところが「大人っぽい幕開け」に似ているかな^^

    Sonic Youthを離れたJim O'Rourkeは、
    日本の音楽や文化に興味があるみたい(日本永住か?)。
    「スーパー戦隊」を早朝TVで視ていそうです。
    by sknys (2006-11-24 23:40) 

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